職場からの通信 クロネコヤマトの労働現場から ずさんな荷物の品質管理 人員不足で過酷な重労働

週刊『前進』02頁(2982号02面02)(2018/10/18)


職場からの通信
 クロネコヤマトの労働現場から
 ずさんな荷物の品質管理
 人員不足で過酷な重労働

(写真 常温に近い状態で積み上げられ放置された冷蔵・冷凍便の荷物)


 30代の男性です。地方都市に在住し、ある企業で正社員として働いています。しかし正社員であるにもかかわらず年収は非常に低く、月によっては手取り額が17万円程度しかないときもあります。そのため妻と共働きで家のローンを払ったり子どもを養ったりしていたのですが、妻が体調を崩して退職したことをきっかけに、私が夜間ダブルワークでアルバイトをしないと生活が成り立たなくなってしまいました。そのアルバイト先として選んだのが「ヤマト運輸株式会社」(通称クロネコヤマト)でした。(以下、ヤマト)
 昼は正社員、夜はアルバイトと、毎日3時間程度の睡眠で働かざるを得ない状況の中で私を待っていたのは、ヤマトの過酷な労働環境と、顧客に対する不誠実な対応だったのです。

何が問題なのか

①荷物の品質管理がずさん
 私の配属先は「クール部門」と呼ばれ、冷蔵や冷凍の荷物を扱う部門です。本来なら荷物を冷蔵や冷凍に適した温度で管理すべきですが、実際には常温に近い環境下に放置されています。集荷拠点に届く荷量に対して人員が少なすぎるために、ベルトコンベヤーから流れてきた荷物を適温のボックスに収納する作業が間に合わず、次々と積み上げられることが原因です。
②過酷な労働環境
 ヤマトでは、荷物を積み込んだコンテナボックスを基本的には人力でトラックまで運びます。特にクール部門のボックスは満杯に荷物を搭載すると総重量が100㌔〜200㌔グラムにもなるため、男性でも全身の筋肉を総動員しなければならないほどです。この作業を女性も行わなければなりません。古代の奴隷労働を彷彿(ほうふつ)させる労働環境です。また、本来必要な人員が確保できないため、対処しきれず目の前に荷物が積み上がっていく状況は、肉体的にはもちろん、精神的にもかなり消耗させられます。
 アルバイト社員の場合、このような重労働を通常は約6時間こなします。なぜ「6時間」なのか? それは、従業員を6時間以上働かせる場合は1時間の休憩を与えなければならないと労基法で決まっているからです。そのため、厳密に言うと6時間は働けません。6時間を超える前に帰るよう指示されます。雇用主にとっては最も都合よく労働力を酷使できる時間というわけです。この間に与えられる休憩時間は、たったの10分間だけでした。

問題提起と告発

 アルバイトを始めてから1カ月以上が経ち、この状況が現場で平然と許されていることに私は疑問を募らせていきました。「ヤマトの上層部は、なぜこのような積荷管理を許しているのか」「なぜここまで過酷な労働環境を改善しようとしないのか」。顧客と労働者を軽視する企業体質への「疑問」がやがて「怒り」へと変わり、私は拠点内の状況をひそかに撮影してSNS上に投稿しました。内部告発です。投稿はすぐさま拡散され、この文章を書いている時点では8万回以上の評価や拡散による支持を受けました。
 中には、「なぜSNSで投稿するのか。卑怯(ひきょう)だ。社内で訴えればいいじゃないか」といった意見もありました。しかし、過去にも同様の問題を起こしたこの会社が、その後も現在に至るまで漫然とこの状態を許容していることから、会社自体に自浄能力があるとは思えなかったのです。ましてや、一アルバイト社員が提案したところで、それが改善されるとも思えません。そこで私は、世論の痛烈な批判が必要だと思ったのです。実情を広く世の人々に知ってもらい批判を受けることでしか、ヤマトを強制的に改善の道へと進ませる手段はないだろうと考えました。
 もちろん、社内の実情を暴露したり画像を勝手に撮影して世間にさらす行為はヤマトから訴訟を起こされたり、損害賠償請求を受けたりするなどのかなり大きなリスクが伴います。一般的に考えれば個人の私が告発行為をすることは、まさに「百害あって一利なし」と言えるでしょう。しかし私の中の正義感がこの現状を許せませんでした。リスクがあっても投稿せずにはいられなかったのです。

何が起こったか

 私の投稿は一定の支持を受けましたが、中には批判的な意見も散見され、特にヤマトの現役社員と思われる人物から強烈な敵意を向けられたことは驚きでした。従業員の労働環境改善も私の意図の一つでしたので、社内の人間から敵意を向けられるとは想像していなかったのです。
 もう一つ驚きだったのは、マスコミがこの件を報じなかったことです。理由は「冷蔵や冷凍を不適切な温度で管理した確証がない」「報道をすることで投稿主の個人が特定されてしまうリスクを避ける」といったことのようです。世の不正を追及して報道することがマスコミの役割だと思っていたのですが、現実は保守・保身の色合いが強いと感じました。
 当事者のヤマトから公式なコメントなどは出ていません。マスコミが大々的に報じなかったので痛くもかゆくもないのでしょう。残念ながら本件は黙殺された形となっています。皆様にもぜひ賛同の声を上げていただければ幸いです。
(クロネコ・ブラック)

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