焦点 対中・対日争闘戦強めるアメリカ 貿易戦争激化は戦争の道
焦点
対中・対日争闘戦強めるアメリカ
貿易戦争激化は戦争の道
●中国に制裁関税第3弾
9月24日、トランプ政権は、約2000億㌦(22兆円)相当の中国製品に10%の追加関税を課す対中制裁関税の第3弾を発動した。これで中国からの輸入品の半分に高関税が課せられた。さらにトランプは「中国が報復に出れば、残るすべての中国製品に追加関税を課す」と叫んでいる。中国は報復関税を即日実施しており、今後トランプ政権が中国からの全輸入品に高関税を課す第4弾に進む可能性が強い。米中貿易戦争は重大な段階に入った。
世界経済の4割を占める米中の貿易戦争は全世界を巻きこみ、世界的な争闘戦と戦争の危機を加速する。貿易戦争に終わりはない。それは貿易赤字だけの問題ではないからだ。米帝は大国化する中国スターリン主義そのものを敵視し、究極的には中国打倒すら目標にしている。昨年12月に発表した「国家安全保障戦略」(NSS)は「強国同士の競争の時代が再来している」として、中国とロシアを米帝を脅かす「修正主義勢力」と規定し両国との軍事的対決を念頭に、核戦争体制の強化を打ち出した。
背景にあるのは米帝の歴史的没落であり、経済危機と階級対立の激化である。現在の「アメリカの景気回復」は、金融緩和による経済のバブル的膨張そのものであり、米帝支配階級は、このバブルがいつはじけるかと金融恐慌の再来におびえている。米国の産業競争力は衰退し、潜在成長率はリーマン危機(08年)以前の水準を回復できないままである。米中貿易戦争は米国経済の復興をもたらすどころか、長期的にはアメリカ帝国主義の危機と衰退を一層加速するだけである。
●農民と労働者に犠牲
米帝は日本に対する争闘戦も同時に強めている。26日の日米首脳会談で、安倍政権は関税について二国間交渉に入ることを米帝からのまされた。トランプは安倍に、牛肉など農産物の輸入をもっと増やすよう圧力をかけている。日帝が今後の交渉でTPP(環太平洋経済連携協定)水準をも超える関税引き下げを受け入れるならば、日本農業に壊滅的打撃になる。それでも安倍政権は、トヨタなど大資本家の利益を守るために農民と労働者に全矛盾を押しつけようとしている。
アメリカからの農産品の輸出が多少増えても、対日貿易赤字の大幅減にはならない。年700億㌦(7・7兆円)の対日貿易赤字の8割は自動車関連に起因する。それゆえアメリカにとって本命は、やはり自動車の輸入制限だ。米国は輸入車に実に25%の高関税を課すことを狙っている(現在2・5%)。首脳会談後の日米共同声明には「交渉結果が米国の自動車産業の製造および雇用の増加をめざすものであること」を日本政府が「尊重する」と明記された。さらに会談では、日本がアメリカからミサイルや軍用機などの武器・兵器をさらに購入することが話し合われた。
●戦争の根源を断つ闘いを
中国に制裁関税第3弾を発動した翌25日、トランプは国連総会で「米国は国益に基づいて行動する」「グローバリズムを拒絶し愛国主義を選ぶ」と演説し「米国第一主義」を国連の場で宣言した。かつて世界大恐慌勃発直後の1930年、米帝はフーバー大統領(共和党)のもとで国際経済の安定より国内産業の保護を優先する政策をとり、輸入品の関税を記録的な高さに引き上げた(スムート・ホーリー法)。多くの国はこれに対して報復関税を実施し、数年のうちにアメリカの輸出入は半分以下に落ち込み、世界貿易は急激に縮小した。各国は存亡の危機を深め第2次世界大戦に突き進んだ。いま米帝は同じ道を進んでいる。
レーニンは著書『帝国主義』(1916年)で、「生産手段に対する私的所有が存在している限り、......帝国主義戦争は絶対に不可避である」と断言した。そして、戦争に突き進む自国政府を打倒する闘いこそ、戦争を阻止する唯一の道であると世界の労働者に呼びかけた。国際連帯と改憲・戦争阻止!大行進で安倍政権を打倒しよう。