「ボランティア」は勤労動員 五輪を口実にただ働き強いる
週刊『前進』02頁(2976号02面02)(2018/09/27)
「ボランティア」は勤労動員
五輪を口実にただ働き強いる
2020年東京オリンピックの「無償ボランティア」募集が始まる。会場内などでの案内、競技運営や移動のサポート、海外要人接遇などに携わる「大会ボランティア」が8万人、東京都などが募集し会場への案内などに携わる「都市ボランティア」が3万人であり、合計11万人もの無償ボランティアは過去最大だ。別途に中・高生枠も設けられる。これはオリンピックを振りかざし、学生・労働者を無償労働に駆り出す「勤労動員」であり、戦時の国民総動員を狙った攻撃である。職場・大学から絶対反対の声を上げよう。
無償で働かせて企業は大もうけ
組織委や都は無償労働を前提としているが、「ボランティア」という言葉に無償労働という意味はない。しかもその内実はとんでもないものだ。40度にも迫る酷暑の中、1日8時間、10日以上の労働と研修への参加を求められ、滞在費や交通費も自己負担(高まる批判を受けて1日1000円分のプリペイドカードのみ支給となった)。事故やけがをしても労災すら適用されない。これは安倍政権が進める「雇用関係によらない働き方」を先行実施し、改憲と一体で労働基本権を根こそぎ奪いとる攻撃だ。小池百合子東京都知事は9月21日の会見で、「ブラックという批判もあるが」との記者の質問に対し「何をもってブラックと言うのか、私にはよくわかりません」とうそぶいた。
労働者に無償労働を求める一方、五輪組織委にはスポンサー企業からの協賛金やテレビ放映権料として途方もない金が流れ込む。今回の東京五輪はこれまでの大会での「1業種1企業」の原則すら破壊したことで、組織委は過去最大となる4千億円ものスポンサー料をかき集めた。五輪マーケティングを独占する電通は巨額の利益を手にする。
そもそも20年東京大会は招致段階から金権腐敗まみれだ。招致委員会が国際オリンピック委員会関係者に合計37億円もの賄賂を渡したとして、フランス検察が捜査中だ。金まみれの五輪で潤う張本人たちが「五輪のために無償で働くことは当然だ」というのである。
学生動員のため国が大学に要請
国が前面に乗り出し、大学や企業にボランティア要員を確保させる事態が始まっている。14年には全国800以上の大学と組織委が連携協定を結んだ。ボランティア参加を「単位」として認定する大学も広がる。企業は参加の経験を就職活動の際の分断と評価の基準とする。事実上の「学徒動員」「徴兵」だ。文部科学省とスポーツ庁は7月26日、各国公私立大や高等専門学校あてに通知を出し、大学のスケジュールである学事暦の変更にまで言及して「協力」を要請した。国は通知で「学生の社会への円滑な移行促進の観点から意義がある」と強調しているが、「社会への円滑な移行」とは国や企業のために進んでただで働き、ものを言わない奴隷以下の労働力の育成だ。すでに首都大学東京、明治大学、国士舘大学などが学事暦の変更を決定している。
労働改悪・改憲とも一体の攻撃
五輪ボランティアは、経団連の「就活ルール廃止」とも一体である。9月3日に経団連の中西宏明会長は「21年春以降に入社する学生向けの採用ルールを廃止するべきだ」と言及した。五輪ボランティア確保を「大義名分」に、現行の「6月1日面接解禁、10月内定」のルールを前倒しすることが計画されていたが、21年春入社の学生以降の全面廃止に踏み込んだ。戦後の「終身雇用」「年功賃金」を前提とした「就活ルール」廃止は、安倍政権の「働き方改革」、戦後労働法制解体攻撃そのものだ。あらかじめ能力主義で分断し、総非正規職化と労働組合のない企業、社会を目指す攻撃である。
安倍が20年東京五輪にかけた狙いは「原発事故による放射能汚染と健康被害はなかった」という大うそを宣伝することだ。愛国心を扇動し、闘う労働組合を一掃し、20年新憲法施行を狙う攻撃と一体だ。これに国民を総動員するボランティア攻撃を絶対に許してはならない。労働者・学生はボランティアを拒否し、闘う労働組合と学生自治会のもとに団結を取り戻し、安倍打倒、改憲・オリンピック粉砕へ立ち上がろう。