子どもへの被曝強制許すな 安倍・復興庁「強化戦略」の犯罪性

週刊『前進』04頁(2971号03面01)(2018/09/10)


子どもへの被曝強制許すな
 安倍・復興庁「強化戦略」の犯罪性


 復興庁は7月5日、各省庁の幹部を集めた会合で、昨年12月12日に復興庁が発表した「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」の「着実な実施」を検討した。これは「(放射線について)知ってもらう」「(福島の農産品を)食べてもらう」「(福島に)来てもらう」という運動を総がかりで行うものだ。20年オリンピックまでに福島原発事故をなかったものにし、子どもたちを大量に被曝させる犯罪的な企てだ。

「福島は安全だ」の大ウソ

 吉野正芳復興相はこの場で「政府一体となって風評払拭に取り組んでいく」と檄を飛ばし、「戦略に沿った本年度の取組を早期かつ着実に実施」と指示した。
 今回、議題となった復興庁「強化戦略」の内容はすべてウソであり断罪の対象だ(『国際労働運動』VOL35第Ⅱ章②参照)。
 その上で、とくに重大な問題に絞って批判する。
 「強化戦略」の許せない点は第一に、「福島県では放射能の安全性が確保されている」と主張していることだ。これは百%ウソだ。福島原発事故では、政府が認めただけでも広島原爆約168発分のセシウム137が放出された(実際はこれをはるかに上回る)。そのうち約20%(広島原爆約34発分)が福島を中心とした日本の陸地に降下した。
 除染したとされる量も「約5発分」にすぎず、それすらも安全な状態にはない。福島では今年3月段階で、フレコンバッグが1650万個も存在する。それが1100カ所の「仮置き場」と、人家の庭や小中学校など13万7千カ所に埋められたり山のように積み上げられたりしているのだ。フレコンバッグは耐用年数が3〜5年で、多くのフレコンバッグが破れ、放射能に汚染された土砂などが日々、風や雨で流出している。そもそも事故は収束しておらず、いまも毎日20億ベクレルのセシウム137が建屋から海へ流れ出ている。このどこが「安全性が確保されている」だ。

「被曝してもOK」と強弁

 許せない点の第二は、「放射線による健康影響は、放射線の『有無』ではなく『量』が問題」としていることだ。「量」を問題にしているようにみせかけているが、これは〝放射線被曝しても問題ない〟という主張であり、「放射線安全論」とも言うべきものだ。断じて容認できない。
 許せない点の第三、そして核心点は、前述したように「知ってもらう、食べてもらう、来てもらう」という、労働者民衆・子どもを被曝させる大運動を組織しようとしていることだ。
 7月5日の会合で出された「復興大臣からの指示事項」と復興庁の文書は「強化戦略」をより具体化させており、ここではこれを取り上げて批判する。
 ①「知ってもらう」
 これは〈福島は安全〉〈放射能は少なければ問題ない〉のウソを宣伝することだ。とくに「学校における放射線教育の充実を図る」としている点が重大だ。﹃放射線のホント﹄という小学生向けの冊子まで発行し配布した。また「放射線等についてマンガ等で学べる小学生向け及び中・高校生向け新聞広告を作成し、児童生徒向け新聞に掲載」などを行っている。
 ②「食べてもらう」
 これは、福島の農産品に実害はないものとして、〈福島は安全〉キャンペーンを展開することだ。そのために、「福島県産品の魅力、美味しさや安全が確保されていること等について強力に発信」「販売促進対策」を行うとしている。
 ③「来てもらう」
 ここでは「福島県への教育旅行の回復」として、小中・高校生の修学旅行を最も重視している。そのために、「教育委員会への働きかけや、保護者、教職員を対象としたセミナーを実施する等」としている。さらには、「浜通りへの交流人口の拡大を図る」として、避難指示解除地域への帰還促進につなげようとしている。JR常磐線の全線開通攻撃とも一体だ。

教育労働者先頭に闘おう

 復興庁「強化戦略」と、7月5日の「復興大臣からの指示事項」「復興庁文書」は、子どもを中心に労働者人民を被曝させようとする恐るべき攻撃だ。
 日帝・安倍政権は、大恐慌の深まりと米帝トランプの保護主義・争闘戦の激烈な直撃を受け、他方で、労働者人民の積もりに積もった怒りの爆発、大反撃が始まった。安倍政権はこの危機からの生き残りをかけ、改憲・戦争(核武装・核戦争)に向かって必死になっている。異様とも言える「福島安全」「放射線安全」の強調は、核戦争の容認へ労働者人民を武装解除させることが目的だ。そのために、日本共産党スターリン主義を手先に、福島原発事故をなかったことにし放射能汚染も健康被害もいっさい問題ないとし、福島の怒りと闘いを圧殺しようとしている。
 復興庁「強化戦略」は改憲攻撃と一体であり、改憲阻止闘争の大爆発で粉砕しよう。そのためにも、教育労働者・自治体労働者の人生をかけた決起が必要だ。労働組合が問われている。とくに「強化戦略」が狙うのは学校現場であり、子どもたちだ。教え子を戦場に送らない、被曝もさせない。教育労働者は、改憲阻止闘争と一体のものとして「強化戦略」を打ち砕く闘いに立ち上がろう。

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復興大臣からの指示事項(要旨)
●「知ってもらう」
 対象 「妊産婦や児童生徒の保護者を中心とした国民一般」
 方法 「学校教育における放射線教育の充実を図る」
●「食べてもらう」
 方法 「福島県産品の魅力、美味しさや安全が確保されていること等について強力に発信する」
●「来てもらう」
 方法 「福島県への教育旅行の回復に向け、教育委員会への働きかけや、保護者、教職員を対象としたセミナーを実施」
【「知ってもらう、食べてもらう、来てもらう」の運動で子どもを被曝させるものだ】

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