焦点 日本も標的にした米の貿易戦争 「出口」失い迷走する日銀
焦点
日本も標的にした米の貿易戦争
「出口」失い迷走する日銀
●自動車関税の引き上げで日帝資本は2兆円の損失
米トランプ政権は8月23日、中国からの輸入品に25%の制裁関税を課す措置の第2弾を発動した。第1弾とあわせ、対象は年額約500億㌦(約5兆5千億円)に膨らんだ。中国も同日、同額の対抗措置をとった。これに対しトランプは、「報復への報復」として、9月にも2000億㌦(約22兆円)の中国からの輸入品に追加関税を課すと表明した。
「アメリカ第一」を叫んぶトランプのもと、帝国主義間・大国間の争闘戦は報復が報復を生む泥沼状態に入っている。それは、世界経済を一気に収縮させようとしている。
トランプは中国を最大の抗争相手にしているが、日本もその標的だ。トランプは自動車への関税を現在の2・5%から25%に一気に引き上げることをもくろんでいる。これが発動されれば、トヨタ1社で4700億円、日本の自動車メーカー6社で2兆円の損失が発生すると言われる。
アメリカはまた、メキシコに対してNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉を突きつけ、8月27日、NAFTA域内で自動車の関税をゼロにする「原産地規則」の条件について、域内からの部品調達比率を62・5%から75%に引き上げることで合意した。
日産、ホンダ、マツダ、トヨタの4社は17年、メキシコ国内の工場で140万台を生産し、アメリカなどへ輸出した。その自動車の主要部品は日本から輸出されている。日本の自動車メーカーがメキシコで生産した自動車は、部品調達比率を満たしていないとして、アメリカに輸出される際、高関税が課される可能性が高い。
こうした輸入制限を、トランプは安全保障を口実に強行している。貿易戦争が軍事の言葉で語られるようになった時、現実の戦争が引き寄せられるのだ。
●アベノミクスが大破産し軍需産業に延命託す安倍
この中で、アベノミクスの名による超金融緩和策の破産も明白になった。
日銀は7月末の金融政策決定会合で、国債を大量に買い入れて長期金利を0%程度に誘導する政策を継続すると決めた。だが、会合後の記者会見で黒田東彦総裁は、長期金利の0・2%への上昇を容認する考えを示した。従来の政策からすれば、0・2%というのは国債暴落を容認したにも等しい異様に高い数値だ。
だが、長期金利が0・145%に上昇した8月2日、日銀は直ちに予定外の4000億円規模の国債買い入れを通知して、金利を抑え込んだ。「金利上昇を容認する」と言いながら、実際にはそれも怖くてできないのだ。
日銀の総資産は17年度のGDP(国内総生産)を超えた。国債の大量購入に加え、ETF(上場投資信託)の買い入れで資産が膨れ上がったのだ。ETFの買い入れは、事実上、株式の買い入れだ。こんなことは、どの国の中央銀行もしていない禁じ手だ。日銀の超金融緩和策は、株式をバブル的に高騰させ、国家財政の赤字を補填(ほてん)しただけだ。
米FRB(連邦準備制度理事会)が利上げに動き、トルコリラを始め新興国の通貨が大暴落する中、日銀が従来の政策を続けられなくなっていることは明らかだ。だが、日銀は超金融緩和からの「出口」も描けない。それは、トランプが仕掛ける貿易戦争で世界恐慌が一段と深まる中、それへの対策を何も持てなくなったことを意味する。
この中で安倍とブルジョアジーは、軍需生産と労働者の総非正規職化に延命の道を求めている。改憲と戦争を阻止する闘いは、これと対決する大決戦だ。