焦点 トルコリラ暴落は戦争の引き金 米が同盟関係を自ら破壊

週刊『前進』02頁(2968号02面04)(2018/08/30)


焦点
 トルコリラ暴落は戦争の引き金
 米が同盟関係を自ら破壊


●エルドアン政権転覆狙う
 8月1日、米財務省は、トルコ在住米国人のブランソン牧師の自宅軟禁に対して、トルコの2人の閣僚の資産凍結などの経済制裁を発表した。その日からトルコ・リラの下落が加速し、10日にはトルコ・リラが一挙に20%下落した。
 すでに年初からのリラの下落は対ドルで約30%に達しており、この8月の暴落によって、1年間でリラの対ドル価は半減したことになる。
 さらに米トランプ政権は10日、トルコからのアルミニウムと鉄鋼輸入に対する関税を2倍化し、それぞれ20%と50%に引き上げることを発表している。
 このトルコ危機に引きずられる形で、ユーロが大幅に下落した。パリバなどのヨーロッパの大銀行はトルコ企業に大量の資金を貸し出しており、トルコの破綻は、直ちにEU(欧州連合)の不良債権危機を爆発させるからだ。また、EU諸国の生産拠点であるトルコへのアメリカの経済制裁は、EU資本に重大な影響を及ぼすのである。
 このトルコ・リラの暴落は、アメリカの経済制裁・貿易戦争の激化によるトルコ経済危機を見込んで、リラが大量に売りに出された結果である。だが、原因はそれだけではない。アメリカ金融資本が一斉にリラの空売りをしたことが、さらにこの暴落を加速したのだ。アメリカ帝国主義は明らかにトルコ・エルドアン政権の「レジーム・チェンジ」(体制転覆)を狙って攻撃しているのだ。
 これは2016年のエルドアン政権に対するクーデター未遂事件の続きでもある。当時、在トルコ米軍はトルコ軍内のクーデターの情報を知りながらエルドアンに教えず、「クーデターの黒幕はアメリカ」と言われた。エルドアンはロシアとイランからの情報によってクーデター派の攻撃を逃れたのだ。
●世界を大流動に叩き込む
 トルコは、第2次世界大戦直後からアメリカの世界支配の要になってきた国だ。NATO(北大西洋条約機構)の戦略拠点としてソ連を南から狙ってきた。アメリカの中東支配の要でもあった。
 だが今、アメリカが全世界で築き上げてきた同盟関係を、アメリカ自身が破壊している。国際会議の場でEU諸国を公然と攻撃しているばかりか、トルコに政権転覆の攻撃をかけているのだ。
 「トランプだからトルコを攻撃している」のではない。すでにオバマ政権時代の16年にエルドアン政権へのクーデター未遂事件を起こしている。
 また、中東の反動王政諸国・大産油国を束ねる組織であるGCC(湾岸協力会議)からカタールが離反し、トルコへの巨額融資を明らかにした。
 他方、もうひとつの巨大なNATO加盟国であるドイツは、従来、エルドアン政権と対立していたにもかかわらず、最近のアメリカの「制裁」の動きに対抗して、ドイツの対トルコ制裁を解除した。
 トルコを「一帯一路」政策の要と位置づけ、アメリカ以上の経済関係を築いてきた中国も、対トルコ支援を明らかにしている。
 トランプのトルコへの攻撃は、全世界的な規模での戦後的秩序の破壊・大流動、そして戦争を一挙に加速させている。
●労働者の国際的団結を
 この戦争への道を阻止する力は、国境を越えて団結した労働者階級の闘いの中にこそある。トランプはこの間、ウェストバージニア州から始まった教育労働者の大ストライキには一言もツイートできていない。労働者階級の決起に大打撃を受けているのだ。
 トルコの労働者は、16年のクーデター未遂以来の戒厳令弾圧を突き破り、新たな大闘争を開始している。日本の労働者は、安倍の改憲・戦争攻撃との決戦に必ず立ち上がる。安倍のエルドアンとの密接な関係は、安倍のもう一つの弱点だ。労働者が国際的に団結すれば、支配階級を倒し、戦争を阻止できる。
 改憲・戦争阻止!大行進運動を全国で展開しよう。

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