三里塚請求異議裁判 農地強奪は違憲・違法だ 2人の学識経験者が意見陳述

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週刊『前進』04頁(2959号03面02)(2018/07/23)


三里塚請求異議裁判
 農地強奪は違憲・違法だ
 2人の学識経験者が意見陳述

(写真 裁判後の集会で決意を語る市東孝雄さん。左から内藤光博さん、石原健二さん、市東さん、葉山岳夫弁護団長【7月17日 千葉市】)

 7月17日、千葉地裁民事第5部(高瀬順久裁判長)で請求異議裁判が開かれた。結審策動を押し返し、成田空港会社(NAA)が求める市東孝雄さんに対する農地取り上げを弾劾し、強制執行が違憲・違法であることを立証する学識者の意見陳述が実現した。三里塚芝山連合空港反対同盟を先頭に労働者・農民・学生など120人が結集した。
 正午過ぎ、千葉市中央公園で太郎良陽一さんの司会で決起集会が開かれた。最初に伊藤信晴さんが「全人民とつながり戦争を阻止しよう。市東さんの農地を死守しよう」と訴えた。
 動労千葉の川崎昌浩書記長を始め、全国の仲間が闘う決意を述べた。産直の出荷作業を終えて市東孝雄さん、萩原富夫さんが駆けつけ、炎天下を千葉地裁へとデモが出発。宣伝カーからは婦人行動隊の宮本麻子さんがアピールを響かせた。
 午後2時に開廷。補佐人として法廷に立ったのは農業経済学者の石原健二さん、憲法学者の内藤光博さんの2人。それぞれ1時間を超える熱弁をふるった。
 石原さんは、「日本は食料自給率37%。農業の現状はかつてない危機にある。今日の朝日新聞に『日欧EPA(経済連携協定)/産地は警戒/10府県TPP11超える打撃』と出ている」と指摘。「1961年に農業基本法ができ、自立経営農家の育成、農業構造改革が進められた。その中で三里塚にもシルクコンビナート構想が出てきたが、空港問題が発生し、専業農家は激減した。その後も農業政策は変転し、一般予算における農業予算は2%。ついに日本の農政はなくなった」と批判した。「この中で、無農薬・有機栽培、路地栽培で安全な食物を供給するという市東さんの農業こそ、手本にすべき農業だ」と称え、「市東さんは6月28日の法廷で、自分の農業の姿勢を『うそをつかない』ことと言った。市東さんの農地を強制的に奪ってはならない」と断じた。
 続いて内藤さんが、「農業はどのように憲法に位置づいているのか」という視点から「営農権」を主張した。「農業が人類の生存と平和を支える基本的条件であり、高度の憲法的公共性を有することから考えると、農民には強い憲法的保障、すなわち『営農権』と呼ぶべき基本的権利が保障されなければならない」
 さらに1971年の土地収用法による大木(小泉)よねさんの土地・家屋の強制収用に言及し、「暴力的な強制執行の手法は、まさに生存の基盤である農地や住居を奪い去る『過酷執行』であり、生存権的財産権の侵害だった」と弾劾。「市東さんの場合、適用される法律が土地収用法ではなく農地法であっても、小泉よね事件の強制代執行と本質的には変わりはない」と指摘した。そして結論として「市東さんの魂とも言える生存権的財産としての農地を奪うことは、憲法13条の人間の尊厳を真っ向から否定する憲法違反だ!」と一喝し、傍聴者の大拍手に包まれた。「裁判官、わかったか!」の声も飛ぶ。
 さらに弁護団全員が次々に立って最終弁論の骨子を陳述した。次回9月27日、市東さんの意見陳述と弁護団の最終弁論が行われる。
 閉廷後に場所を移し、石原さんと内藤さんを囲んで報告集会を開催。市東さんは「次回には自分の思いのたけを話せるように頑張っていきたい」と決意を語った。葉山岳夫弁護士を始め弁護団が最終弁論への意気込みを語り、全員で勝利を誓い合った。
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