乗務員制度の解体阻止を 手当全廃を狙う賃金改悪提案
週刊『前進』04頁(2957号02面01)(2018/07/16)
乗務員制度の解体阻止を
手当全廃を狙う賃金改悪提案
JR東日本は6月の乗務員制度解体の提案に続き、7月3日、乗務員手当の廃止を意図した賃金制度改悪案を出してきた。7・1国鉄集会が宣言したJRの第3の分割・民営化攻撃粉砕の闘いは、いよいよ本格的な決戦段階に入った。
総非正規化に至る攻撃
JRでは乗務員の労働条件がすべての職種の労働条件を規定している。だからJRは、乗務員の労働条件や権利を破壊することにより全労働者の労働条件を打ち砕こうとして、乗務員制度の解体に乗り出した。その行き着く先は、鉄道事業のすべてを分社化し、労働者に分社への転籍を強いて総非正規職化することだ。今回のJRの提案は、乗務員手当のうち、深夜時間帯に乗務した場合に支払われる加算額を廃止し、行先地手当も廃止して、深夜早朝手当の支給に変えるとしている。深夜早朝手当は、労働基準法が定める深夜労働に対する割り増し賃金とは別に、JRが就業規則で定めた手当の一つで、これまでは乗務員は支給の対象になっていなかった。
この提案は、乗務労働の特殊性を否定し、乗務員に支給される手当を他の職種にも共通する一般的な手当に解消しようとするものだ。JR資本は、いずれは乗務員手当そのものを廃止しようとたくらんでいる。
「内達1号」の全面清算
乗務員の勤務は列車のダイヤに規定される。だから労働基準法も、乗務員を他の労働者とは別の形で扱っている。例えば労基法34条は「労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定めるが、乗務員にはこの規定は適用されない。労働基準法施行規則により、長距離を継続して乗務する場合は「休憩時間を与えないことができる」とされ、長距離乗務ではない場合も「停車時間、折り返しによる待ち合せ時間、その他の時間の合計」が45分または1時間に相当すれば「休憩時間を与えないことができる」とされている。
これは、労働基準法が停車時間や折り返し待ち合わせ時間は労働時間になるという立場をとっていることも示している。
国鉄が1949年に制定した「内達1号」は、乗務員の労働時間を週45時間とし、折り返し待ち合わせ時間の2分の1、便乗時間の3分の1、自宅待機予備勤務の6分の1を実労働時間として扱い、賃金支払いの対象にするとした。49年は、国家機構の一部だった国鉄が改組され、公社として発足した年だ。その時にまず乗務員の労働条件が規定されたことは、鉄道事業において乗務員の勤務がどれほど重要視されていたかを示している。
以降、この基準の改悪をたくらむ国鉄当局との攻防は、国鉄労働運動のひとつの焦点になってきた。国鉄分割・民営化直前の1982年1月、国鉄当局は乗務時間を延長するとともに、「折り返し待ち合わせ時間の6分の1しか労働時間に換算しない」とする内達1号の改悪を提案した。国鉄分割・民営化に向けた大幅人員削減攻撃の一環だった。これに対し動労千葉は、「動力車乗務員勤務制度改悪阻止」のスローガンを掲げて果敢に対決した。
JR発足後の1992年、JR東日本は乗務員勤務制度を改悪し、折り返し待ち合わせ時間を労働時間に換算する制度自体を廃止した。これと引き換えに、1時間を限度に待ち合わせ時間を支給の対象にする行先地手当が創設された。
JRは行先地手当について、「労働時間ではない時間に支給される不合理な手当だから廃止する」と言う。だが、行先地手当には労働時間をめぐる労働者の闘いの歴史が刻みつけられている。その廃止は、東労組を解体した上、すべての労働組合の根絶を狙うJRの攻撃と一体のものだ。
団結して闘えば勝てる
JRが乗務員手当の全廃を狙っていることは明らかだ。だが、今回の提案では、乗務時間や乗務キロ数に応じた手当という、乗務員手当の根幹を否定することはできなかった。JRは「時間当たりの手当の単価は増額した」として、労働者をなだめようと必死だ。乗務員制度の解体と乗務員手当の全廃をともに一気に強行すれば、労働者の怒りは激しく噴出する。それをJRは恐れている。
労働組合に団結し、職場から反撃に立てば、乗務員制度解体と乗務員手当全廃の攻撃を阻止することはできる。今こそ動労総連合に結集して闘おう。