三里塚請求異議裁判 怒りの証言
三里塚請求異議裁判 怒りの証言
6月28日、千葉地裁で開かれた三里塚請求異議裁判での、三里塚反対同盟・市東孝雄さん(原告)と萩原富夫さんの怒りの証言(要旨)です。(編集局)
100年耕した農地こそ命
天神峰 市東孝雄さん
祖父・市太郎が天神峰の今の場所に1912年に雑貨・飲食などの店を出し、21年ごろに農業を始めました。3代100年近く耕作を続けています。父・東市は14年生まれで20歳のとき徴兵され、45年の敗戦で収容所に入れられ、47年に32歳で帰国しました。地主から借りていた農地は、農地解放でうちの所有地になって当然だったのに、復員が遅れたことで残存小作地になりました。
NAA(成田空港会社)が明け渡しを求めている土地は、この民事5部で7284平方㍍、2部の耕作権裁判で5723平方㍍の計1万3千平方㍍以上、私が耕作する農地面積の73%です。もし取られたら致命的打撃を受けます。
私は中学校卒業後、外へ出て働き、おやじが亡くなって天神峰に戻り農業を継ぎました。おやじは農地の小作権を絶対に売り渡すなと遺言しているので、「同意書」「境界確認書」に署名・捺印(なついん)するはずがありません。
2003年に、私の小作地の底地の所有権が空港公団に買収されたと新聞記事が出て、初めて知り驚きました。翌日に公団職員が横柄な態度で「話し合い」を求めてきたが追い返しました。お金を積めば出て行くというのは、農民を愚弄(ぐろう)する考えです。
それまで地主は何も語らず、地代を受け取っていた。公団と一体の卑劣な詐欺です。小作権者に黙って地主が第三者に土地を売るなど、前例もなく違法であり、売買は無効です。
NAAは「話し合いで解決」「二度と強制手段をとらない」と言いながら、土地の明け渡しを迫っています。農地法裁判一審判決には、話し合いが頓挫した場合も強制手段を講じないとまで言及していないと書いてありますが、裁判長が勝手につくった理屈です。
私は99年の12月に実家に戻り農業を始めました。一番苦労したのは土作りです。表土をもっていけば別の場所でも同じ野菜が作れるというものではない。土壌は生き物です。
有機農業、産直運動で一番肝心なのは消費者にうそをつかないことです。露地栽培を基本に、化学肥料・農薬は一切使わず、旬の野菜を届け、400軒の会員家族の健康・安全に責任をもちます。これこそ自分の生きる道、日本の農業の進むべき道だと思います。農地を取られるということは農民としての自分の命を取られることと同じです。
仮に南台農地でこの裁判にかかる土地が強制執行でフェンスなどで囲われたとしたら、隣接する農地も風通しが悪くなりだめになるでしょう。天神峰農地の作業場や農機具置き場が壊された場合も、有機農業を続けられなくなります。
今、成田空港は朝6時から深夜11時まで騒音をまき散らしています。さらに第3滑走路を造って周辺住民に騒音を浴びせることなど絶対反対です。
NAAは私のことを「騒音を承知で帰ってきた」などと言いますが、B滑走路ができたのは私が帰ったあとです。親が亡くなり、帰ってきて100年耕してきた農地を継ぐことのどこが悪いのか!
NAAは自分で「強制手段をとらない」と公約しておいて、強制執行するのは権利濫用です。絶対に認められません。それを許可するのは裁判所の自殺行為です。裁判所が正義を実現されるよう強く要請します。
まず飛行機を止めろ!
東峰 萩原富夫さん
市東さんが親から農業を受け継ぎ、農地を守る姿に心打たれ、ともに闘っています。萩原家は戦後まもなく入植し、1980年くらいから今日まで市東さんとともに「三里塚産直の会」として化学肥料、除草剤などを一切使わない有機農業の産直運動に取り組んできました。会員約400軒に年間60種類もの安全でおいしい野菜を届けています。
市東さんが二つの裁判で全耕作面積の70%もの農地を取られたら、農業を続けられず、産直も続かなくなります。NAAは市東さんを追い出し、見せしめにすることしか考えていない。NAAという一会社のために農業が犠牲になるなど、あってはならない。
東峰部落では、成田空港のやり方に全員が怒っています。2002年に2180㍍のB暫定滑走路の供用を開始し、人が住んでいる頭上40㍍にジェット機を飛ばしました。03年にはオーバーラン事故が起き、飛行機が東峰神社の手前でやっと止まりました。01年には東峰神社の神社林を伐採、07年には東側誘導路建設による東峰の森破壊が強行されました。市東さんに対しても13年の第3誘導路の供用開始、10年の団結街道の封鎖などが行われた。
現にそこに人間が住んでいるのに、飛行機を飛ばすことで出て行くと思っている。ふざけるんじゃない。まず飛行機を止めろ! 空港公団=NAAは小作者である市東さんに無断で底地を買収し、06年に千葉県知事に解約許可を申請した。こんなデタラメも成田だから許されるというのか。
これを認めるというなら、裁判所が泥棒に味方するということです。上の意向ばかり気にするヒラメ裁判官になりたいですか。市東さんの農地取り上げは怒りの火に油を注ぐことになるだろう。裁判所はそのことを肝に銘じてほしい。
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7・17請求異議裁判・千葉市内デモ
7月17日(火)正午 千葉市中央公園集合
午後2時開廷 千葉地裁