焦点 貿易戦争の火に油を注いだG7 加速する世界経済の分裂
焦点
貿易戦争の火に油を注いだG7
加速する世界経済の分裂
6月8、9日にカナダで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議と、それに先立つ6月1、2日のG7財務相・中央銀行総裁会議は、帝国主義間争闘戦がとめどなく深まり、その戦争への転化が激しく進んでいることを示した。アメリカのトランプ政権が「米国第一」を叫んで保護主義にのめりこみ、EUやカナダ帝国主義がそれへの報復的対抗措置に走る中で、世界経済はまさに分裂化・ブロック化しつつある。
6月1日、米トランプ政権は、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限の適用対象外になっていたEU、カナダ、メキシコに対しても、この措置を発動した。これに対しフランス大統領のマクロンは、「銃を突きつけられての交渉には応じない」と猛反発した。EUは米への対抗措置として、6月20日から28億ユーロ(約3500億円)分の米国産品に25%の報復関税を課すことを打ち出した。カナダも7月1日から米国産鉄鋼、ヨーグルトなど166億カナダ㌦(約1兆4千億円)分に追加関税を発動するとしている。
●議長総括で対米非難
財務相・中央銀行総裁会議には、この対立が直接持ち込まれ、EUやカナダが1時間強にわたりアメリカを非難する場になった。会議は共同声明も出せず、カナダが「アメリカの鉄鋼・アルミニウムの輸入制限は、開かれた貿易や世界経済への信頼を損ない、G7間の協調が危機にさらされている」とした議長総括を公表し、懸念と失望をトランプ大統領に伝えることを米代表団に求めるという異例の形で閉幕した。
これに対しトランプは2日、「年間8千億㌦(90兆円)近くの貿易赤字があるのに、貿易戦争に負けるわけにはいかない」と述べて、EUやカナダへの対抗姿勢をむき出しにした。
●米の最大の標的は日本
トランプ政権が強行している鉄鋼・アルミの輸入制限は、アメリカに輸入される鉄鋼に25%、アルミには10%の追加関税を課すもので、中国と日本を標的に3月23日に発動された。
財務省・中央銀行総裁会議で麻生は、米朝首脳会談を前に日米の蜜月関係を演出しようとし、「トランプ氏に最も近い首脳は安倍晋三」と述べてアメリカと他の5カ国との間を取り持とうとした。だが、その思惑は完全に吹き飛ばされた。
何よりも、トランプが最大の攻撃対象にしているのは日本だ。トランプは自動車にも25%の追加関税を課すことを検討している。トランプはその理由を「輸入急増が安全保障上の脅威になっている」からと公言してはばからない。経済で失ったものを軍事で取り戻すということだ。
●イタリアで財政危機噴出
他方、EUも崩壊しかねない危機にある。イタリアでは「EU懐疑派」と呼ばれる「五つ星運動」と極右「同盟」を軸とする連立政権が発足したが、安定政権にはほど遠い。その中で5月29日、イタリア国債は急落した。欧州でギリシャに次ぐ巨額の累積債務を抱えるイタリアの財政危機問題が再燃し始めたのだ。
新興国の経済も激震にたたきこまれている。この間、米欧日帝国主義の超低金利政策によって供給された過大なマネーは新興国に殺到していた。だが、アメリカの金利引き上げで、その還流が始まった。アルゼンチンの通貨ペソは5月の1カ月間だけで対ドルレートで2割も下落した。トルコの通貨リラも、年初と比べ3割も値を下げた。
全世界で危機が噴出する中で、米帝を先頭に各国帝国主義は世界を戦争にたたきこんでも生き延びようとしている。資本主義の命脈はもはや尽きた。労働者階級の国際連帯で資本主義・帝国主義を打ち倒そう。