安全破壊する乗務員制度解体 合理化施策の強行狙うJR東
週刊『前進』04頁(2945号02面02)(2018/06/04)
安全破壊する乗務員制度解体
合理化施策の強行狙うJR東
朝夕のラッシュに短時間行路を設定
安倍政権が進める「働き方改革」をJR資本は最先頭で担っている。JR東労組が大崩壊する中で、JR東日本は矢継ぎ早に大合理化提案を打ち出した。その最たるものが乗務員勤務制度の大改悪だ。これは、乗務員のあり方を根本的に解体するものだ。
提案は、朝夕のラッシュ時間帯に短時間行路を設定し、今までは乗務することがなかった指導員や支社課員、当直を定期列車に乗務させるという。支社課員の場合は、早朝に短時間乗務してから支社に出勤して勤務し、夕方にまた乗務することになる。乗務労働は片手間仕事として扱われる。これでは安全は根本から崩壊する。
悪らつなことにJRは、育児や介護を抱える労働者も希望すれば短時間行路だけ乗務できるようにするとして、この提案を労働者のためのものであるかのように押し出している。
だが、現在の短時間行路は日昼時間帯に設定されているが、それがラッシュ時に移されるとすれば、乗務する時間は早朝や深夜にずれ込む。これで子どもを保育園に送り迎えすることができるのか。育児や介護は口実に過ぎない。
しかも、短時間行路は通常の交番からは外される。今までどおり、交番で乗務する労働者の労働は、さらに過酷なものになる。交番勤務する労働者の拘束時間や実乗務時間は延長される。すでに、ダイヤ改定のたびに乗務はきつくなり、乗務中に倒れるという事態が頻発している。これ以上の労働強化は、まさに命を奪う攻撃だ。
今回の提案では、乗務員手当については「別途提案する」とされているが、JRが手当の廃止をたくらんでいることは間違いない。それは、大幅賃下げだけにとどまらない攻撃だ。
「乗務員を特別扱いしない」というJRの発想は、あらゆる職種の専門性の否定につながる。乗務員勤務制度が崩されれば、JRのあらゆる職種で労働条件も安全を確保する仕組みも崩される。乗務員勤務制度改悪はそうした位置を持つ。
徒歩巡回を減らし保線部門も合理化
東労組が崩壊過程に入った2月以降、JR東日本が打ち出した大合理化計画はすさまじい。3月には「保線部門におけるメンテナンス体制最適化」と称する合理化提案がなされた。その内容は、乗客を乗せて本線を走る列車が、同時に線路の状態を自動監視するので、労働者が自分の目で線路の状態を確認する徒歩巡回の回数は減らしていいというものだ。線路工事後の仕上がり状態の検査も一部省略する。
さらに、「年間通過トン数が5百万㌧未満で鉄道距離1㌔あたりの1日の乗客が4千人以下の線区」を「閑散線区」と決め付け、そこでは今までJRが行っていた線路巡回などの検査業務も外注化する。線路を修繕する要否の判断さえ、外注先に丸投げされる。
JR北海道の安全崩壊は、基準値を超えてレール幅が広がり、そこを通過した貨物列車が脱線した事故をきっかけに突き出された。この事故を教訓化するのではなく、逆にローカル線はまともに補修しなくていいというのがJRの姿勢だ。その先にあるのは、北海道と同様、ローカル線の全面的な廃線だ。
「事故や故障は起きたら対処する」
さらに3月末には、車両の検査・修繕業務にかかわって「在来線におけるモニタリング保全体系への移行について」と題する提案が出された。これは、山手線に導入された新型車両のE235系は、電車の機器の状態を自ら検知できる装置を積んでいるので、検査の回数を減らしてもいいというものだ。だが、車両の機器は外観では分からないところほど壊れやすい。だからこれまでは、機器を分解し、目視だけでなくたたいて音を聞くなどの検査方法がとられてきたのだ。これらJRの無謀な方針の根本にあるのは、従来のTBM(時間基準検査)という考え方をやめて、CBM(状態基準検査)に転換するということだ。何カ月に1度、列車走行何㌔ごとに1度という形で周期的に行われていた線路や車両の検査を廃止し、線路や車両の状態を監視するIT機器が「壊れた」「壊れそうだ」と判断したところだけを修繕すればいいというものだ。事故や故障は未然に防ぐべきものではなく、起きたら対処すればいいということになる。安全は根本から解体される。
各総合車両センター(工場)でも、業務の根幹にかかわる部分が次々と外注化の対象にされている。
駅業務をめぐっても、外注化の全面拡大がたくらまれている。首都圏では浅草橋駅が外注化の対象になった。これは今後、乗降客の多い大規模駅も全面的に外注化する突破口となるものだ。かつて東労組さえ反対し、外注化がいったん阻まれた仙台駅出札の外注化も打ち出された。
動労総連合に入り職場から闘おう!
JRの合理化提案には、「時間軸を意識する」「スピード感を持って行う」などの文言が必ず用いられている。まともな労資交渉もやらずに施策を強行するというのがJRの構えだ。これを許せば労働者は過労死・労災死に追い込まれる。今こそ職場から声を上げよう。
動労総連合は国鉄分割・民営化で解雇された1047名の解雇撤回へ、新たな労働委員会闘争に打って出た。これは第3の分割・民営化攻撃を真正面から撃つ闘いだ。動労総連合とともに乗務員勤務制度改悪阻止・全面外注化阻止の闘いに立とう。7・1国鉄集会に集まろう。