仏でも労働法制巡り激突 労働協約否定するマクロン政権
週刊『前進』04頁(2943号02面04)(2018/05/28)
仏でも労働法制巡り激突
労働協約否定するマクロン政権
(写真 4月3日、南仏マルセイユのサンシャルル駅構内でストライキ突入総決起集会を開く国鉄労働者)
フランス階級闘争は、国鉄労働者の長期スト、学生の大学占拠を軸に公務員労働者、航空労働者などとも合流し、高揚局面を迎えている。1968年5月革命の再来といわれる労学共闘の展開は、フランス帝国主義を大きく揺さぶっている。以下、マクロン政権の攻撃の中軸をなす労働法制改悪の内容を暴露する。
「企業協定」優先
マクロン政権は昨年9月22日、労働法制を抜本的に改悪する五つの政令(オルドナンス)を発表、12月22日に施行した。政令とは政府の超議会的権限を行使して議会審議なしに制定される法律であり、一種の「授権法(全権委任法)」だ。マクロン政令の反労働者性は第一に、労働組合との団体交渉で全国的産業的レベルで締結される労働協約の優位性を否定し、「社会的合意の促進」という名目で、個々の職場における「企業協定」に法的優位性を与えたことだ。企業内の労資の力関係で決まる労資合意、実質的には企業の就業規則を職場のあり方の基本に据えたのだ。労働組合の無力化、労働運動の解体を狙う攻撃だ。
労組無力化狙う
第二に、団体交渉と労働協約の足元を掘り崩す措置として、職場に新たに「社会・経済委員会」という組合から独立した「従業員代表」組織の設立を法的に義務付けたことである。従来、職場の全員投票によって選出される「企業委員会」が企業と協議し、日常的な諸問題に対処してきた。その場合、産業別労働協約の優位が前提だった。政令はこれを覆し、「企業協定」の締結を担い支える組織として「社会・経済委員会」を置くとしている。
フランスにおける労働組合の組織率は2008年の8・1%から2014年の7・3%へと低下した。欧州連合(EU)の最低グループに入る。フランス・ブルジョアジーは、これを見透かし、職場における労組の影響力を一掃する攻撃に出てきているのだ。
解雇条件の緩和
第三は、企業における解雇条件の緩和である。フランスには「個人的理由による解雇」と「経済的理由による解雇」がある。
「個人的理由による解雇」においては、企業が解雇の「実質的な重大な事由」を証明できない場合、労働者の訴えに基づいて労働裁判所が企業側に賠償金の支払いを命じることが規定されているが、政令が賠償金の金額に上限を設定したことによって、企業は十分な理由を示さなくても一定の金額を支払えば労働者を解雇できることになった。
「経済的理由による解雇」においては、企業の海外の事業所での解雇の場合、国内の本社の業績(受注の減少、売り上げの減少、市場の後退、財務状況の悪化、総利益の減少など)のみを理由に、当該の職場の状況に関係なく解雇できることになった。
これに加えて「集団的合意による契約解消」(RCC)という規定を新たに定めた。従来の「個人的合意による契約解消」(希望退職) という「偽装され、姿を変えた退職の強要」を集団に拡大するものだ。「契約解消」の理由として、従来のように経営上の危機など経済的理由を提示する必要がなくなり、任意に解雇ができる。「集団的合意」が成立するためには、職場労働者の50%以上を代表する労組の承認が必要だとされ、体制内労組の協力が前提とされている。
この条項は今年冒頭、自動車資本PSAによる他社の合併に伴う大量解雇に適用された。御用組合の賛同のもと数千人が解雇・配転された(『国際労働運動』2018年3月号参照)。
「68年5月」再現
フランスにおける労働法制改悪の攻撃は、前オランド社会党政権による「エルコムリ法」の制定で本格化した。同法は、労働条件・賃金・解雇・年金などの決定権を団体交渉―労働協約から企業協定に大幅に移した。これに対して労働者階級は2016年の数カ月にわたるスト・デモで反撃した。オランドは、議会審議を経ず、内閣権限の行使という非常手段で同法を強引に制定したが、一定の譲歩を強いられた。この譲歩にマクロン経済・産業・デジタル相(当時)は不満を表明し、大臣を辞任、次期大統領選への準備を開始した。マクロンは2017年5月の大統領選で新党「共和国前進」を率いて当選、9月に労働法制改悪政令を発表したのである。
マクロンは、今年2月、鉄道改革法案を提出して国鉄労働運動解体に着手すると同時に、大学進学制度改悪を強行し、学生の選別で未来の労働者への分断を図っている。これに対する労働者人民の回答が「68年5月」の再現である。
世界大恐慌が深化する絶望的状況からの突破口を帝国主義間争闘戦―対外侵略戦争と国内階級戦争の激化に求める仏帝・マクロンに対して、フランス労働者階級は体制内指導部の屈服と制動を乗り越え、闘いに立ち上がっている。