リーマンを超える大恐慌と朝鮮戦争・世界戦争の危機 安倍政権打倒の情勢が急成熟 城戸通隆

週刊『前進』04頁(2937号04面01)(2018/04/30)


リーマンを超える大恐慌と朝鮮戦争・世界戦争の危機
 安倍政権打倒の情勢が急成熟
 城戸通隆

(写真 春闘を闘う動労千葉のCTS【千葉鉄道サービス】本社抗議。50人が団体交渉に向かう組合員を激励【4月12日】)


 2008年9月15日に爆発したリーマン・ショックは、最末期帝国主義の絶望的延命形態=新自由主義の下での金融大恐慌―世界大恐慌の歴史的爆発だった。この大恐慌は、日米欧などの超金融緩和やゼロ金利・マイナス金利といった前代未聞の財政・金融政策の総動員にもかかわらず、29年大恐慌後の1930年代の大不況をもしのぐような超低成長=実質的な大不況として、今も継続している。それどころか金融セクター(部門)の一層の大膨張が示すように、リーマン・ショックを超える新たな金融危機の爆発も早晩、不可避だ。米帝トランプを先頭とした保護主義と貿易戦争、争闘戦の激化は、次なる大恐慌と朝鮮侵略戦争、世界戦争の危機をいよいよ加速する。JR東労組の分裂・崩壊という決定的情勢と切り結び、国鉄闘争を軸に労働運動、学生運動の爆発と国際連帯の発展、とりわけ戦争・改憲阻止決戦の壮大な爆発で、大恐慌―世界戦争の切迫と対決し、プロレタリア世界革命へ闘おう。

最大のリスクは全世界的な過剰債務と金融バブル

 まず結論から言って、リーマン・ショック以上の大恐慌の再爆発は不可避だ。しかもそれは朝鮮侵略戦争や、中国とロシアをも巻き込む世界戦争の危機の加速・切迫と一体である。大恐慌が再爆発する経済基盤と条件は何も変わっていない。より深刻化している。現下の世界経済の最大の危機は、過剰資本・過剰生産力のもとでの世界的な過剰債務問題である。まずその実態から見てみよう。
 日米欧の中央銀行が大恐慌対策として続ける超金融緩和とゼロ金利・マイナス金利など超低金利のもとで、この間、金融セクターの膨張が止まらない。FRB(米連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)と黒田日銀は、あふれるマネーを市場に流し込んできた。世界で流通するドル(ワールドダラー)は17年10月末で6・9兆㌦(約785兆円)と、10年間で3・4倍だ。また16年時点の世界の通貨供給量は実に87・9兆㌦(約1京円)で、06年からの10年間で76%も増え、GDP(国内総生産)総額を16%も超える。
 そして超金融緩和と超低金利のもと、政府、企業、金融機関、家計の債務(=借金)総額もリーマン・ショック前よりはるかに増大し、18年1月の時点で全世界の債務残高は約217兆㌦、対GDP比で330%、危機前の1・2倍に膨らんでいる。この中で今や世界第2の経済大国である中国スターリン主義の債務問題も金融危機爆発の重大火点と化しており、16年末の中国の金融を除く債務残高はGDP比で257%、大手銀行や重債務企業の破綻の危機が迫っている。

株、不動産、債券へマネーが流れ込む

 超金融緩和による「空前の金余り」であふれるマネーは、どこに向かっているのか。株式市場、不動産市場、そして国債などの債券市場だ。とりわけ世界の株式時価総額は、リーマン危機後の09年春には30兆㌦を割っていたが、17年には86兆5300億㌦と3倍近くにまで大膨張。これは世界の名目GDPの約110%に相当し、株価は明らかに「割高」水準にある。この数年、史上最高値を更新しているニューヨーク市場のダウ平均株価などは、完全に金融バブルそのものと言える。
 リーマン・ショックは、過剰資本・過剰生産力のもと、実体経済の規模をはるかに超えて金融依存にのめり込み、ITバブルに次いで住宅バブルを生み出し、そこでの信用度の低いサブプライムローンと「証券化商品」の膨張が、ついに破裂して起きた。その基底には経常黒字国の日独と中国、経常赤字国の米英という「世界経済の不均衡」と、経済政策での「国際協調」の不可能化があった。
 今またリーマン・ショック前を超える金融バブルと過剰債務問題が現実化している。その中で米帝トランプを先頭に保護主義と貿易戦争が始まった。それは世界経済の分裂と収縮に転化し、リーマンを超える危機と大恐慌を早晩、再爆発させていく重大情勢だ。

大恐慌を引き起こす岩盤=過剰資本・過剰生産力

 過剰資本・過剰生産力とは、重化学工業・独占・金融資本という資本主義の帝国主義段階に特有の経済実体であり、それは経済の好不況のサイクルなどで解消することができず、大恐慌の爆発を不可避とする岩盤的な土台である。
 実際、新自由主義はリーマン・ショック―大恐慌によってもこの問題を解決できず、一方では労働者に労組破壊・団結破壊、民営化、外注化、総非正規職化、そして過労死などを強制してきた。また他方では伝統的な製造業の停滞の中で金融バブルを膨らませ、AI(人工知能)、産業用ロボット、IoT(モノのインターネット)など、IT(情報技術)の世界にのめり込み、同時に労働者を生産から排除する破滅の道を進んできた(AIやロボットの導入で25%とか30〜40%の労働者が仕事を失うという報告もある!)。
 過剰資本・過剰生産力の問題をより実体的に見てみると、一つは「鉄は国家なり」と言われてきた鉄鋼だ。16年の世界の粗鋼生産能力は23億8070万㌧、10年間に6割も増えた。このうち中国が11億6460万㌧と半分近くを占める。しかし世界の消費量は16億1700万㌧で、生産能力の約3分の1が過剰である。もう一つ「産業のコメ」と称される半導体には「シリコンサイクル」なる3〜4年周期の好不況の波があり、技術革新による世代交代が激しく、巨額の設備投資もすぐに過剰化し需給バランスが崩れてしまう。
 過剰資本・過剰生産力でいま一つ重要なことは、鉄鋼や半導体の問題が示すように、グローバリズムの進展の中で中国、韓国、台湾やインドなどの諸国が世界経済に組み込まれて、部分的には日米欧をしのぐような生産能力を獲得してきたことだ。これが伝統的な帝国主義の過剰資本・過剰生産力問題をもう一つ激烈化しているのである。

大不況、物価・賃金伸びず人口も減少

 この間の異常な超金融緩和にもかかわらず、リーマン・ショックから10年目の世界経済の現状は、第一に大不況とも言える歴史的な超低成長だ。IMF(国際通貨基金)によれば16年のGDP成長率は世界全体は3・2%だが、日米英とユーロ圏はすべて1%台で、17年の予測も大体同じだ。第二に、物価上昇率は緩和マネーの大洪水にもかかわらず日米欧すべてで「2%」の目標に届かない。過剰資本・過剰生産力の岩盤がそれを規定しているのだ。第三にOECD(経済協力開発機構)35カ国の実質賃金の伸び率は、13〜17年について見るとわずか0%〜0・5%だ。日本は17年は主要国の中で唯一マイナスである。第四に失業率は米日独などで低く「完全雇用状態」と言う。しかし特に日独などの場合、根底にいわゆる生産年齢人口の減少という、新自由主義が生み出した大問題があるのだ。

トランプの保護主義・貿易戦争で世界経済は分裂へ

 2月冒頭から世界的な株価暴落が始まった。震源地は米経済で、長期金利上昇や経済の過熱化などへの懸念が引き金となった。
 米ダウ平均が2月2日、5日の2日間で1800㌦超(過去最大幅!)も暴落し、連動して日経平均が2月5日、6日に合計1600円以上吹き飛んだ。さらに2月8日、9日には日米やアジア株などが再び全面安となり、これ以降、世界の主要23市場で株安連鎖が続き、3月までの1カ月間の下落率は日経平均が9・8%と最大だ。米、独、英、中国、インドの大幅下落がこれに続いている。
 世界の株式市場は今もトランプの保護主義と米中貿易戦争に一喜一憂し、危機的な乱高下を繰り返している。すでに見たようにニューヨーク市場など世界の株価は、リーマン前以上のバブルであり、その破裂=暴落の過程がついに始まった。これと一体で「米国第一」を叫ぶトランプの保護主義、貿易戦争、米中を軸とする争闘戦の歴史的激化が、世界経済の分裂・大収縮を引き起こし、リーマン・ショックを超える金融大恐慌―世界大恐慌が爆発する情勢が急切迫しているのだ。

没落深める米帝が対中争闘戦を激化

 トランプは3月1日、「安全保障」を口実に通商拡大法232条を発動し、鉄鋼とアルミニウムに25%と10%の追加関税をかけると発表した。対象は世界全体だが、主要なターゲットは中国と日本である。さらに4月3日には中国の「知的財産権侵害」への制裁を理由に通商法301条を発動し、航空機、自動車、産業用ロボット、半導体など約1300品目に25%の追加関税を課すと発表した。
 これは2025年までに世界の「製造強国」になるという「中国製造2025」に掲げる主要10分野(重要産業)を狙い撃ちする、露骨な対中争闘戦=貿易戦争政策だ。
 トランプの登場と保護主義、貿易戦争の根底には米帝の没落がある。その象徴はいわゆる「ラストベルト」(さびついた工業地帯)の鉄鋼や石炭など伝統的製造業の衰退だ。そして今や米帝の貿易収支、経常収支は巨大な赤字となり、最大の対中貿易赤字は17年には3752億㌦(約40兆円)に及ぶ。トランプはこれを「1000億㌦減らす」と言う。
 さらにGDP規模でいずれ米帝を抜こうという中国スターリン主義が、特に昨年来、習近平の終身独裁体制の強化のもと、「製造強国」「社会主義現代化強国」路線や「一帯一路」構想=勢力圏化政策などを推進し、ITなどの先端技術分野でも米帝に激しく追いつこうとしている現実がある。それゆえトランプが仕掛ける対中貿易戦争は、「技術覇権」をめぐる争闘戦の様相も帯びている。
 米帝の対中制裁に対し、中国もすぐ同等規模の対抗策を打ち出した。しかしこのまま激突と報復合戦が続けば「米中共倒れ」の危機すらあり、世界経済の分裂・収縮と、大恐慌の再爆発を促進する。だから双方が「水面下の交渉」も始めているが、米帝の生き残りをかけた米中間の「危険なチキンレース」とその破綻リスクは、予断を許さない状態だ。

対中国・ロシアで世界戦争も辞さず

 米帝トランプは安保政策でも中国とプーチンのロシアに対し、敵対意識をむき出しにしている。17年12月に発表された「国家安全保障戦略」は、中国とロシアを米帝中心の戦後体制に挑戦する「修正主義勢力」「現状変更勢力」と規定した。これは歴史的な帝国主義の勢力圏拡大競争なども念頭に、米帝の国益を守るためには保護主義や貿易戦争と同時に、中国やロシアを相手に戦争=世界戦争をも辞さないという政策だ。また他方で新たな核戦略方針で、核兵器のさらなる「近代化」を強調したことも重大である。
 一方の中国スターリン主義はこうした情勢下、昨秋の党大会や今年3月の全人代で「米国主導の世界秩序はもう時代に合わなくなっている」「世界の統治システムの変革や建設に積極的に関わっていく」ことなどを確認し、従来からの路線転換的な方向に動き始めている。またウクライナ侵攻やシリア軍事介入を強行してきたロシアのプーチンは、「核大国」「新型戦略兵器」などを誇示し、欧米への強硬外交路線を叫んで大統領選で4選した。

東アジア・朝鮮で切迫する戦争危機

 こうしてリーマン・ショックを超えるような大恐慌爆発の現実化は、同時に帝国主義戦争、帝国主義的侵略戦争、中国スターリン主義やロシアをも巻き込む世界戦争を不可避としていく。それは実際に核戦争となる。
 足元での戦争の最大の火点は東アジアであり、米帝トランプが日帝・安倍などとともに強行しようとしている朝鮮侵略戦争だ。それは北朝鮮スターリン主義の体制転覆と、民主労総を先頭とする韓国労働者人民の革命的なゼネスト決起の圧殺を狙った戦争である。
 ソ連スターリン主義の崩壊以来、米帝は残存スターリン主義の中国や北朝鮮の体制転覆を世界戦略の根底に据えてきた。それゆえ北朝鮮は体制の延命をかけて核武装化に必死となってきた。だがここにきて北朝鮮と韓国、中国、米帝の間の首脳会談などをめぐる外交が激しく展開されている。だが事態は戦争強行か否かの予断をまったく許さない状況だ。
 日本の労働者はこの東アジアで、南北朝鮮、中国、アメリカなどの労働者人民と連帯し、米日帝国主義の朝鮮侵略戦争を阻止し、それを内乱へと転化するために闘うことが求められる。安倍打倒、戦争・改憲阻止の決戦の歴史的爆発こそ、この闘いに勝利する道だ。

安倍・黒田の超金融緩和で破綻へと進む日帝経済

 安倍政権の腐敗と犯罪性は極限に達している。安倍は世界で真っ先にトランプを支持し、日米首脳会談でもトランプに追随しつつひたすら北朝鮮への「制裁と圧力」(それ一辺倒!)を叫び、朝鮮侵略戦争策動の先兵となってきた。戦争国家化と9条改憲は安倍の最大の狙いであり、そのためにこそ防衛費増強=大軍拡を進め、天皇代替わり儀式やオリンピックも使って、排外主義やナショナリズムを大扇動している。
 この5年間の「アベノミクス」なる反動的な経済政策は、黒田日銀を「通貨の番人」どころか「政府の金庫番」に変えた。日銀はすでに大量発行の国債を4割以上も買い入れ、完全に「財政ファイナンス」を行っている。
 超金融緩和とゼロ金利・マイナス金利は、「円安と株高」への誘導で輸出型大企業に高収益をもたらしたが、銀行の伝統的業務を崩壊させ、預金者はゼロ金利にあえいでいる。また「株高」を演出するために安倍と黒田は年金資金を25%までリスク運用させる一方、日銀自身もETF(上場投資信託)を年6兆円の規模で買い入れてきた。今や日銀が日本株の最大の買い手と化し、ついに日銀が外国人投資家を逆転した。日銀保有のETF残高は24兆円まで膨張し、日銀は日本株全体の4%を持つ巨大株主だ(官製相場!)。
 さらに安倍と黒田のもと大企業は高収益で内部留保も400兆円を超えたが、過剰資本・過剰生産力のもとでは設備投資に向かわず、海外を含む大規模なM&A(合併・買収)に資金を注ぎ、それが「常態化」している。しかも労働者の賃金は伸びず、この16〜17年の実質賃金の伸びはマイナスか0%台だ。消費も低迷が続く。そもそも黒田日銀の最大テーマという「2年で2%」なるインフレ目標は6回も先送りされ、米欧と比べても超金融緩和の「出口」も見えない危機的な状態だ。
 安倍が少ない「成果」として押し出す失業率の低下や「有効求人倍率」の上昇も、この5年間で生産年齢人口が400万人以上も減少した結果なのだ。企業の倒産や営業不能を引き起こしている深刻な「人手不足」は、新自由主義のもとで労働力を再生産できなくなっている資本主義の最末期の姿である。

JR東労組の解体という決定的情勢

 森友、加計、防衛省「日報」問題と、安倍政権の腐敗、権力私物化、その隠蔽(いんぺい)、居直りはすでに耐え難い状態だ。労働者人民は安倍を一刻も早く倒したいと熱望している。安倍打倒と戦争・改憲阻止は待ったなしだ。
 こうした中で、JR東労組の分裂・崩壊という決定的事態が起きている。これは国鉄分割・民営化以来30年の新自由主義攻撃、JR資本とカクマル結託体制による労働者支配の最後的な崩壊であり、連合の大分裂の危機にも連動する。まさに労働運動の大再編情勢だ。それは労働者の総反乱を生み出していく。この重大情勢に全力で切り込もう。青年を先頭にすべての労働者は、動労千葉・動労水戸―動労総連合のもとでともに闘おう。

戦争・改憲を阻止し革命勝利へ進もう

 今国会の最大焦点でもある安倍の「働き方改革」は、ブルジョアジーの意を体して年功賃金や時間給制を解体し、能力給・成果給のもと、「長時間労働の是正」とは裏腹に労働時間を実質上は青天井とする、「残業代ゼロ」「過労死促進」の大攻撃だ。それは労働者の団結破壊の攻撃そのものでもある。データ偽造問題で「裁量労働制」は吹き飛んだが、問題の本質は何も変わらない。絶対粉砕あるのみだ。
 戦争・改憲阻止、「働き方改革」法案粉砕、安倍打倒! 米日帝国主義の朝鮮侵略戦争阻止、「侵略戦争を内乱へ!」。改憲阻止決戦はいよいよ決定的となった。国鉄決戦を発展させ、労働運動、学生運動、国際連帯の前進で勝利を切り開こう。大恐慌と世界戦争の危機に熱烈に立ち向かい、プロレタリア日本革命―世界革命へ前進しよう。

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▼実質賃金 労働者の購買力を示す指標で、現金給与総額(名目賃金)から物価変動の影響を差し引いて算出する。
▼財政ファイナンス 政府発行の国債等を中央銀行が直接引き受けること。中央銀行が通貨を増発して政府の財政赤字の穴埋めなどに直接協力することを意味する。軍事費など政府支出の野放図な増大を招き、悪性インフレを引き起こすとして、戦後は財政法第5条によって禁止されている。

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