裁量労働制は撤廃しかない 大うそをつき過労死強いる安倍
週刊『前進』04頁(2919号02面02)(2018/02/26)
裁量労働制は撤廃しかない
大うそをつき過労死強いる安倍
「裁量労働制の方が労働時間が短い」という調査データのでっち上げが暴かれ、安倍政権は答弁の撤回と謝罪に追い込まれた。それだけで内閣総辞職に値する。しかし安倍は「働く方々にとっても極めて重要な改革だ」と強弁し、施行延期のペテンで働き方改革一括法案を今国会で成立させようとしている。安倍を倒そう。過労死と低賃金を強いる労働法制改悪阻止、裁量労働制撤廃へ闘おう。
現行法でも殺されている
安倍政権は、厚生労働省が手を加えた2013年度労働時間等総合実態調査の資料を、働き方改革法案について審議した13年10月の労働政策審議会で示し、15年7月の衆院厚生労働委員会、17年2月の衆院予算委員会での厚労相の答弁でも使ってきた。一般労働者については1カ月のうちの「最も長い日」の残業時間に所定労働時間の8時間を加えて1日の労働時間を算出した一方、裁量労働制の労働者については通常の1日の労働時間で比較していた。うそのデータ比較で「裁量労働制拡大で長時間労働が緩和する」と受け取れるデマまで流して、労働法制大改悪を進めようとしてきたのだ。労働者と遺族の怒りが沸騰している。裁量労働制とは「本人の裁量で働くことのできる」業務につく労働者の労働時間計算を、実労働時間ではなく「みなし」で行う制度であり、労働基準法の労働時間規制を緩和する。実際に何時間働いても「みなし」分しか働いていないことになる。しかし資本の指揮・命令から外れて「裁量」で働く労働者などいない。裁量労働制で現実に裁量が与えられるのは資本の側だ。労働者には膨大な業務が押し付けられて「自己責任」の長時間・過重労働が強いられている。
現行法下でも編集者や証券アナリスト、システムエンジニア、技術開発担当、NHK記者などの過労死・過労自殺が繰り返されてきた。厚労省の集計でも11~16年度に裁量労働制で過労死したと労災認定されたのは22人、精神疾患による認定は39人にのぼる。裁量労働制で殺されてきたのだ。遺族から「裁量労働制はわなだった」「若い人が犠牲になっている」「法案を削除しろ」と、怒りが安倍にたたきつけられている。
「非正規職にも適用可能」
裁量労働制には「専門業務型」「企画業務型」などがある。今回、拡大が狙われているのは企画業務型であり、「経営の中枢部門」の労働者が対象とされる。安倍政権は2月6日、裁量労働制について「契約社員や最低賃金で働く労働者にも適用が可能」と明示した。しかし契約社員や最低賃金で働いている労働者が「企業の中枢で裁量権を持って働いている」とは考えられない。安倍は非正規職労働者も含め、極めて広範な労働者を適用対象としようとしている。
大半の非現業職に
裁量労働制の拡大対象とされるのは、何らかの企画業務を管理する立場にある労働者である。チーム単位の実施状況を把握・評価する立場にある係長や班長、チームリーダーなども対象とされる。また、法人を相手とする営業職もほぼ全員が対象となる。15年末に過労自殺に追い込まれた電通の高橋まつりさんの仕事がこれにあたる。厚労省は対象人数を明らかにしていないが、全産業で営業職は342万人。その大半が「定額残業代」にされる可能性が指摘されている。現在は、「名ばかり管理職」の労働者が残業代を求めて裁判で争うと、高い確率で勝っている。労働基準監督署が昨年12月に摘発した野村不動産では、営業職の課長級職員ら約600人に対し、裁量労働制を違法適用していた。労基署は未払い残業代の支払いを勧告した。今後、資本の側は労働者を裁量労働制の対象にすることでそれを無効にすることを狙っているのだ。
現行の裁量労働制のもとでも月給25万円以上の労働者はわずか1割でしかないという調査報告もある。残業代が固定されることで、企業はいくら働かせても上乗せする必要がない。だから「定額働かせ放題・残業代0プラン」と言われる。「みなし」時間の設定次第で最低賃金以下にもなる。長時間労働と超低賃金がセットの「過労死・最低賃金以下」法だ。制度の悪用やごまかしが横行し、労働相談が激増している。
働き方改革一括法案の柱である裁量労働制拡大は、月100時間残業合法化と「残業代ゼロ」法、「同一労働同一賃金」による評価制度の導入、総非正規職化・低賃金化、個人事業主の拡大などとともに、雇用と労働、賃金、団結を破壊する歴史的攻撃である。労働者総体を超低賃金に落として死ぬまで働かせる攻撃は、改憲・戦争と完全にひとつだ。