イギリス鉄道労働者がスト 1人乗務拡大に現場から反撃
週刊『前進』04頁(2915号03面03)(2018/02/12)
イギリス鉄道労働者がスト
1人乗務拡大に現場から反撃
(写真 ロンドン最大のウォータールー駅でのピケット【1月8日】)
イギリスで、年頭から鉄道労働者のストライキが爆発した。1月8、10、12日の3日にわたり、RMT(鉄道・海運・運輸労組)が、メイ政権の後押しでかけられている「1人乗務拡大・車掌廃止・人員削減」の攻撃に対し、五つの鉄道会社の労働者の統一行動としてストに突入した。ロンドンをはじめリバプール、マンチェスター、ニューキャッスルなど全国主要都市間の交通が遮断された。
各鉄道会社は、すでに1人乗務に屈服しているASLEF(運輸職員労組)を動員するなどしてスト破りを策動したが、ASLEFの組合員も各所で組合指令を蹴って、RMT組合員のピケットラインを越えて就労することを拒否した。
ピケットラインに対しては乗客から「がんばれ!」「スト破りに負けるなよ!」と声がかけられ、各所で1人乗務反対についての討論が巻き起こった。世論調査によれば回答者の75%が1人乗務に反対し、ストへの支持を表明した。
1人乗務導入の攻撃は、民営化されたイギリス鉄道の諸会社の共通の政策として、1990年代から政府と運輸省の指導のもとで強行され、駅の無人化や切符販売などの窓口閉鎖と並ぶ重要な柱をなすものだ。
これは、「列車のドアの開閉と列車の駅からの出発の確認を車掌の業務から運転士の業務に転換し、車掌を解雇する」という転換だ。運転士は1人乗務を受け入れる契約書を書かされ、すさまじい労働強化を強いられる。車掌は「会社が必要性を認めた場合にのみ」、かつ安全確保業務と関係のない「車内点検乗務員」という業務への「降格」(賃下げを伴う)を認める場合のみ職にとどまることを容認され、拒否すれば「希望退職」という形で解雇される。
RMTはもちろんASLEFもいったんは反対し、ストを構えて闘争を行ってきたが、現在、ロンドン地下鉄をはじめイギリス鉄道のかなりの部分で、1人乗務やそれに近い形の列車運行が支配的になっている。鉄道各社は1人乗務を想定して製造された列車を購入し、今後も1人乗務を拡大する方針である。
その結果、この数年でベビーカーがドアに挟まったまま列車が出発したり、乗客が線路に転落したりする事故が多発している。ひとたび事故が起これば乗務員が訴追され、有罪判決が下される。これに対する労働者・乗客の不満と怒りが、いま爆発している。
93年のイギリス国鉄の民営化は、日本とは違い「上下分離方式」で、①列車の運行業務、②線路などインフラ管理業務を分離し、それぞれ別個の民間会社に委託するという形をとった。現在、列車の運行を担う会社は全国で25社に及ぶ。昨年8月には日本のJR東日本が三井物産とともに、恥知らずにも「品質の高い鉄道運行実現」「輸送安定性の強化」などを掲げ、中部イングランド旅客鉄道会社の運営権を認可された。
93年に発足したイギリス鉄道は、分社化・業務の細分化のもとで、線路の破断や列車の転覆・衝突などの事故を次々に発生させた。業務の外注化・分社化により、安全対策における責任体制が初めから崩壊していたのだ。当初インフラ業務を担当した会社は2002年に破産している。
(国際連帯共同行動研究所の月報「国際連帯」第6号からの抜粋・転載です)