「トモダチ作戦」で被曝 元米兵ら400人が東電提訴 9人死亡、健康被害も続出

週刊『前進』04頁(2903号03面01)(2017/12/18)


「トモダチ作戦」で被曝
 元米兵ら400人が東電提訴
 9人死亡、健康被害も続出



(写真 空母ロナルド・レーガンの甲板を除染する兵士たち。通常の軍服で、防護服も防護マスクも着用していない【2011年3月】)


 米空母ロナルド・レーガンなどに乗艦し、3・11福島第一原発事故後の「トモダチ作戦」に参加した兵士たちが、原発から放出された放射性物質で大量に被曝した。被曝した元兵士たちとその家族は、東京電力を相手にアメリカ連邦地裁に集団提訴し闘っている。この決起は、フクシマとひとつの闘いだ。

海上に放出された大量の放射能下で

 被曝した兵士たちのうち、すでに9人(被曝後に誕生した、兵士の子ども1人を含む)が死亡した。さらに多くの兵士が除隊せざるを得ず、さまざまながん、白血病、失明、不妊、発熱、全身の激痛、極度の疲労感、下血などで苦しんでいる。(表参照)
 裁判に立ち上がった原告は今年10月時点で約400人にのぼる。彼らは東電が被曝のリスクの情報公開を怠ったとして、健康被害の治療費に充てるための5千億円規模の医療基金の設立などを求めている。
 兵士たちは福島第一原発事故の被害者だ。2011年3月11日、東日本大震災―福島原発事故発生直後、ロナルド・レーガンは命令を受け、急きょ福島沖に向かった。12日深夜、レーガンは福島の東方約180㌔を通過し、救援物資の陸上への送り出しなどを行いながら北上。原発からの大量の放射性物質放出は知らされなかった。そのため、13日の正午から午後3時、レーガンは福島第一原発から放出された放射性プルームの中に入ってしまった。
 艦内では放射能を感知したガイガーカウンター(放射線量計測器)が鳴り響いた。当時のことを何人もの兵士たちが「金属のような味がした」と話している。広島に原爆を投下したB29の搭乗員も同様の証言を残しており、チェルノブイリ原発事故で被害を受けた住民、そして福島の人たちも同じように語っている。兵士たちは巨大なプルームに包まれ、大量に被曝してしまったのだ。レーガンよりも福島に近い海上で展開していた海上自衛隊の護衛艦(海自隊員)も被曝した可能性が極めて高い。
 また艦内では、海水を脱塩処理し、飲料水や調理、シャワーなどに使用している。兵士たちは13、14日とこの水を使用していた。15日になって使用禁止となったが、まったく使わないわけにはいかなかった。放射能汚染の海水からも内部被曝してしまったのだ。
 さらに兵士たちは、甲板や救援作業に従事したヘリコプターなどの除染を、防護服を着用せずに行わされた。洗浄だけでなく、ヘリコプターなどの塗装も削りとった。ここでも放射線が兵士たちの体を貫き、また大量の放射性物質が体内へと取り込まれた。
 甲状腺がんを防ぐためのヨウ素剤も、支給されたのは一部の幹部のみで兵士には配られなかった。だが、指揮官は「受け取った」と署名するよう強要した。

フクシマと一体の生存をかけた闘い

 兵士たちは、約半年レーガンに乗艦し続けた後、除隊した人が多い。だがほとんどが貧困層である上に、被曝によって健康を破壊され働けなくなった。「医療保険に入るお金もない。裁判に訴えなければ、自分の治療費もまかなえない」と原告団長で、1歳半の娘を抱えるシングルマザーのリンゼイ・クーパーさんは語っている。東電は、これは政治問題だなどと居直り裁判の却下を策動したが、連邦地裁に否定され、2014年10月、本格的審理が始まることになった。
 兵士たちの闘いと福島の闘いはひとつだ。アメリカの裁判には「ディスカバリー制度」と呼ばれる証拠開示制度があり、当時者は、求められた広範な関連情報を提出する義務がある。これは訴訟を起こした兵士だけでなく、日本で闘われている裁判でも、被曝の因果関係を立証する手立てとなるだろうと言われている。
 元兵士たちは福島に向けて語っている。「きちんとした補償が受けられない人たちがたくさんいると聞いてひどいと思います。同じ情報を日本でも見ることができる。福島の人たちを守るカサになることを願っています」(リンゼイ・クーパーさん)、「私たちは同じ船に乗っているのです」(被曝のため両足切断手術を受けた元海軍大尉のスティーブ・シモンズさん)
 米国防総省は報告書で、トモダチ作戦参加者の被曝は「極めて低線量」と事実をゆがめている。帝国主義国家と軍は兵士の命も守らず、奪って恥じないのだ。
 トモダチ作戦は、核兵器対策を専門とする特殊部隊も参加した、核戦争想定の訓練だった。そしてこの間、空母レーガンは朝鮮半島沖で訓練を繰り返し、実際の核戦争を狙っている。
 元兵士たちの決起は、被曝責任の隠蔽(いんぺい)を図る日帝・安倍政権、東電との闘いであり、決起の圧殺を図る米帝との闘いだ。さらにまた、朝鮮核戦争に突き進む米帝・日帝と激突し、戦争を阻止する闘いだ。兵士たちとともに、労働者と兵士の強固な国際連帯で闘おう。

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原告の症状(一部)
・骨膜肉腫で死亡
・急性リンパ球白血病で死亡
・運転中意識喪失、発熱、車椅子生活
・股関節異常、脊柱炎、記憶喪失、耳鳴り
・作戦中に妊娠、多発性遺伝子異変の子どもが生まれる
・頭痛、あごに腫瘤(しゅりゅう)、全身けいれん、大腿部異常、みけん異常
・頭痛、疲労、肩甲骨肥大、足に腫瘤
・潰瘍、腹痛、吐き気、体重減少、偏頭痛、胆のう摘出
・偏頭痛、睡眠障害、疲労、記憶障害、耳鳴り、直腸出血
・腹痛、うつ不安、睡眠障害、白血病、甲状腺にのう胞
・脳腫瘍、耳鳴り、疲労、偏頭痛、めまい

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