社会保障めぐり18年は大激突に 医療・介護・保育破壊と大増税
週刊『前進』04頁(2903号02面03)(2017/12/18)
社会保障めぐり18年は大激突に
医療・介護・保育破壊と大増税
2018年3月末に迫る有期雇用労働者450万人の大量解雇問題とともに、社会保障をめぐるもうひとつの「2018年」問題が急浮上している。安倍政権は、4月から医療・介護制度の改悪、生活保護費削減と保育の民営化・規制緩和などを進め、さらに19年、20年からの消費税・所得税増税と出国税、森林環境税の創設に踏み出そうとしている。攻撃は労働者の生活の全般にわたっており、戦争・改憲の攻撃と一体の、国家による収奪の強化と生活破壊そのものだ。安倍政権はこれを「人づくり革命」「生産性革命」の大攻撃と完全に結合する形で進めようとしている。
「人づくり革命」と結合し留め金外す
厚生労働省は12月6日、18年4月からの診療・介護報酬と制度改定の基本方針をまとめた。続いて9日に安倍は消費増税分などを原資に「人づくり革命」「生産性革命」をうたう「新しい経済政策パッケージ」を閣議決定。14日には年収850万円超の労働者に対する所得増税と新税創設などを盛り込んだ与党税制改正大綱が決定された。政府は18年度、社会保障費の自然増を1300億円圧縮して5千億円に抑える目標を掲げている。命に直結する医療・介護・福祉などの費用が、社会全体を覆う非正規職化と貧困、高齢化によって増えていくのは当然のことだ。それをあたかも「悪」であるかのように言いなして、必要な予算増を暴力的に圧縮して戦争のために使うことなど絶対に許されない。
医療については、看護師のより手厚い体制が必要な急性期病床は「多すぎて無駄」だとして、診療報酬を削減し重症患者の病床を減らそうとしている。追い出される重症患者が膨大に増えるということだ。
介護ではリハビリで「自立支援」の成果を上げた場合に報酬を手厚くするが、「要介護3だった人が要介護2に下げられるといった事態が発生しかねない」と懸念の声が上がる。さらに「過剰な訪問介護を減らす」として、集合住宅で隣接の事業所からの介護の利用回数を減らす。「要支援1、2」の軽度の人向けの訪問介護・通所介護は、全国一律から市区町村ごとの「総合事業」に移る。介護資格を持たない住民をボランティアとしたり、独自の「認定ヘルパー」を雇うことも始まっている。
介護保険料は毎年のように上がり、高齢者の医療や介護の負担増はどんどん進んでいく。生活保護では、食費や光熱費などに充てる「生活扶助費」の1割引き下げなどが狙われている。
保育は「人づくり革命」の「幼児教育無償化」「待機児童解消」攻撃の最大の柱とされる。国の保育士配置基準は「1歳児6人に1人」だ。政府は昨年3月、労働者や保護者の闘いで保育士配置や保育スペースが国より手厚い自治体に、基準の引き下げを求めた。しかしこれは現場の闘いではね返された。それを政府は今回、基準の半分で済む企業主導型保育所の定員規制を撤廃し、そこに予算を回し法人税を下げて優遇するととともに、基準が高い自治体には都道府県単位で圧力をかけて下げることを強いようとしている。民営化・規制緩和による保育の破壊であり、安全の崩壊、労働組合破壊に直結する。
「個人請負」を促す給与所得控除削減
安倍は、労働者を分断して年収850万円超の労働者の「給与所得控除」の上限を引き下げて所得税を上げようとしている。「年収1075万円以上」などとして導入を狙う「残業代ゼロ」法案と同じ手口だ。公務員を含む200万人が対象になるという。他方、株の売買など金融所得で年収2億円を超える富裕層は所得税の負担率が減る。さらに「働き方改革を後押し」し、労働基準法、労働組合法から外れる「個人請負」を促進するために、労働者でなくても適用される「基礎控除」を拡大して減税を図る。20年1月から実施し、それ以降も進めると大綱に明記した。安倍は「生産性革命」として「雇用関係によらない働き方」とともに、「自由」に労働者を解雇できる金銭解雇制にも言及した。
日本資本主義の破滅が迫っている。安倍は、18年3月末の有期雇用労働者450万人、9月末の派遣労働者130万人の大量解雇を許さない闘いを先頭に、労働者の怒りが火を噴くことに恐怖している。社会保障破壊との闘いは、戦争・改憲・労働大改悪阻止とともに労働運動の最大の課題だ。連合を打倒し、18春闘をゼネストで闘おう。