労働者の怒り示したドイツ総選挙 新たなストライキ闘争始まる
労働者の怒り示したドイツ総選挙
新たなストライキ闘争始まる
EUの中軸ドイツで、戦後政治史上でかつてない異例の事態が生じている。9月24日の総選挙から現在に至るまで、メルケル首相は組閣ができず、ドイツは2カ月を超える政治的空白のただ中にある。
●二大政党が歴史的大敗北
今回の総選挙では、2013年以来「大連立内閣」を担ってきた二大政党であるキリスト教民主同盟(CDU)/キリスト教社会同盟(CSU)と社会民主党(SPD)が、政権維持に必要な議席の過半数を占めることができなかった。
SPDがCDU/CSUとの連携を拒否したため、メルケルは連立内閣づくりの交渉を4位以下の中道右派である自由民主党(FDP)と緑の党と開始したが、EU政策や移民・難民問題などで協議が決裂。再選挙に持ち込むか少数政権形成を追求するかという状況に追い込まれ、シュタインマイヤー大統領が介入して、SPDに「大連立内閣」への参加を要請した。SPDは党大会で「大連立」交渉への参加を採決し、メルケルとの協議が開始されることになった。
●新自由主義への怒り爆発
今回の選挙では第一に、大連立を組んでいた二大政党が大敗北を喫した。CDU/CSUの得票率は8・6%減と大幅な後退だ。SPDは得票率で5・2%減、議席数は153に落ち込んだ。第二に、極右政党(「ドイツのための選択肢」)が12・6%の得票率で、初めて連邦議会に第3党としての議席を獲得した。第三に、FDPが5・9%増で議席を回復した。
ここに示されているのは、ドイツの労働者階級の二大政党とこれを補完する中間派に代表されてきた政治への怒りの爆発である。
1998年にCDU/CSUに代わって緑の党と連立を組んで発足したSPDシュレーダー政権は、新自由主義のドイツ版=「ハルツ改革」と称する労働法制・社会保障制度の全面的解体を開始した。東西統一を強行した当時のドイツは巨額の財政支出などで経済が停滞し、失業率が急上昇して「ヨーロッパの病人」と呼ばれていた。SPD政権は、体制内労働組合(DGB=ドイツ労働総同盟)指導部の協力を得て「ハルツ改革」を強行した。
この結果、ドイツは非正規職労働者のあふれる社会となった。この攻撃に対する怒りは05年の総選挙で爆発し、SPDは第1党から転落した。第1党になったCDU/CSUはSPDと大連立を組んでメルケル政権を形成し、「ハルツ改革」を推進したのである。
その結果、09年の総選挙でSPDは歴史的大敗北を突きつけられた。CDU/CSUも後退を強いられ、SPDの代わりにFDPを連立パートナーとして選んだ。13年の総選挙は、FDPを議会から追放した。結党以来の大破産である。新自由主義攻撃に対するドイツ労働者階級人民の怒りはその担い手の全政党にたたきつけられてきたのだ。
こうした既成政党に代わる労働者階級人民自身の党がいまだ政治勢力として登場するに至っていない間隙(かんげき)をつき、議会勢力として登場してきたのが極右政党である。
●大量解雇との新たな闘い
ドイツ経済が恐慌の激化の中で国際的争闘戦に直面する中で、巨大多国籍企業シーメンス(電機・電力から交通・防衛産業に至る)は数カ所の工場閉鎖と6900人の大量解雇を発表した。これに対し、労働者は体制内労働運動指導部の締め付けを食いやぶって闘争に立ち上がりつつある。