日本製造業を覆う不正 極限的人員削減が矛盾の根源
週刊『前進』02頁(2902号02面03)(2017/12/14)
日本製造業を覆う不正
極限的人員削減が矛盾の根源
神戸製鋼所、日産、スバルと連続してきた品質データ改竄(かいざん)や無資格検査などの不正は、さらに素材メーカーの三菱マテリアル、東レへと広がった。11月23日には三菱マテリアルの子会社3社で、28日には経団連・榊原(さかきばら)会長のお膝元である東レの子会社でもデータ改竄が発覚した。
長期かつ組織的なデータ偽装と隠蔽
東レでは完全子会社である東レハイブリッドコード(東レHC)で08年から16年まで、契約基準に満たない製品を、最終チェックを担当する品質保証室長が基準に合うようにデータを書き換えて出荷していた。対象製品は「タイヤコード」といわれる自動車用タイヤの繊維製補強材や、自動車用ホース・ベルトの補強材。特にタイヤコードは国内の全タイヤメーカーに製品を供給していた。三菱マテリアルの子会社3社では、航空機や自動車に使われるゴムや銅製の部品の品質データを改竄し、250社超に出荷していた。ゴム部品は自衛隊の航空機や艦船のエンジンの油圧計の配管部分にも使われていた。
これらの会社では、長期に渡る組織的な隠蔽(いんぺい)が行われていた。
経団連会長榊原が経営握った東レで
この数年でも、15年の東芝による不正会計・粉飾決算、16年の三菱自動車の燃費データ偽装と次々と不正が噴出し、さらにタカタのエアバッグ破裂とデータ捏造(ねつぞう)は安全に直結する問題ともなっている。自動車や電機など製造業の中心、それを支える素材メーカーと、日本を代表する企業が不正にまみれているのだ。東レは売上高が2兆円を超える化学企業大手であり、合成繊維国内最大手で炭素繊維分野では世界最大手(シェア43%)の代表的素材メーカーだ。何よりも、14年から経団連会長を務める榊原は02年に東レ社長、10年に会長に就任(15年に退任)しており、まさに経営トップの時期に子会社で不正が行われていた。
三菱マテリアルは、三菱グループを代表する大手非鉄金属メーカーだ。三菱グループは関連会社とあわせて広大な経済圏を構築している。しかし16年には三菱自動車で燃費データ偽装問題が噴出し、日産自動車の傘下に置かれた。同年に三菱重工業は、祖業の造船分野での納期遅れによって巨額損失を出し、大型客船事業から撤退した。三菱航空機が開発中の国産初のジェット旅客機「MRJ」の納入も大幅に遅れている。
戦後経済をリードしてきた三菱の凋落(ちょうらく)は、電機産業の衰退、自動車産業の構造転換、争闘戦による危機と併せ、日本帝国主義資本の衰退・崩壊の一つの象徴だ。
自動車生産現場の恐るべき労働強化
いま一つ特筆すべきは、不正の中心になっているのが、部品も含めた自動車生産の現場だということだ。根幹には、自動車をめぐる世界的競争と極限的な生産体制がある。日産では、工場での生産が昼夜2交代制になり完成検査ラインが回らない状況で、経営者は人員削減を求め「検査部署も年間1人減らせ」と圧力をかけ続けた。カルロス・ゴーン会長体制のもとで年間世界販売台数をめぐる競争にのめりこみ、すべての矛盾を人員・賃金の削減と労働強化として生産現場に押し付けていったのだ。
自動車メーカーは、無期雇用転換を阻止するために、最長4年半で有期雇用労働者全員の首を切る雇用制度に変えていた。13年4月施行の労働契約法にその「抜け道」をねじ込んだのは経団連だ。こういう連中が不正に手を染めながら、巨額の利益を手にしてきた。ゴーンの16年度の報酬は約11億円だ。
この資本の支配をひっくり返す力は、労働者が団結し職場を奪い返すことだ。闘う労働組合の復権をかけ12・17集会に集まろう。製造業の崩壊的危機で改憲・戦争に突き進む以外にない安倍政権を打倒しよう。