日帝の鉄道輸出は破産 安倍「成長戦略」の柱が崩れる
週刊『前進』02頁(2898号02面03)(2017/11/30)
日帝の鉄道輸出は破産
安倍「成長戦略」の柱が崩れる
JR東日本は10月末に「『今後の重点取組み事項』の進捗(しんちょく)状況等について」と題する文書を発表し、「海外鉄道プロジェクトへの挑戦」をあらためて掲げた。JR東海も新幹線やリニアをアメリカに売り込もうと躍起になっている。安倍もこの間、インドなどへ新幹線を売り込むためのトップセールスに熱中した。だが帝国主義間・大国間の争闘戦が激化する中で、日本帝国主義が「成長戦略」の柱の一つとしている鉄道の海外輸出は大破綻しつつある。
営業運転初列車で事故 日立
今年9月、鉄道車両メーカーで世界2位の独シーメンスと3位の仏アルストムが事業統合を表明した。2015年には中国政府が国策として中国南車と中国北車を統合させ、世界最大の鉄道車両メーカーになった中国中車が発足した。シーメンスとアルストムの統合は、明らかにこれと対抗することが目的だ。他方、日本の鉄道車両メーカーは、日立製作所や川崎重工などの主要6社の合計でも、世界の約10%のシェアを占めるに過ぎない。日帝はこの立ち遅れを克服しようと必死だが、焦れば焦るほど危機は深まる。
日立がイギリスの都市間高速鉄道に納入した新型車両は、10月16日の営業運転開始日の1番列車でトラブルを起こして出発が遅れた。客室の天井にある空調設備も故障して、座席がずぶぬれになった。同列車にはグレイリング英運輸相も乗車していたが、その目前で大失態を演じたのだ。
日帝資本のイギリスでの鉄道車両受注は、日立が初めてだった。これを機に日立はイギリスに大工場を建設し、ヨーロッパに大々的に乗り出そうとしていた。だが、イギリスのEU離脱とも重なり、日立の思惑には暗雲が垂れ込めている。
神戸製鋼、日産、スバルに続いて三菱マテリアルでも不正が発覚し、「技術力」「正確さ」を売り物にしてきた日帝製造業の神話は今や地に落ちている。
イギリスでは、JR東日本と三井物産がロンドン―リバプール間の長距離路線やバーミンガム近郊の路線を持つウエストミッドランド鉄道の運営権を手に入れた。JRが海外の鉄道運営に乗り出すのは初めてだ。今年12月から運行が始まるが、そこには民営化と闘うRMT(鉄道海運運輸労働組合)の労働者がいる。日英の労働者が手を携え、JR東日本と闘う時が来た。
子会社が米で大損失 JR東海
鉄道の海外輸出で最も破綻しているのは、葛西敬之が率いるJR東海だ。JR東海の子会社の日本車両製造は11月、アメリカのカリフォルニア州交通局から受注した2階建て車両の開発・製造を断念し、372億円の解決金を支払うと発表した。同社は2012年にこの案件を受注し、さらなる受注拡大も見込んで巨費を投じて米イリノイ州に工場を建設した。だが、造った車両は規定の強度を満たさず、工程の見直しによる追加費用や納期の遅れによる補償金が繰り返し発生、損失は年々、拡大した。同社が断念した車両の製造は、シーメンスが請け負うことになった。
JR東海は、リニアや新幹線をアメリカに売り込むために在米子会社を設立し、その社長に米軍と関係の深い人物を充ててロビー活動を繰り返している。だが、そのアメリカでJR東海は大損失を出したのだ。
JR東海が強行するリニア新幹線の建設も、この先、どれほど建設費が膨らむかは分からない。JR東海こそ、国鉄分割・民営化の最大の破綻点になる可能性さえある。
JR資本や鉄道車両メーカーによる鉄道輸出の大破産は、コスト削減による競争力強化を狙った外注化・分社化の攻撃、全労働者を非正規職化する攻撃をさらに促進する。
だが、危機にあるのは資本の側だ。労働者が団結を崩さなければ、この攻撃は打ち破れる。第3の分割・民営化攻撃との本格的な決戦を闘おう。