映画「三里塚のイカロス」批判 三里塚の歴史と真実ゆがめ虚偽で「闘争の終結」あおる

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週刊『前進』04頁(2883号03面02)(2017/10/09)


映画「三里塚のイカロス」批判
 三里塚の歴史と真実ゆがめ虚偽で「闘争の終結」あおる


 映画「三里塚のイカロス」(代島治彦監督)が9月から東京を皮切りに全国で上映されている。「三里塚」と銘打ちドキュメンタリーの形をとりながら、三里塚の歴史と真実をねじ曲げ、国家権力による闘争圧殺攻撃に手を貸す「作品」となっている。とりわけ革共同から脱落・転向した元政治局員・岸宏一が中心的登場人物となり、三里塚に敵対するデタラメな主張を述べ立てていることを断罪しなければならない。

中核派への憎悪岸宏一に語らせ

 三里塚芝山連合空港反対同盟は全国の闘う労働者人民とともに半世紀を超えて、国家権力による農地強奪攻撃に対して実力で闘いぬいてきた。今、天神峰の市東孝雄さんに対し裁判の形をとって農地取り上げ攻撃が襲いかかり、市東さんを先頭に反対同盟は全力で闘っている。成田空港は、大規模な地域破壊と騒音地獄をもたらす「第3滑走路建設」という巨大拡張計画を進め、住民が反対の声を次々と上げている。
 この攻防の現実を意図的に完全無視し、「イカロス」は三里塚をこう描く。「正義感に燃えた多くの若者が闘いに駆けつけた。だがセクト間の暴力的対立が激化し理想はついえた」
 これは脱落派の見解であり、国家権力が描く闘争観そのものだ。このテーマをなぞるためだけに登場人物(元活動家、闘争から離れた農民など)が配置され、おのおのの体験などを語る。あらかじめ結論が用意され、それを補強するためにインタビューと字幕解説が並べられている。ドキュメンタリーと言いつつ、例えば市東さんがこの映画に登場することは絶対に不可能な構成になっている。
 そんな作品の中で、「元中核派現地責任者」の岸はまさにうってつけの存在として起用されている。
 岸は冒頭、1967年10・8羽田闘争を回顧して長々としゃべり、後半に再び登場して、「中核派による第4インター襲撃は、自分に相談なしに決行された」と弁解しつつ饒舌(じょうぜつ)に語る。「中核派は農民を無視して三里塚を政治闘争に押し上げた」「中核派は三里塚で主流派になろうとしてテロをやった」「秘密会談に走った反対同盟幹部への弾劾闘争は間違っていた」
 岸の発する一語一語が真実をゆがめ、真実を隠し、自己の脱落・転向を正当化するための言葉だ。

「3・8分裂」は権力の同盟破壊

 1983年当時、第4インターが主導して一坪再共有化運動(反対同盟員所有地の不特定多数への切り売り)という形で、「農地死守・実力闘争」の原則の破壊が企てられた。これは反対同盟を丸ごと条件派へと変質させようとする国家権力中枢からの攻撃だった。
 これに断固反対したのは誰よりもまず、北原鉱治事務局長や市東東市さん(孝雄さんの父)ら2期工事敷地内を中心とする反対同盟農民だった。反対同盟がこの攻撃を粉砕し自らを守りぬいたことで、「熱田派」=脱落派が反対同盟を割って出た(3・8分裂)。この事実を無視して「セクト間の主導権の争い」と描くのは歴史の偽造だ。
 脱落派が掲げる「農民の自主性」とは、「条件交渉の自由」「金をもらって闘争をやめる自由」ということにとどまらず、三里塚闘争の解体・終結を要求するものにほかならない。

脱落者を使った破壊策動許すな

 第4インターはこの攻撃の手先に成り果てていた。彼らは各地で「再共有化推進」集会を開催し、そこで疑問や反対を訴える参加者に凄惨(せいさん)な暴行を振るった。83年5・29仙台集会では、額を割られるなどの多数の重傷者が出た。7・1関西集会でも多数の人が袋だたきにあい、一人の女性は腎臓破裂の重傷を負った。しかも第4インターはこの重軽傷者を会場前に次々と放り出し、大阪府警機動隊に28人を「建造物侵入」で逮捕させた。ほかにも現地と全国での暴力事件は数知れない。
 このような過程を経て革共同は第4インターとの闘争を決意し、84年1月、7月に同派幹部への戦闘を決行。これを機に、第4インターが女性暴行事件などで組織的腐敗の極にあり、三里塚からの組織的逃亡を企てていたことなどが一挙に明るみに出たのである。
 「イカロス」はさらに元空港公団用地部の前田伸夫を登場させ、自宅がゲリラ攻撃されたことへの泣き言を並べさせている。だが、農民切り崩しの張本人に鉄槌(てっつい)が下されたのは当然の報いだ。映画パンフには元反対同盟幹部の島寛征を登場させ、「闘争の終わらせ方」を長々と語らせている。「元反対同盟」の肩書きを持つ者たちが今、闘争破壊のうごめきを一斉に強める中で、「イカロス」がその一翼を担っていることは明らかだ。
 長く熾烈(しれつ)な闘いが過酷極まりないさまざまな矛盾と困難、苦闘と煩悶(はんもん)をもたらすのは避けて通ることができない。だがそれを理由に、権力の意図に沿って「闘いは悲惨だ、無力だ、やめよう」と吹聴することなど絶対に許してはならない。
 三里塚闘争はこれからだ。労農連帯で市東さんの農地を守り、軍事空港を阻止しよう!
(中石浩輔)
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