労働法解体の「働き方改革」 「生産性向上」で過労死強制 「多様な就業」で総非正規化

週刊『前進』02頁(2878号02面01)(2017/09/21)


労働法解体の「働き方改革」
 「生産性向上」で過労死強制
 「多様な就業」で総非正規化


 労働政策審議会は9月15日、「働き方改革関連8法案」の法案要綱について、「おおむね妥当」とする答申を加藤勝信厚生労働大臣に出した。これを受け、安倍政権はこの秋の臨時国会に労働法制の全面改悪案を提出しようとしている。労働法制改悪をめぐってもこの秋は最大の決戦になった。階級的労働運動をよみがえらせ、11・5労働者集会に結集して、安倍の攻撃を打ち砕こう。

「雇用」自体をなくす

 安倍は「働き方改革関連8法案」として、①労働基準法、②雇用対策法、③労働契約法、④労働者派遣法、⑤パートタイム労働法、⑥労働安全衛生法、⑦労働時間等設定改善特別措置法、⑧じん肺法の各改悪案を一つの法案にまとめて国会に提出することを狙っている。これによって、戦後労働法制は根本から解体される。
 それを端的に示しているのが雇用対策法の改悪だ。労働政策審議会が了承した法案要綱は、雇用対策法の名称を「労働施策総合推進法」に変え、「労働生産性の向上」「多様な就業形態の普及」「労働市場の機能の適切な発揮」「評価に基づく処遇」を労働政策の基本理念に置くとしている。
 現行の雇用対策法は、職業安定所(ハローワーク)の業務などについて規定し、「労働者の職業の安定」や「完全雇用の達成」を雇用政策の目的に掲げているが、これらは完全に一掃される。その根底にあるのは、「雇用」という考え方そのものをなくすということだ。
 今年3月、安倍を議長に経団連会長や連合会長らをメンバーとした働き方改革実現会議は、「働き方改革実行計画」を策定した。そこでは「雇用契約によらない働き方による仕事の機会が増加している」ことが強調され、その典型として「非雇用型テレワーク」を挙げている。安倍の狙いは、労働者を「個人請負」の事業主にし、労働基本権を奪うばかりか労働基準法や労働安全衛生法など一切の労働法規の適用外に置くことにある。これは、団結権と労働権を解体する改憲攻撃そのものだ。この「非雇用型テレワーク」を最先頭で推進しているのが東京都知事の小池だ。
 働き方改革実行計画はまた、「日本経済再生に向けて、最大のチャレンジは働き方改革」「働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段」「一億総活躍の明るい未来を切り拓くことができれば、少子高齢化に伴う様々な課題も克服可能」と叫ぶ。「労働生産性の向上」とは、資本が労働者を過労死するまでこき使うということだ。「多様な就業形態」とは、すべての労働者を非正規職にし、資本に解雇の自由を与えて雇用を徹底的に流動化させるということだ。
 第2次安倍政権発足以来、安倍は「日本を世界で一番企業が活躍しやすい国にする」と呼号してきた。そのために労働規制のすべてを取り払い、資本に無制限の搾取を許す攻撃に踏み込んできたのだ。労働法制は、資本の利益を押し貫くためのものに根本的に変えられようとしている。
 国鉄分割・民営化攻撃が吹き荒れるさなかの85年に労働者派遣法が制定されて以来、戦後労働法制の解体は実質的に進められてきた。特に、07年の労働契約法の制定と16年の労働者派遣法の改悪は、その大きな転機だった。今回の改悪は、80年代に始まった新自由主義の攻撃のもとで、重ねて行われてきた労働法制改悪の総仕上げに位置する攻撃だ。

改悪を促進する連合

 労働基準法の改悪も、このスタンスのもとに強行される。だから、その中身も凶悪きわまる。「残業代のゼロ化」は、「高度専門業務」に就き、年収1075万円以上の労働者については、労働時間によらず成果による賃金制度を導入するとして、労働時間規制を撤廃するというものだ。いったんこれが成立すれば、年収条件はいくらでも引き下げられる。
 さらに、「時間外労働に上限を課す」という口実で、逆に月100時間もの残業が合法化される。あらかじめ定められた時間を労働した時間とみなす裁量労働制も、適用対象が拡大される。まさにこれは、「過労死促進法案」だ。
 この改悪を促進しているのが連合だ。労働政策審議会に労働者委員として出席している連合幹部は、「残業代ゼロ」と裁量労働制の拡大については建前としての反対を口にしたが、月100時間残業の合法化や雇用対策法の抜本改悪については賛成した。
 連合を代表して労働政策審議会やその分科会に出席しているのは、事務局長の逢見直人(おうみなおと)や総合労働局長の村上陽子らだ。彼らは7月、時間外労働に上限を課すという修正を施せば残業代ゼロについても賛成するとして、首相官邸との合意を取り付けようとした。これには連合幹部たちさえ反発し、連合は建前としては「残業代ゼロ」反対を掲げ続けることになった。だが、逢見や村上が審議会で「反対」を口にしても、足元を見透かされるに決まっている。この連合があたかも労働者の代表であるかのように振る舞っていること自体、労働者にとって耐えがたい。
 だが、連合は今や分裂と解体のただ中にある。階級的労働運動を職場によみがえらせ、連合を打倒するチャンスが来た。安倍は、労働法制改悪をめぐってだけでなく、改憲をめぐって連合を完全に自分の懐に取り込もうとした。改憲にも徴兵制にも賛成するUAゼンセンを資本丸抱えで育成し、連合を改憲翼賛勢力にするという安倍の戦略は、ひとまず大破綻したのだ。

怒りを組織し11・5へ

 安倍がやろうとしていることは凶暴だ。だがその凶暴さに、労働者が闘えば勝てる展望もはらまれている。多くの労働者が過労死に追い込まれ、誰もが「明日はわが身」と思っている。最低賃金の非正規職で過大な仕事を押し付けられた労働者は、「もう我慢ならない」と感じている。この怒りと階級的労働運動が結びつけば、ゼネストの下地は必ずつくり出される。
 反乱の芽は無数にある。その先頭に動労千葉―動労総連合が立っている。11・5労働者集会―改憲阻止1万人大行進に向けて大組織戦に打って出よう。労働者の怒りで労働法制改悪を阻止しよう。
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