「過労死」「個人請負」を推進 働き方改革一括法案が国会に 「生産性向上」で労働者を殺す
週刊『前進』04頁(2877号02面01)(2017/09/18)
「過労死」「個人請負」を推進
働き方改革一括法案が国会に
「生産性向上」で労働者を殺す
9月8日、働き方改革推進法案の要綱が示された。安倍政権は労働法大改悪の8法案を一括して臨時国会に提出しようとしている。2015年9月採決の安保戦争法関連10法一括法案と同じ手口だ。連合は安倍の働き方改革実行計画に協力する立場を変えていない。しかしその足元から現場労働者の反乱が始まった。
労働者保護規定を一掃
働き方改革一括法案は戦後憲法下の労働者保護規定を一掃し、資本による無制限の搾取のための「生産性向上」原理に置き換える改憲攻撃そのものだ。その柱は、①労働基準法改悪による残業規制の撤廃、②雇用対策法の抜本改悪で「生産性向上」をうたい労働者保護規定から外れる「個人請負」を普及させる、③評価制度に基づく「同一労働同一賃金」などだ。残業規制はなくす
一括法案は残業規制の撤廃に踏み切ろうとしている。労働者を死に追いやる「過労死」法そのものだ。「時間外労働の上限規制」で、繁忙期は月100時間未満、2〜6カ月の平均で月80時間以内、年720時間とする。しかし年720時間に休日労働は含まれず、それを加えれば960時間まで残業させることができる。「過労死ライン」とされる月80時間から100時間の残業を合法化することがどうして許せるか。まして過労死亡事故が続発する建設業や運輸業、医師、研究開発職は除外されている。3月に起きた東京五輪の新国立競技場建設現場の青年の過労自殺を繰り返させてはならない。
「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」で労働時間規制、残業代が消滅する。フレックスタイム制(就業時間枠を固定しない)の清算期間を1カ月から3カ月に拡大。その間に何日間もぶっ続けで働かせ続けることが可能になる。裁量労働制(あらかじめ定めた時間を働いたと見なす)を店頭販売などを除く企画の営業業務に拡大する。15年末に過労自殺した電通の高橋まつりさんの業務はまさにこれだった。
「多様な就業」促進
「労働者の職業の安定」「地位向上」「完全雇用」をうたう雇用対策法を「労働施策総合推進法」に抜本改悪する。「労働生産性の向上」が初めて目的に加わり、労働者の能力などの「評価に基づく処遇」とともに、「雇用」と区別される「多様な就業形態の普及」が条文に入った。労働者とされない「個人請負」「一人親方」の普及だ。「雇用契約ではない商取引契約」として資本は雇用責任を問われず、労働者は団結権・スト権などの労働基本権、労働基準法や労働組合法、残業代や失業保険、労災補償から外れ、逆に損害賠償の責任を問われる。経団連が求める「工場法以前」への回帰であり究極の労働法制破壊である。
アメリカでは全労働者の35%、5500万人が個人事業主、個人請負だ。冠婚葬祭業最大手「玉姫殿」を経営するベルコは全労働者7128人中、正社員はわずか32人。支配人や経理、スタッフは全員が個人請負だ。これに対し解雇撤回を求め争議が闘われている。
「評価制度」で分断
一括法案は「同一労働同一賃金」をうたって、労働者派遣法、パート労働者法、労働契約法に「職務内容、成果、意欲、能力または経験などを公正に評価し待遇を決定する」などという条文を入れる。正規職・非正規職を問わず、資本が評価制度を振りかざして労働者を分断、団結を破壊して労働組合をつぶす。賃下げも解雇も資本の意のままにする「正社員ゼロ」・総非正規職化のための評価制度だ。有期雇用450万人の「無期雇用転換か大量解雇か」が迫り、労働争議が爆発する18年4月を前に、これを押し通そうとしているのである。
連合の足元から反乱が
法案の基礎となる働き方改革実行計画は3月、安倍と経団連会長、連合会長の手で成立した。「生産性向上」「一億総活躍」をうたう実行計画は、戦前の「滅私奉公・産業報国」運動と同じだ。「残業代ゼロ」法案の政労使合意は現場の怒りで粉砕されたが、連合本部は実行計画を支持し続けている。連合打倒の時だ。すでに安倍と連合の足元から反乱が始まった。動労千葉は選別解雇を狙ったJR―CTS(千葉鉄道サービス)の攻撃に対し昨年来の反撃を貫き、勝利的に闘いを前進させている。働き方改革とテレワークの旗を振る小池百合子都知事による非正規職解雇を許さない都庁レストラン闘争が都庁・都労連労働者の怒りと結合して発展している。コンビニや自治体をはじめ過重労働による現職死亡への怒り、解雇や個人請負との闘いが火を噴いている。朝鮮侵略戦争と改憲・労働法制改悪をゼネストで阻もう。国会闘争に立ち11・5労働者集会に攻め上ろう。