原発直近への常磐線延伸阻止 帰還強制・被曝労働を許すな 9・23いわき闘争に大結集を 動労水戸・石井真一委員長が訴え

週刊『前進』02頁(2874号01面01)(2017/09/07)


原発直近への常磐線延伸阻止
 帰還強制・被曝労働を許すな
 9・23いわき闘争に大結集を
 動労水戸・石井真一委員長が訴え

(写真 動労水戸を先頭に80人が浪江駅前ロータリーを制圧し、開通式典に抗議。式典を完全粉砕した【4月1日 福島県浪江町】)


 JR東日本が10月21日から狙う常磐線竜田―富岡間の運転再開に反対して、動労水戸は9月23日に福島県いわき市での集会とデモを呼びかけている。石井真一委員長にお話をうかがった。(聞き手・編集局)


石井真一(いしい しんいち)さん

労働組合が声を上げる

 ----9・23闘争の意義について聞かせてください。
 4月1日に常磐線浪江延伸に反対してストライキと浪江現地闘争を闘いました。その総括から、いわき現地で労働組合が声を上げることが重要だと思ったんですね。
 浪江闘争は安倍政権を震え上がらせたという実感を持っています。浪江町の人たちは5%しか帰還していません。常磐線浪江開通の当日、駅前には人っ子一人おらず、開通することになんの意味があるんだと実感しました。高木陽介・経済産業副大臣やJR東日本副社長の参加する記念式典に80人で抗議行動を闘い、駅舎の中に閉じ込めて完全に粉砕しました。
 3月31日には避難者への住宅援助金が打ち切られました。浪江闘争の後、今村雅弘復興相が「戻る戻らないは自己責任だ」と言い、その後、「(大震災は)東北で良かった」と言って辞任に追い込まれました。
 今度は10月21日に原発の南側の竜田から富岡まで延伸すると言っています。福島第一原発から10㌔圏内で、帰還困難区域もあり、原発直近です。年間50㍉シーベルト以上の汚染地帯もあります。そもそも避難区域解除の基準が福島県だけ年間20㍉シーベルトで国際基準の20倍です。そういうところに戻れということ自体、殺人的な攻撃です。
 いわき運輸区の運転士や車掌、保線区や電力区の労働者が被曝労働を強制されます。労働組合として当然反対すべきです。しかし、東労組も国労も富岡延伸には一言も言っていません。
 今後、車両の検修問題が大焦点になってきます。いわきから北を走る車両のメンテナンスをするのは勝田車両センターです。車両に付いたたくさんの粉塵を労働者が吸い込む。動労水戸の組合員が被曝するリスクが高まってきます。
 ----安倍政権とJR東日本は2019年度中に常磐線を全線開通させることを狙っていますが。
 安倍が招致した東京オリンピックまでに、原発事故はもう終わったんだと演出したいということです。常磐線全線開通阻止は2020年オリンピックに真っ向から反対する闘いです。
 オリンピック自体が資本の金もうけだし、それを口実に築地市場をつぶそうとしています。建設労働者が過労自殺しています。こんなことは絶対許せません。

(写真 JRのダイヤ改定にストライキで反撃した動労水戸が青年組合員を先頭に水戸駅前で街頭宣伝【3月4日 水戸市】)

JRが帰還強制の先兵

 ----福島の原発と常磐線沿線の現状はどうですか?
 収束作業は何も進んでいません。溶けた燃料デブリをどうやって取り出すのか。割れた格納容器から取り出すことは世界初です。再臨界を起こして大爆発する危険性もある。汚染水もタンクに入るだけの水をタンクに移しているだけで、あとは垂れ流しです。
 富岡町は人口が登録上は1万3千人だけど、現在は128人、1%未満しか住んでいません。電車を通す意味はまったくない。なのに「電車を通したから避難区域を解除しろ」と、JRが主導して言っています。
 ----外注化をめぐる攻防は今どうなっていますか?
 10月14日のダイヤ改定も重大な問題です。一番大きいのは常磐線特急の2人車掌を廃止して1人車掌にする攻撃です。車内トラブルや病人が出たらどうするのか。また、水郡線の車掌廃止・ワンマン化も狙われています。この攻防は駅や検修・構内から、車掌、運転士までバラバラに外注化するという「第3の分割・民営化」をめぐる闘いです。
 2012年に検修・構内業務の外注化攻撃があり、動労水戸も約3分の1がMTS(水戸鉄道サービス)に強制出向に出されました。出向協定も結んでないのに、本人の同意もなく出向に出して、それも「3年で戻す」とうそをついて、どんどん延長して結局は10年だという、こんないんちきあるのかということだよね。
 青年労働者の非正規職化の根幹にあるのが外注化です。これに対して動労総連合は強制出向無効確認訴訟を闘い、今年6月に結審になりました。裁判で明らかになったのは、3年で帰す気は会社には当初からなかったということです。いわば転籍の攻撃だったということです。裁判では偽装請負の実態や、外注化でJRとMTSに仕事が分断された結果、脱線事故が起きたことも追及しました。
 60歳以上の雇用のあり方をめぐっても闘っています。9月末で退職する辻川慎一副委員長のエルダー再雇用にあたり、会社は強制配転をしかけてきました。明白な不当労働行為です。「会社の言いなりの強制配転は絶対に認めない。首にするならしてみろ」と闘っています。

スト闘う労組に結集を

 ----最後に、全国の労働者へ訴えをお願いします。
 今必要なのは闘う労働組合への結集だよね。常磐線開通もストライキを打てる労働組合を建設することで阻止できる。われわれは「動労総連合を全国に」という方針を出して、北海道から九州まで全国に結成してきている。動労総連合のようなストライキを打てる労働組合に結集することで労働者の命、権利を守り、戦争にも反対する、自分たちで闘うことができる組合になるということです。
 残業代ゼロ法案をめぐって、連合は合意していたのに撤回せざるをえなくなった。連合が怒りの的になっている。生きていくためには連合では無力だ。われわれとともに闘ってほしい。

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〈解説〉全線開通狙う大攻撃に労働者の誇りかけ反撃

 国とJR東日本は、2011年3・11大震災と福島第一原発事故により一部不通となっているJR常磐線を、2019年度末までに全線開通させる攻撃をしかけてきています。2020年東京オリンピックを前に、原発事故は終わったことを演出するためです。鉄道やインフラにかかわる労働者には被曝労働が強制されます。除染するのは線路の周りだけで、被曝の危険はなくなりません。
 常磐線開通は住民に帰還を強制する攻撃です。今春の小高―浪江の再開と同時に、浪江町など4町村で帰還困難区域を除く避難指示が解除されましたが、戻った住民は約1割しかいません。町の3分の1は帰還困難区域で除染も始まっていないのです。また3月31日には「自主避難者」への住宅提供が切られました。
 今年7月には高木陽介・経済産業副大臣が、常磐線全線開通にあわせて「駅自体(の避難指示)を解除し、降りられるようにすることが重要だ」と宣言しました。年間50㍉シーベルトを超える帰還困難区域の避難指示を、2年前倒しで解除するというのです。住民に帰還を強いる犯罪的な役割をJRが担っています。
 動労水戸は「安全に乗客を運ぶ」という労働者の誇りと労組の社会的使命をかけ、被曝労働を拒否し、常磐線延伸攻撃に立ちはだかっています。動労水戸の被曝労働拒否闘争は被災者、避難者、福島の怒りと固く結びつき、動労福島や舞鶴や愛媛などの原発立地自治体の労働組合の闘いに波及し、原発労働者ともつながり発展しています。

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