リーマン超える大恐慌は不可避 新自由主義の崩壊を世界革命へ 階級的労働運動と国際連帯の前進を
リーマン超える大恐慌は不可避 新自由主義の崩壊を世界革命へ
階級的労働運動と国際連帯の前進を
内外の情勢は〈大恐慌と戦争と革命〉の時代基調を決定的に強めている。帝国主義の危機はますます深まっている。全世界で労働者階級が立ち上がり、7月のG20サミットに対しても「世界を貧困と戦争にたたき込んでいる支配階級打倒」「権力者どもを地獄へ」というスローガンでデモが闘われ、プロレタリア革命をめざす闘いが、青年労働者を先頭に前進している。今夏今秋闘争で「改憲阻止! 安倍を監獄へ!」の闘いの大爆発をかちとり、階級的労働運動と国際連帯闘争の前進でプロレタリア世界革命に勝利しよう。
①恐慌対策のマネーが株や不動産に流れ込む
世界は大恐慌の継続・激化の真っただ中にある。2007年パリバ・ショック、08年リーマン・ショックを引き金に大恐慌に突入して以来、日米欧の帝国主義や中国スターリン主義は天文学的な規模の財政的・金融的手段を総動員し、恐慌からの脱出を模索してきた。しかしそれは、今次大恐慌の根底に横たわる過剰資本・過剰生産力の問題を少しも解決できず、設備投資・個人消費・雇用などあらゆる面で低迷し、危機から抜け出せていない。いやそれどころか、恐慌対策が新たな恐慌の危機をつくり出している。パリバ、リーマンを超える大恐慌の爆発は不可避である。
未曽有の規模の財政・金融出動は、全世界に過剰マネーを氾濫(はんらん)させた。日米欧と中国の四つの中央銀行がリーマン・ショック後、恐慌対策のため市場に供給した資金量(ベースマネー)は10兆㌦(1130兆円)に上る。それが新興国・資源国への貸し出しなどに回って掛け算的に膨らんだ通貨量(マネーサプライ)は、危機前の06年の50兆㌦から14年には90兆㌦に増加した。8年間で1・8倍に膨らんだのである。世界の通貨量は第2次世界大戦後、国内総生産(GDP)と釣り合う形で伸びてきたが、リーマン・ショック以後はGDPからかけ離れて急増した。各国帝国主義(とスターリン主義)がどれほど大打撃を受け、バブル経済化によって資本主義世界経済の維持に必死になっているかを示している。
恐慌対策で世界にばらまかれた資金は、設備投資や生産増強投資に回らずに、投機資金となって株や不動産に流れ込んでいる。現在の世界経済は、膨れ上がった金融バブルが大崩壊する寸前にある。アメリカの株式市場は高騰し、いつ暴落してもおかしくない情勢である。景気も良くなっていないのに株価だけが上がっているのは、インターネット関連株などに緩和マネーが流れ込み、株価がバブル的に高止まりしているからにすぎない。日本も同じであり、大量の公的資金で支えられた「官製相場」だ。
不動産も高騰し、バブル崩壊のリスクが高まっている。カナダでは都市部の住宅価格がリーマン・ショック前の2倍に上昇、アメリカでも商業不動産価格は1・3倍に跳ね上がった。日本も同様に、17年分の路線価(土地の価格)は全国平均が前年を0・4%上回り、2年続けて上昇した。しかし、上がっているのは東京など大都市の商業地だけである。投機(金もうけ)のための土地売買なのだ。東京・銀座の土地価格はバブル期のピーク(1992年)を超え、最高額を更新した。大手不動産会社は売上高、利益とも過去最高が相次ぎ、産業界全体の資金需要が伸び悩む中、不動産業界の銀行借入残高は昨年初めて70兆円を超えた。90年代初頭のバブル期の水準を4割も上回る。黒田日銀の「異次元緩和」の開始から4年超、アベノミクスは労働者を犠牲にして、一握りの資本家だけをもうけさせている。
アメリカの自動車販売では、低所得者層向けのサブプライム自動車ローンの貸し倒れ(貸付金が回収できずに損失になること)の率が約1割に達し、リーマン・ショック直前の水準に近づいている。およそ1兆㌦(111兆円)の自動車ローンのうち約2割がサブプライムローンだ。リーマン・ショックの震源となった住宅ローンには、その後当局の厳しい規制が敷かれたが、自動車融資の規制は自動車販売を促進するために、緩いままできた。これが今、自動車版「サブプライムローン問題」を引き起こしている。連邦準備制度理事会(FRB)の利上げで利払い負担が増えれば、貸し倒れが一段と増える情勢だ。
重大なのが中国である。07年末に5・5兆㌦に過ぎなかったマネーサプライが23兆㌦にまで膨張している。過剰マネーが不動産や「理財商品」と呼ばれる高利回りの資産運用商品に殺到し、金融バブル化している。上海の住宅価格は平均年収の20倍と、バブル期の東京の18倍を上回った。また理財商品は、16年末で前年比24%増の29兆元(約480兆円)という規模に膨れ上がっている。理財商品は元本保証がないものが多く、運用先も不透明なものが多い。こうした結果、民間の債務はGDPのおよそ2倍と、日本のバブル末期の水準にまで高まった。デフォルト(債務不履行)が発生し連鎖的に拡大すれば、その影響・打撃は世界に及ぶ。すさまじい危機が進行しているのである。
②バブルの崩壊を恐れ米欧が金融政策転換へ
こうした中で、アメリカに続き、米欧の主要な中央銀行がリーマン・ショック以後、ほぼ10年にわたり続けてきた金融緩和の解除に動いている。カナダは7月12日、7年ぶりに利上げに踏み切った。イギリス中央銀行も10年ぶりの金融引き締めを視野に入れ、欧州中央銀行(ECB)は6月末、ドラギ総裁が「正常化」に向かう姿勢を示唆した。18年初めにも量的緩和策を段階的に弱めてゆく「テーパリング」に踏み切る見込みだ。各国の金融政策は転換点を迎えている。
だが金融緩和の縮小は、これ自体が恐慌激化のきっかけとなりかねない危機をはらむ。バブル崩壊を阻止するため性急な金融引き締め(利上げ)に動けば、各国の不動産市場や中国をはじめ新興国に流れ出た膨大なマネーが米欧などに還流し、中国でのデフォルトの連鎖的拡大など世界の市場の大混乱をもたらす恐れがある。だがこのまま金融緩和を続けていれば、より巨大なバブルの大崩壊は確実だ。その危機のはざまで、帝国主義各国はあえいでいるのである。「正常化」などと言っているが、各国帝国主義とも、新たな恐慌の爆発におびえて右往左往しているというのが、ことの核心である。
争闘戦しかける米トランプ政権
大恐慌の中で、各国間で保護主義、通商戦争が激化している。7月上旬にドイツ・ハンブルクで行われたG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)は、帝国主義間・大国間の争闘戦の激化を鮮明にした。
G20サミット直前に、アメリカが鉄鋼製品の輸入制限を検討していることが報道された。アメリカの鉄鋼市場では輸入品が3割を占め、米鉄鋼業は劣勢に立たされている。
アメリカ通商拡大法232条では、国防に必要な産業の供給力が低下すれば関税引き上げなどの措置がとれると規定している。これを発動し、関税を20%程度引き上げる案が浮上している。30年以上使われてこなかった保護主義的な措置であり、実行すれば貿易戦争の激化は必至だ。欧州連合(EU)の欧州委員会のユンケル委員長は「実施されれば、迅速に対応する」と対抗策を示唆した。
米帝トランプ政権は激しい危機を深めている。ロシア疑惑がますます泥沼化し、連邦政府の高官人事は大部分が空席のままである。公約に掲げたオバマケア廃止・見直し法案は与党・共和党議員からの反対もあって、成立は絶望的だ。これによって「法人税の大型減税」も「1兆㌦のインフラ投資」も財源の見通しが立たず、暗礁に乗り上げている。イスラム圏6カ国からの入国制限の大統領令は労働者人民の怒りで破綻している。
トランプは昨年の大統領選で「アメリカの雇用を守る」と叫んで当選したが、それがまったくのペテンであったことが早くも明らかとなっている。製造業の就業者数は、就任直後は一時的に増えたものの、5月に2千人減少し、以後ますます減っている。
アメリカの製造業では過去20〜30年間、毎年40万人分の仕事がロボットに置き換えられた。その結果、製造業の雇用者数は1977年から3分の2に減少した(7月6日付日経新聞)。もしも鉄鋼に輸入関税が実施されれば、コスト増を吸収するために自動車など製造業で労働者の賃金はさらに削られ、非正規職に置き換えられる。またロボットの導入で首切りが激化するといわれる。「雇用を守る」など大うそであり、すべての犠牲は労働者階級に押し付けられ、資本家だけが大もうけするのである。まさに「アメリカ・ファースト」とは、アメリカの資本家のためのものである。
トランプの支持率は就任6カ月の時点で30%台の史上最低水準に落ち込み、労働者階級の怒りの決起は拡大している。アメリカ革命の条件が成熟している。
追い詰められたトランプ政権は、G20サミットに合わせて行われた日米首脳会談で、安倍に「対日貿易赤字の是正」を要求した。さらにカナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉にあたり、相手国の通貨政策を制約する「為替条項」の導入を狙っている。むき出しの保護主義政策である。NAFTAで導入されれば、日本との交渉でも同様の条項を要求してくることは確実だ。日帝はこれに対して、EUとの経済連携協定(EPA)の大筋合意や米帝抜きの環太平洋経済連携協定(TPP)で対抗しているが、トランプ政権の対日争闘戦の激しさにぐらぐらに揺さぶられている。
③構造的危機が深まり政策転換できない日帝
未曽有の規模の財政出動・金融緩和政策は米日欧など各国の財政危機を一層深刻化させた。とりわけ日帝は、国と地方の債務残高が対GDP比239%(16年)にのぼり、破産国家ギリシャをはるかに超えて、世界最悪である。また日本経済の成長率は1960年代〜74年をピークに歴史的に低下し、21世紀に入って衰退の傾向をはっきり示している(グラフ参照)。日帝は国際帝国主義の「最弱の環」である。労働者の闘いで絶対に打倒できる。
米欧が新たな恐慌の大爆発に身構えて超緩和政策の転換、利上げに動く中で、日帝だけは身動きが取れなくなっている。日銀・黒田は金融緩和を続行するのみならず、7月上旬の世界的な金利上昇には、追加の国債買い入れで金利上昇抑制を図った。同時に、日銀・黒田は「2%」の物価上昇目標の先送りを発表した。これで6度目の先送りである。安倍・黒田の異常極まる国債購入・マイナス金利の末期的なやり方でも、日帝は大恐慌の現実から抜け出せないのだ。
日銀だけの大規模緩和の継続は、「円安を誘導している」として、米欧帝国主義との激しい争闘戦の火種となる。
日銀は現在、428兆円の国債と、17兆円の株式を上場投資信託(ETF)の形で保有している。今やETF発行規模の6割を日銀が持つ。日銀がユニクロ、ファミリーマートなど大企業の大株主になっている。日経平均株価の2万円突破は「官製相場」なのだ。これによって安倍政権はかろうじて維持されている。だが、金利が上がれば保有国債の時価が下がり、日銀から銀行に支払う当座預金の利払いも増えるというダブルパンチに見舞われる。ETFの購入で積み上がった株式も下落の危機を抱えている。日帝が大きく依存するアメリカの景気拡大には限界が見え始め、「アベノミクス景気」の化けの皮も剥がれ落ちている。安倍政権は、アベノミクスへの「期待」だけで成り立ってきたが、このアベノミクスは今やぼろぼろになっているのだ。次に恐慌が勃発すれば日帝に対応策はなく、破滅しか残っていない。
この危機におびえながらも、日帝は金融緩和を続ける以外にないのだ。それは現在の日帝経済の構造的危機がとてつもなく深いからである。目先の財政・金融政策ではどうにもならないのだ。東電福島原発の大爆発事故、シャープや東芝、タカタなど大企業の経営破綻、国際競争力の低下、労働力人口の減少など、いずれも新自由主義の総破綻を示す事態である。16年度の税収は前年比で1兆円も減少した。消費税率10%を強行しても、20年度は8・2兆円の大赤字になる。世界経済が縮小する中、徐々に国際競争力を失いつつある日帝は、金融緩和で円安に誘導してもかつてほど輸出の伸びはありえない。「景気は緩やかな回復基調にある」(内閣府)などというごまかしの背後で、破滅的危機が進行しているのだ。
④資本主義の末期示す労働者の貧困と過労死
重大なことは、この間、賃金はまったく上がらず、労働者人民はますます貧困と奴隷的重労働、長時間労働にたたき込まれていることである。労働者の賃金は全然上がっていない。2人世帯の実質賃金の伸びは昨年10月からゼロまたはマイナスである。家計消費は15カ月連続減少している。医療・年金など社会保障も改悪されて、労働者階級は将来のことを考えて消費を抑えざるを得ない。一方で企業の内部留保は2012年に302兆円、16年には390兆円に増えた。わずか4年間で90兆円も増やしている。
「失業率は下がった」「求人倍率も上がった」などという宣伝は、まったく許しがたいペテンだ。
5月の有効求人倍率(企業の求人数÷求職者数)は1・49倍となり、安倍はこれを「アベノミクスの成果」と宣伝するが、この数字は生産年齢人口(15歳〜64歳)の減少により求職者数そのものが減ったことの結果であって、実際に雇用環境が改善したわけではない。生産年齢人口は1990年代前半に8700万人だったのが、2016年には7600万人と、20年間で1千万人も減った。11〜14年には毎年100万人単位で減少した。資本主義の末期的危機、新自由主義の破綻を示す数字である。
全国で過労死や過労自殺、貧困ゆえの痛ましい自殺や一家心中が続いている。みんな安倍・黒田・小池(都知事)らに殺されているのだ。その中で、安倍と結託した一部の大資本・支配階級のみがバブル経済で大もうけしている。国家・政治を私物化し、労働者を死に追い込んでいる。これこそ大恐慌の現実そのものである。こんな安倍・黒田・小池・支配階級を一刻も早く打倒し、監獄にぶち込まなければならない。
バブル経済は必ず崩壊する。その時、パリバ、リーマンを超える世界大恐慌の爆発は不可避である。新自由主義の大崩壊を革命の勝利に転化しよう。
今こそ、階級的労働運動と日韓米を基軸とする国際連帯の力で帝国主義を打倒し、プロレタリア世界革命に勝利しよう。今夏から今秋の闘いで国鉄決戦を中心に階級的労働運動の拠点建設を進め、改憲阻止・安倍政権打倒をかちとろう。