焦点 G20サミットで世界危機激化 米―EU・独の対立があらわ

週刊『前進』02頁(2864号02面04)(2017/07/27)


焦点
 G20サミットで世界危機激化
 米―EU・独の対立があらわ


 7月7〜8日にG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)がドイツのハンブルクで開かれた。このサミットであらわになったことは、戦後世界体制の基軸となってきたアメリカ帝国主義の決定的な没落と、米欧日帝国主義・大国(中ロ)間のむき出しの争闘戦の激化である。世界は大恐慌の一層の深まりの中で、「戦争と革命の時代」に向かっている。
 ドイツのメルケル首相がサミット直後に言った「意見の一致はなかった」の言葉は、直接は温暖化対策のパリ協定についてだが、サミット全体を言い表している。
●ドイツで核兵器保有論が公然と議論される
 とりわけアメリカとEU、なかでもその中心であるドイツ帝国主義との対立が浮上してきた。
 首脳宣言で貿易にかんしては、「保護主義との闘いを続ける」という従来の文言は維持したものの「正当な貿易対抗措置の役割を認める」ことをトランプがねじこんだ。昨年の「あらゆる形態の保護主義に反対」とは正反対の宣言となった。
 焦点が当たったのが、トランプが鉄鋼の輸入に対して関税の引き上げや輸入制限を議論していることだ。問題にしているのは中国の鉄鋼の過剰生産によって鉄鋼の価格が下落し、アメリカ国内の鉄鋼業を圧迫していることだが、中国からの輸入は全体の2・6%で多くない。中国の5倍の量をEUから輸入しており、その半分はドイツからだ。アメリカの動向をEU全体が警戒し、G20サミット前には欧州委員会のユンケル委員長が記者会見で「発動されたら対抗措置を準備している」とけん制した。
 軍事においても、欧州の国家が独自の軍備増強に走っている。NATO(北大西洋条約機構)について、トランプがアメリカの主導している現状から「分担の見直し」を言いだす中で、5月のG7サミットの直後にメルケルは「他国に全面的に頼る時代はほぼ終わった。欧州は自らの力で運命を切り開かなければならない」と発言した。ドイツ国内では戦後タブー視されてきた核兵器保有論が公然と議論され始めている。
●世界戦争情勢の最先頭に朝鮮半島情勢がある
 G20の協調が崩れ、軍事的な対立があらわになる中で、その最先頭に米日帝国主義の朝鮮侵略戦争策動がある。
 北朝鮮がG20直前に行った反動的なICBM(大陸間弾道弾)発射実験を口実に、アメリカは東アジア地域に空母2隻体制をとって、韓国や日本と合同軍事演習を繰り返し臨戦体制を決定的に強めている。絶対に許してはならない。
 その中で、G20はテロ対策にかんする声明では一致した。対IS(イスラム国)を掲げながらも、自国での労働者階級の革命に対する恐怖と危機感のあらわれだ。
●国内矛盾が激化する米帝トランプ
 米帝トランプの危機は激化している。トランプが選挙公約に掲げていた「オバマケアの廃止」は、議会で与党・共和党が過半数をとっているにもかかわらず、党内の反対でできずにいる。これで公約の法人税の大型減税も、1兆㌦のインフラ投資も暗礁に乗り上げている。さらに、米連邦政府の債務残高は3月に上限に達しており、議会予算局の試算では10月に政府資金がゼロになる。
 G20サミットという世界の強盗どもの会議に対して、現地ハンブルクで連日の反対デモが闘われた。「世界を貧困と戦争にたたきこんでいる支配階級打倒」「権力者どもを地獄へ」などのスローガンが掲げられた。
 世界は革命情勢だ。今夏今秋、安倍打倒・改憲阻止へゼネストに向けた労組拠点建設へ奮闘しよう。世界革命がわれわれの回答だ。

このエントリーをはてなブックマークに追加