安倍「働き方改革」粉砕を 「月100時間の残業」容認 過労死を強制する連合

週刊『前進』04頁(2861号02面01)(2017/07/17)


安倍「働き方改革」粉砕を
 「月100時間の残業」容認
 過労死を強制する連合


 安倍政権がたくらむ2018年改憲攻撃は「働き方改革」とひとつのものだ。安倍の「働き方改革」は、①正社員をゼロにして労働者のすべてを非正規職にする、②8時間労働制を解体し、労働時間規制そのものを撤廃する、③解雇規制もなくして解雇は資本の自由にする、④総じて労働組合を解体し、労組を改憲推進の産業報国会に変質させる——ことが目的だ。それを安倍は「非正規という言葉をなくす」とか「同一労働同一賃金」とかのペテン的なスローガンで押し通そうとしている。だが、もはやそんなごまかしは労働者階級には通用しない。国鉄決戦を基軸に階級的労働運動をよみがえらせ、韓国・民主労総に続いて日本でゼネストを切り開き、安倍政権もろとも「働き方改革」を根本から打ち砕こう。

「残業代ゼロ法」にも賛成

 「働き方改革」をめぐり、連合がまたしても大裏切りに走った。神津里季生会長は7月8日、年収1075万円以上の「高度専門職」には労働基準法の労働時間規制を適用しないとした、いわゆる「残業代ゼロ法案」について、年間104日以上の休日確保を企業に義務付けるなどの修正がなされれば、同法案に賛成すると表明した。13日には安倍と神津が会談し、法案の修正で合意した。
 この悪法がいったん成立すれば、「年収1075万円以上」の要件などはいくらでも引き下げられる。労働時間規制そのものをなくしてしまうことが、安倍の狙いだ。連合は、この攻撃に道を開いたのだ。
 連合が「残業代ゼロ法案」容認の姿勢を示した前日の7日、東京地検が電通を略式起訴した。新入社員の高橋まつりさんが過労自殺に追い込まれた事件以来、電通が長年にわたり違法残業を強制し続けていた実態が明るみに出、電通は「ブラック企業」の最たるものとして労働者の怒りの的になった。しかし、東京地検は法人としての電通は起訴したものの、経営トップらの責任は問わないことで、電通事件の幕引きを図った。これに対し、高橋まつりさんの母親は、「誠にやりきれない思い」というコメントを出した。
 遺族として当然の怒りだ。連合は、それを真っ向から踏みにじり、労働組合の名で労働者に過労死を強いようとしているのだ。
 そもそも連合の神津会長は、経団連の榊原定征会長とともに「働き方改革実現会議」に加わって、安倍の攻撃を最先頭で進めてきた。3月に「働き方改革実行計画」が閣議決定された直前には、過労死ラインを超える「月100時間」の残業を容認することで連合と経団連は合意した。
 安倍はこの「労使合意」をたてに「労働基準法70年の中で歴史的な大改革」と叫んで労基法改悪に乗り出している。36協定による残業時間の延長に上限を設けるという名目で、実際に行われることは、労基法を労働時間を規制するものから過労死に至る長時間労働を合法化するものに抜本的に転換させる大攻撃だ。

分社化と転籍が攻撃の柱

 「働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段」「日本経済の潜在成長力の底上げにもつながる、第三の矢・構造改革の柱」と「働き方改革実行計画」は叫ぶ。6月9日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」にも同様の文言が入った。
 今やアベノミクスどころか安倍政権そのものが大崩壊しつつある。その中で、日本帝国主義はただひたすら労働法制の大改悪—労働規制の撤廃に突き進む以外になくなったのだ。
 「働き方改革実行計画」は、「事業者と雇用契約を結ばずに仕事を請け負い、自宅等で働くテレワーク……雇用契約によらない働き方による仕事の機会が増加している」とも唱えている。「偽装請負」どころではない。労働者は一人ひとりばらばらにされ、労働者としてではなく一事業主として資本と請負契約を結べというのだ。労働契約、雇用、労働者という概念そのものがなくされ、労働組合は跡形もなく消し去られる。新自由主義の究極の姿として想定されているのは、こういうものだ。
 これを念頭に、資本は労働者を総非正規職化する攻撃を進めている。その最悪の武器になっているのが、外注化・分社化・転籍だ。業務の外注化・分社化とともに、賃金や労働条件は劇的に切り下げられる。外注先の子会社・分社は、非正規職しか雇わない。かつての正社員も、いずれは非正規職として子会社・分社に転籍させられる。こうした形で、非正規職が労働者の4割に達する現状はつくり出されてきた。
 この攻撃を最先頭で進めているのがJRだ。

今秋臨時国会が大決戦に

 同一の企業に5年以上勤めた有期雇用労働者に無期雇用への転換権を与えるという労働契約法の規定も、労働者を非正規職に縛り付けるために使われている。雇用期間が無期になったとしても、賃金などの労働条件は非正規並みだ。
 無期転換が始まる2018年を前に、資本は一斉に「限定正社員」制度の導入を急いだ。無期転換された労働者をそこに当てはめるためだ。地域や職種が限定された限定正社員の場合、事業所が廃止されたり、従事する業務が外注化されたりすれば、直ちに解雇される。「無期雇用」もまた、名目だけなのだ。
 非正規労働者の85%が無期転換ルールの存在を知らされていないという調査もある。資本はそれにつけ込み、「契約期間が切れた」として平然と雇い止めを強行する。非正規職の一斉解雇は、今、激しく進行しつつある。
 地方自治体の非常勤職員に期末手当を支給できるようにするという名目で5月に強行された地方公務員法の改悪も、「処遇改善」などではまったくない。任用の期間は例外なく「会計年度内」に限定された。非常勤職員は1年ごとに解雇されるのだ。しかも、これまでは労働契約に基づく雇用として労基法や労働組合法を適用されていた特別職の非常勤職員も、「任用」の名で一律にこれらの適用除外に置かれた。これ自体、すさまじい攻撃だ。
 加計・森友疑獄への労働者人民の怒りに追い詰められた安倍は、だからこそ疑獄を居直りつつ、秋の臨時国会に改憲案を出そうとしている。臨時国会は、改憲とともに残業代ゼロ法案や労基法改悪案をめぐっても大決戦になったのだ。
 この攻防は、安倍への労働者の怒りをより深いところから引き出しながら、ゼネスト情勢を切り開くものに必ずなる。連合の大裏切りは、都議選での民進党の「消滅」と言える事態と重なって、連合の大崩壊の始まりだ。国鉄決戦を基軸に階級的労働運動をよみがえらせる時が来た。「働き方改革」を粉砕し、安倍を監獄にたたき込もう。
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