分社化・転籍粉砕を 「エルダー業務拡大提案」で全面外注化に突き進むJR
分社化・転籍粉砕を
「エルダー業務拡大提案」で全面外注化に突き進むJR
JRは鉄道業務の全面的な分社化と労働者への転籍強要に向けて、新たな攻撃に踏み込んでいる。これは、2000年以降、強行されてきた外注化とはまったくレベルが違うものだ。国鉄闘争全国運動の6・11全国集会は、国鉄分割・民営化との30年にわたる闘いの上に、戦争と民営化への大反撃を宣言した。その勝利を土台に、国鉄決戦は分社化・転籍と対決する決戦攻防に突入した。
水平分業の徹底が大前提
6月9日、JR東日本は「エルダー社員の会社における業務範囲拡大と労働条件の一部変更について」という提案を各労組に行った。東労組はこの提案を「65歳定年延長に向けた大きな一歩」と賛美するが、実際はまったく違う。
JR東日本のエルダー社員制度は、60歳でいったん定年退職した労働者を65歳まで再雇用するが、実際の業務はJRではなく外注会社に出向させて行わせるというものだ。今回の提案も、「エルダー社員は、今後もグループ会社等との水平分業を前提に、原則としてグループ会社等への出向を命ずる」ことが大原則だと再確認している。基本は何も変わらないのだ。
JRが言う「水平分業」とは、車掌や運転士を含む鉄道業務のすべてを分社化し、労働者を転籍に追い込むことだ。JRは今回の提案で、この攻撃に本格的に踏み込んできたのだ。
その上で提案は、「①資格や適性検査の合格を要件とする業務、②設備等保全の計画、管理監督業務、③管理業務、④その他、会社が必要と認めた場合」については、エルダー社員を出向させず、JR本体に配置することがあるとする。この4項目の業務の範囲はあいまいだが、背景にあるのは車掌や設備部門での人員不足という事態だ。JRは60~65歳のエルダー社員に車掌などの業務を担わせることで、当面の危機をしのごうとしているのだ。
車掌の要員が足りなくなったのは、駅業務を外注化し、駅員から車掌になるという養成ルートが断たれたからだ。今回の提案は、外注化が生み出した矛盾を、最悪の方法でのりきろうとするものにほかならない。
提案はあたかも、JRの全業務がエルダー社員でも従事できる対象になるかのような書き方をしている。だが、エルダーでJR本体に残ることを希望しても、資本が組合破壊を狙って恣意(しい)的な選別を強行してくることは明らかだ。
東労組カクマルが先兵に
今回の提案には、さらに悪らつな狙いがある。それを示しているのが、東労組カクマルの動きだ。
東労組は、JRの提案と同時に、全職場に「私たちが要求してきたエルダー本体勤務枠拡大/会社提案を引き出す!」という見出しの速報を張り出した。JRとカクマルは、業務の全面分社化に向けて秘密裏の交渉を続けていたのだ。
東労組の速報は、過去の「シニア協定」をわざわざ引っ張り出してきて、「今後の雇用の基本に関する覚書の主旨は変わらない」ことを「会社提案にあたり確認した」と叫んでいる。そして、これを最大の成果として押し出している。
「シニア協定」とは、「労使は業務委託を深度化し着実に推進する」という条項(外注化推進条項)を含む協定を締結した労組の組合員だけが、60歳定年後、JRのグループ会社への再就職あっせんを受けられるというものだった。東労組は2000年にシニア協定を、その前年に「高齢者の雇用に関する覚書」を結んだ。シニア協定締結後、東労組は「再雇用されるのは東労組の組合員だけ」「国鉄改革を中堅として担った意欲ある真面目な高齢者だけが再雇用されることを確認した」と大騒ぎした。まさにそれは、60歳定年後、年金が支給される65歳までの雇用と収入の確保という労働者にとって切実な問題につけ込んで外注化を強行し、同時に他労組の切り崩しを図る卑劣きわまる攻撃だった。
国労はこれに屈してシニア協定を結んだ。以降、鉄道業務の外注化は保線や設備部門、駅などを中心に次々と進んだ。だが、協定の締結を拒んだ動労千葉の闘いは、車両の検査・修繕部門の本格的な外注化を阻み続けてきた。
シニア制度自体はその後、協定の有無にかかわらず全労働者を定年後再雇用の対象とするエルダー制度に転換され、廃止された。だから、東労組カクマルが言う「シニア協定」やその「覚書」も、とっくにほごにされていたものだ。
これをことさら持ち出すことで、東労組カクマルは業務の全面的な分社化の手先になることを資本に誓った。JRが東労組カクマルの切り捨てに動く中で、これまで以上の大裏切りを演じる以外にカクマルの生き残る道はなくなったのだ。
「受託の拡大」叫ぶCTS
この東労組カクマルの大裏切りをてこにして、JR資本と関連会社は業務の全面的な分社化に踏み込みつつある。
JR東日本の子会社で車両の検査・修繕や清掃業務を請け負うCTS(千葉鉄道サービス)が社員に配布した資料には、「グループ会社として業務受託を拡大していく」と書かれている。しかも、現在はまだ外注化されずJR本体で行っている機能保全や機動班、技術管理について、JRとの間で人事交流を行い、「技術力・ノウハウをCTSに内在化させる」としている。CTSの資料はまた、「新たな再雇用制度を構築する」とJRのエルダー社員制度について言及し、2023年以降はCTSで採用された社員だけで業務を運営することになると打ち出している。
これらはいずれも、JRからまだ提案もされていないことだ。それをCTSが既定の方針のように文書化しているのは、JRとグループ会社全体の間で、業務の全面的な分社化がすでに合意されているからだと見るほかにない。
動労千葉は6月25日の定期委員会で、今回の提案が分社化・転籍強要に向けての突破口となることを見据え、組織の総力を挙げて反撃する方針を確立した。
今、JRが仕掛けている攻撃は、JRだけの問題ではない。安倍政権は、JRをモデルケースに分社化・転籍・総非正規職化の攻撃を全社会的に押し貫こうとしているのだ。それが安倍の言う「働き方改革」だ。
都議選決戦の地平を固め、国鉄決戦を軸に総反撃に打って出よう。
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分割・民営化の手先となったカクマルの優遇と外注化推進を叫ぶ99年の東労組とJRの「覚書」
国鉄改革期を中堅として真面目に支えてきた高齢者の功績は非常に大きい。したがって、これらの意欲ある真面目な高齢者について、雇用確保を進めていかなければならないことで、労使の認識は一致した。
60歳以上の雇用の場となることを念頭に、「グループ会社等への鉄道業務等の委託」を着実に推進する。