焦点 トランプ「ロシアゲート」の本質 革命におびえ支配階級が分裂
焦点
トランプ「ロシアゲート」の本質
革命におびえ支配階級が分裂
●ロシアとの軍事的激突をあおる
米大統領トランプの「ロシア疑惑」が大問題になっている。トランプ政権は、ゴールドマン・サックスや軍出身者で構成された労組破壊と戦争の政権だ。だが、金融資本、軍産複合体そのものの機関であるFBI(連邦捜査局)、CIA(中央情報局)、マスコミが、このトランプを攻撃している。アメリカ帝国主義の支配階級内に、ロシアとの軍事関係を巡って、のっぴきならない対立関係が生まれている。FBI、CIAなどの権力機関は、ウクライナ、シリアを巡ってロシアとの軍事的緊張を高めてきたオバマとクリントンの路線を変更することは許さないと、トランプに突きつけたのだ。
●権力機関のクーデター策動
5月9日、米大統領のトランプは「ロシア疑惑を捜査している」というコミーFBI長官を罷免した。これについてニューヨークタイムズ、ワシントンポストを先頭に全米の主要メディアが連日、「ウォーターゲート事件と同じ」とキャンペーンを張った。
疑惑の調査のために5月17日、特別検察官が指名された。ローゼンスタイン司法副長官が抜き打ちで特別検察官に指名したモラー元FBI長官は、次々に〝おとり捜査〟(例えば、無関係な人に爆弾を渡しテロリストに仕立てる)を行うなど、強引なことで有名な人物だ。アメリカ支配階級の分裂と抗争は、重大局面に突入した。
FBI、CIAという権力機関そのものが、昨年の大統領選挙の過程から公然と前面に出て、トランプを攻撃してきた。内容は「ロシアの諜報機関が大統領選挙へ介入」「ロシアがクリントン候補と民主党へのハッキング」「トランプ陣営のロシアとの共犯関係」というものだ。ロシアの「敵対行為」を激しく非難し、それとトランプが共犯だというのだ。単なる法律違反の疑惑一般ではない。政策の対立の次元も超え、通敵行為として扱っている。
マスコミは捜査・諜報機関の発言をそのまま大々的に報道している。全マスコミが申し合わせたような一斉キャンペーンは、アメリカ帝国主義が多くの国に対して仕掛けてきたクーデターや、米軍の直接介入の時と酷似している。
●革命への決起を開始した労働者階級
トランプ政権の政策で問題にすべきことは数限りない。差別・排外主義の扇動、保護主義、医療保険の大改悪、学校バウチャー制度推進(公立学校破壊、極右私立学校化)、フードスタンプ(食料券)の改廃攻撃などだ。しかし、マスコミは「ロシア疑惑」だけを焦点に、トランプ批判に熱中している。
しかも4月7日、シリアに巡航ミサイル攻撃をしたとたん、全マスコミがトランプを支持した。
この背後にあるのは、労働者階級が民主党とAFL―CIO(米労働総同盟・産別会議)から離反し、既成の支配を崩壊させているという事態だ。クリントンが敗北し、トランプ政権を生み出したのも、これが原因だった。
大恐慌のいっそうの激化は不可避だ。アメリカ帝国主義の世界支配は崩壊している。韓国・民主労総を先頭に、世界とアメリカの労働者の革命への決起が始まっている。
だから、中東での米軍の戦略的敗北にもかかわらず、いやだからこそアメリカ帝国主義は朝鮮半島・東アジアでの大戦争=核戦争へ突進している。この支配階級の絶望と矛盾がクーデター的な激突を生んだのだ。
すべての矛盾を「ロシア疑惑」に転化することは不可能だ。労働者が国際的に団結すれば、必ずトランプと帝国主義を打倒できる。