大量被曝強いる一括法制定 独自の核武装国家化を狙い放射線審議会の権限を強化

週刊『前進』04頁(2837号03面03)(2017/04/17)


大量被曝強いる一括法制定
 独自の核武装国家化を狙い放射線審議会の権限を強化


 4月7日、国会で放射線審議会の権限強化を含む大量被曝を強制する一括法案が可決・成立した。「自主避難者」への住宅提供打ち切りと帰還強制、高浜・伊方原発再稼働容認の判決に加えての今回の大量被曝強制の合法化は、3・11を絶対に繰り返すなという福島の怒りに全面敵対する安倍政権の暴挙だ。徹底弾劾する。

独自の調査・提言機関に

 安倍政権は朝鮮核戦争情勢の中で、独自の核武装国家化の衝動をかつてなく募らせている。その実現を目指して、核兵器の材料のプルトニウムを大量生産する基盤である原発と核燃サイクルを、何がなんでも維持しようとしている。
 今回成立した一括法はそのための主要な環をなす。同法の名称は「原子力利用における安全対策の強化のための核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の一部を改正する法律案」。原子炉等規制法、放射線障害防止法、技術的基準法という3本の法律を一括して改悪したものだ。
 3本の法改悪の柱は、①原発の検査制度の見直し、②防護措置の義務付け、③放射線審議会の機能強化だ。
 ①は、原発の検査について電力資本の自主的検査の比重を大幅に高めるとしている。新検査制度導入による検査の簡略化は、事故のリスクをますます増大させていく。
 ②は、「テロ対策の充実・強化」のためと称して、原発内での監視カメラの設置、警備員の配置などを義務付ける。
 ③が最も重大な改悪だ。中身は、関係省庁に対する放射線審議会の位置を、これまでのような諮問への単なる答申機関から、独自に調査・提言できる機関へ変えるものとなっている。それをとおして放射線被曝線量限度の止めどない緩和が狙われている。

限度量の制限なくす大転換

 現在の放射線審議会は原子力規制委員会のもとにある。首相が規制委委員長を任命するとともに、規制委委員長が審議会の委員を任命する仕組みになっている。このように、規制委は独立機関でもなんでもない。
 会長の神谷研二は、放射線審議会は「国民を放射線の障害から守るため」のものだとうそぶく。だが審議会は、3・11福島第一原発事故に際して緊急作業時の被曝限度を100㍉シーベルトから250㍉シーベルトに引き上げ、福島県住民の年間被曝限度を1㍉シーベルトから20㍉シーベルトに緩和させるなどを妥当とし、労働者人民に殺人的被曝を強制したのだ。
 2011年3月11日に発令された原子力緊急事態宣言は、いまだ解除されていない。そして溶融燃料(デブリ)の未回収が続く。さらに子どもの甲状腺がんをはじめ、被曝を起因とするさまざまな病気が多発している。
 ここからの結論は、全原発の即時廃炉以外ない。しかし、日帝支配階級はますます原発にしがみつき、被曝限度なるものを都合のいいように操作し、労働者人民に大量被曝を強制している。この凶器の役割を果たすのが御用学者の犯罪組織・放射線審議会である。
 日帝は3・11の直前、放射線審議会基本部会でICRP(国際放射線防護委員会)2007年勧告の取り入れを検討していた。
 同勧告は放射線被曝基準について、〝国家・資本家の社会的・経済的利益を最大にするためには労働者人民の生命と健康を破壊してもかまわない〟という考え方(ALARAの原則)に貫かれている。この原則のもとで核事故を想定した被曝の状況を、①計画被曝状況、②緊急時被曝状況、③現存被曝状況の三つに分けて、各段階に応じた被曝線量管理値を定めるという被曝強制新システムがひねり出された。
 ①は原発などの核施設から通常放出される放射線による被曝であり、その年間被曝限度は現場労働者は20㍉シーベルト、一般人は1㍉シーベルトとされている。
 ②は核事故発生の緊急の場合であり、被曝量管理目安を、緊急作業の労働者は500㍉シーベルトまたは1千㍉シーベルト、一般人は20㍉〜100㍉シーベルトとしている。なお勧告には「救命者のリスクより利益があれば」、志願者には被曝限度の制限なしで緊急時作業を強制できるという項目もある。
 ③は、放射能の大量放出は弱まったが放射線のレベルがまだ高い危険な状況を指す。勧告は1㍉〜20㍉シーベルトを参考レベルとしている。
 核推進で利益を得る支配階級にとって、労働者人民の放射線防護は妨げでしかない。被曝限度を上げることで労働者を現場につなぎとめ、また避難対象者を減らそうというのだ。100㍉シーベルトどころか無制限の被曝強制値が「放射線防護」の看板のもと平然と語られている。原発・核燃サイクル事故だけでなく、核戦争作戦での被曝対応も垣間見える。

原発労働者とともに闘おう

 この日帝の大量被曝強制は、労働者人民とりわけ核関連現場の労働者の反乱がないことを前提にしている。だが、原発・核燃サイクルの稼働と被曝強制は、労働者が団結して闘えば根底から崩れ去る。現在、日帝と資本の被曝隠蔽(いんぺい)・強制の中で、被曝労働を拒否する労働者の決起が、動労水戸を先駆として拡大している。今回の大量被曝強制体系への大転換攻撃は原発労働者をはじめ被曝労働を強制される労働者の怒りの炎に油を注ぐ。解雇・長時間労働・低賃金の労働改悪に対する全労働者階級の怒りと結合し、ともに労働解放へ突き進む中に勝利の道がある。
 パククネを打倒した韓国のロウソク革命・民主労総ゼネストの闘い、それと結びついた日本の階級的労働運動・国際連帯の前進と一体で、新大量被曝強制体系を粉砕しよう! 日本版ICRP・放射線審議会を解体しよう! 原発再稼働と核武装の安倍を倒そう!
(河東耕二)
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