焦点 国家政策の破産示す東芝危機 安倍「成長戦略」が大崩壊
焦点
国家政策の破産示す東芝危機
安倍「成長戦略」が大崩壊
●債務超過で破綻の危機
日帝の代表的な製造業資本であった東芝が、破綻の危機に直面している。原発子会社である米ウェスチングハウス(WH)による米国での原発建設で損失を膨らませ、7125億円の原発関連損失を計上し、17年3月期に1兆100億円もの最終赤字に陥る見通しとなった。リーマン・ショック後の日立製作所(7873億円)を上回り、国内製造業として過去最大の赤字だ。3月末時点で6200億円もの債務超過で、上場1部から2部への転落も確実となった。
06年に54億㌦を投じて買収したWHは3月29日、米連邦破産法11条の適用を申請し経営破綻した。WH買収で世界の3大原発メーカーの一角となった東芝は、海外原発事業から撤退せざるを得なくなった。
さらに、最重要部門であった半導体事業を分社化して株式を売却する。当初は一部売却して半導体事業の主導権は握り続ける方針だったが、膨れ上がる債務超過を解消するために、過半の売却へ追い込まれている。
東芝は、15年に発覚した不正会計・粉飾決算問題での泥沼的状況からの脱却をかけ、16年冒頭に家電や医療機器部門を売却して手元資金を確保し、原発と半導体を2本柱にして再出発することを宣言したばかりだったが、その原発が危機の震源となり、半導体は投げ捨てることとなった。資本としての崩壊だ。
●膨らむ原発の巨額損失
東芝はWHの破産法適用申請で連結決算から切り離し、さらなる損失拡大リスクはなくなったとしているが、問題は何ひとつ終わっていない。
WHが巨額損失を出したのは、08年に米国内での30年ぶりの新設計画として受注し、13年に建設を開始した原発4基であった。しかし、3・11福島第一原発事故で「安全神話」の虚構が崩れ、完成予定はどんどん後ずれして追加費用が膨らんだ。進捗(しんちょく)率はいまだ30%程度で、WHは破産法のもとで再建しながら原発建設を続けるとしているが、再建支援の体制も定まらず、さらなる工期の遅れは不可避である。東芝が計上した損失は20年までに稼働することを前提にしており、それ以上の延期は数千億円規模の追加損失を発生させる。そうなれば債務超過解消の展望は完全になくなり、上場廃止どころか経営破綻に陥る絶望的危機だ。
●日帝電機資本が半導体で敗北
東芝危機は大恐慌下における国際競争が激化する中での争闘戦的敗北であり、日本の電機資本の普遍的姿だ。また、日帝としての国家的破産でもある。半導体事業の売却はその典型だ。
半導体はメモリー(記憶装置)やCPU(中央処理装置)などを通してパソコンやスマホから家電全般にも広がり、あらゆる産業の基礎になっている。しかも、機密情報のデータ管理や軍事用の探知レーダーなど軍事技術にも直結する。だから、半導体メモリー事業売却をめぐっても、技術流出を阻止するために日本政府は必死に介入し、政府系の産業革新機構を軸にした「日本連合」による買収の模索や、外国為替法を使った中国や台湾の企業への売却阻止の方針まで持ち出している。
しかし、80年代には半導体製品で世界の5割超を占めた日本企業は衰退の一途をたどり、次々と半導体事業から撤退した。その中で東芝は、フラッシュメモリーの世界シェアでサムスン電子に次ぐ2位であり、半導体メーカーの世界トップ10に日本企業で唯一入っていた。その東芝が国策の要でもあった核心的部門を投げ捨てることは、争闘戦に敗北し没落・衰退する日帝電機資本の象徴的な姿だ。
16年には大手電機資本の一角であったシャープが経営危機を深め、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収された。家電や半導体など弱電部門で軒並み敗北した日本企業は、日立製作所をはじめ鉄道・原発の海外輸出による延命に走っている。それは日帝・安倍政権のインフラ輸出戦略を背景にしたものだ。そもそも東芝によるWH買収も、政府・経済産業省が全面的に後押しし国家政策として進められた。東芝の危機は、日帝の国家政策自体の破産を示している。
製造業の衰退こそ日本経済の破滅的危機の根幹だ。だからどんなに異常な金融緩和策を展開してもバブル化とその崩壊を引き起こすだけで、「経済の好循環」など絶対に生み出せない。日帝資本には、一方での労働者階級への極限的搾取、他方での海外展開による市場・勢力圏の力ずくでの確保以外にない。この資本の絶望的延命のための政策が安倍の「働き方改革」と改憲攻撃だ。安倍政権を打倒し、破産した資本主義体制を労働者の力で根底から変革しよう。