福島で被曝・医療シンポ 医師ら200人参加し活発な討論
週刊『前進』04頁(2831号03面03)(2017/03/27)
福島で被曝・医療シンポ
医師ら200人参加し活発な討論
(写真 シンポジストと参加者が活発な質疑応答を行い、福島の放射能汚染への危機感と怒りを共有し、新たな行動の必要性を語り合った【3月12日 福島市】)
3・11反原発福島行動17の大高揚を引き継ぎ、「第2回 被曝・医療 福島シンポジウム―放射線による健康被害の実状と解明―」が3月12日、ふくしま共同診療所などで構成する実行委員会の主催で行われた。会場は、地元の福島市や福島県内居住の人、東北・首都圏から駆けつけた人など200人を超える参加者で埋め尽くされた。
ふくしま共同診療所医師で本町クリニックの杉井吉彦院長と東北大学医学部の青野弘明さんの司会で福島の実状を解明するシンポジウムが始まった。まず4人のシンポジストが講演。最初に広島大学原爆放射線医科学研究所の大瀧慈広島大学名誉教授が壇上に立った。大瀧さんは「広島、長崎の被爆者は福島と共通する問題が大きいことがはっきりした」と切り出し、「当時の研究データの屋内被爆者と屋外被爆者の染色体異常の割合を比較すると、同じ線量でも屋内のほうが高い。これはおかしい」として、「当時、建物による遮蔽(しゃへい)効果を過大に見積もった結果だ。実際には屋内でも思ったほど効果はなく、衝撃波と爆風による粉塵(ふんじん)などを吸ったための内部被曝の影響の方が大きいことを示している」と解説した。続けて福島の高濃度の土壌汚染マップを示し、「風が吹いている時は注意を」と土ぼこりなどによる内部被曝の危険を強調した。
韓国の医師が反原発の闘い報告
韓国反核医師の会運営委員の金益重(キムイクチュン)東国大学医学部教授は韓国の原発周辺でのがん発症に関する調査について語った。政府の疫学調査は原発とがん発症は関係ないとの結論だったが闘って原資料を入手して再分析し、「少なくとも原発周辺では女性の甲状腺がんは、それ以外の地域より2・5倍多く発生していることがわかった」と報告。原発周辺住民の活発な闘いを伝え、「私たちはこの闘いで必ず勝ちます」と力強く締めくくった。子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク代表の山田真医師は、数値を出して福島の放射能汚染の深刻さを語り、「一般の人は『福島は安全』と聞かされ、『避難者は勝手に逃げている人たち』と思わされている。避難者の子どもたちへのいじめはそれが原因だ」と鋭く告発。三里塚野戦病院や水俣病などでの闘いの経験を述べ「デモや署名だけでなく日常の闘いが重要」と提起。「政府は放射線審議会の機能を強化し、基準を緩めようと企んでいる。『放射線に安全といえる数値はない』と言い続けよう」と呼びかけた。
ふくしま共同診療所の布施幸彦院長は福島での小児甲状腺がん発生の推移を解説した上で、今後大幅に増加する危険があると述べ、「甲状腺検査の縮小・打ち切りは反対」と声を高めた。さらに「『自主避難者』は本当は強制避難させられているのだ」と住宅からの追い出しの動きを厳しく弾劾。「署名だけでなく直接行動が必要だ。福島で闘いを起こそう。さらに各都道府県で避難者とつながり、守る運動を起こそう。県知事・市町村長に申し入れを行い、とくに自治体職員や教育労働者の労働組合に働きかけよう」と熱く訴えた。
内容豊かな四つの講演の後、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部・支部長代行のアレックス・ローゼンさんのビデオレターが上映された。甲状腺検査の縮小を狙う福島県立医大を弾劾し、ふくしま共同診療所を「暗い状況の中の光」として紹介していたのが印象的であった。
動労水戸からストで闘う決意
会場からの発言で福島市在住の60代の男性が「12月1日に甲状腺がんの手術を受けました」と、不安が去来する中での検査の過程を語り、「周りの人に検査を勧めてほしい」と呼びかけた。動労水戸副委員長の高野安雄さんは「私の組合は被曝労働拒否を貫き、常磐線の全線開通反対の運動を行っています」と紹介。「4月1日に小高―浪江間の運転再開が発表されている。ストライキで闘う」と誇り高く決意を語った。質疑・応答では質問や意見表明が相次ぎ、特に「1㍉シーベルトは安全」という政府や御用学者のうそを批判する多くの意見が述べられ、内容豊かな討論となった。
まとめと閉会あいさつを杉井医師が行い、「福島の状況は過酷だ。何とか変える努力をしましょう」と心から訴え、福島を先頭に新たな闘いに立ち上がることを誓ってシンポジウムを終えた。
(本紙・北沢隆広)