焦点 トランプが世界経済の崩壊促進 アベノミクスの破産深まる
焦点
トランプが世界経済の崩壊促進
アベノミクスの破産深まる
米株式市場の異様な高騰が進んでいる。ダウ平均株価は2月に12日間連続で史上最高値を更新した。これは87年1月以来の事態であり、この年は10月に「ブラックマンデー」=株価大暴落へと行き着いた。今、その再来が問題になっている。
この株高は、トランプによる法人税減税や「10年で1兆㌦」のインフラ投資、金融規制緩和などの政策への期待が先行したもので、バブル相場そのものだ。しかも金融株に偏って急騰しており、特に出身者が政権中枢に入ったゴールドマン・サックスの株価は、トランプ当選以来40%近くも上昇している。
この株高を生み出しているものが、米経済―世界経済の崩壊を準備している。
●財政・金融の制限を撤廃
一つは、トランプが財政の歯止めを取り払おうとしていることだ。減税、インフラ投資に加え、国防費も現在より1割(約600億㌦)増額する。しかし財政的基盤などない。債務残高はすでに20兆㌦を超え、3月15日には再び債務上限の期限を迎える。財政悪化は一線を越え、国債暴落へと直結する。
二つに、金融規制法(ドッド・フランク法)の見直しだ。これは大恐慌の拡大と激化をなんとか抑えるために、リーマン・ショックの原因となったサブプライムローンなど投機的取引を抑止するものとして制定された。しかしトランプは、金融資本の自由な取引と利益のために、再度のバブル経済とその崩壊への道を開いたのだ。
●保護主義で戦後体制を破壊
三つに、保護主義政策である。それは一方での関税政策による保護貿易、他方での国内への製造拠点の回帰だ。トランプはTPP(環太平洋経済連携協定)交渉離脱、NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉に続き、WTO(世界貿易機構)ルールよりも国内法による制裁関税を優先することなどを明記した通商政策を発表した。
米製造業資本の衰退は深刻であり、低賃金労働力を求めて一方で中国を「世界の工場」にし、他方でNAFTAのもとでメキシコに製造拠点を建設することによってしか延命できなかった。それが新自由主義とグローバル化だ。
トランプが攻撃の矛先にしているのは、まさに米帝国主義と戦後世界体制の存立条件・延命形態だったものだ。階級支配の崩壊と労働者階級の怒りに規定されて登場したトランプは、支配体制の基盤を暴力的に破壊しなければ存在できない。世界大恐慌の本格的激化、争闘戦と戦争の爆発はいずれも避けられない。
●米帝の争闘戦が日帝を直撃
トランプの登場は日帝経済を直撃している。特にその争闘戦は、自動車をめぐる日系企業への攻撃、通貨安政策への批判として激化している。これはアベノミクスをより一層の破産へとたたき込む。
特にこの間金融緩和策の破綻が深刻になり、長期金利の急上昇―国債暴落が切迫している。
2月3日の国債市場では、日銀が午前中に買い入れを実施したにもかかわらず、長期金利はマイナス金利導入以来の水準である0・150%まで急上昇した。日銀は午後の取引開始直後に「指し値オペ」を初めて本格的に実施し、なんとか上昇を抑えた。指し値オペとは通常の入札方式ではなく、日銀が金利を指定して無制限に買い入れるという非常手段だ。異次元緩和以来の国債大量買入れ政策は完全に行き詰まってしまったのだ。
1月末の日銀の国債保有残高は358兆円で、発行残高全体に占める割合は4割を超えた。にもかかわらず、消費者物価は一向に上昇せず、個人消費も停滞し、昨年の家計消費支出は1・7%減に沈んだ。そして日銀・黒田総裁は任期中(18年)の物価2%上昇目標の達成を断念した。さらに、アベノミクスのブレーンであった内閣官房参与・浜田宏一が、金融緩和策だけでは物価上昇はできず、財政政策が必要だとして、ついに緩和策の破産を吐露したのだ。
●財政拡大で国債暴落は不可避
浜田は「債務問題は財政拡大によるインフレで解決される」などと主張し、労働者人民の犠牲によってのりきろうとしている。安倍もまた、財政再建を投げ捨てて財政拡大への道に転換しようとしている。しかし16年末の国の借金残高は1066兆円に上り、資本主義の枠内での解決は絶対に不可能だ。アベノミクスの大崩壊は国債暴落・財政破綻となって爆発していく。
安倍政権がやろうとしているのは戦時財政への転換であり、戦争と改憲である。だからこそ、トランプの争闘戦的登場に対して、日米同盟路線の強固な確認と同時に、核戦争同盟への転換を強力に押し出したのだ。
こんな社会に未来はない。大恐慌・戦争に突き進む資本主義体制を、労働者階級の力で打倒しよう。