知る・考える 用語解説 保護主義―世界経済の分裂と戦争を促進
週刊『前進』02頁(2824号02面06)(2017/03/02)
知る・考える 用語解説
保護主義―世界経済の分裂と戦争を促進
資本主義の危機の中で、国家が自国の資本の利益と延命を目的に貿易において、輸入品への高関税、輸入数量制限、輸出促進の補助金などの排他的政策で介入することを保護貿易と言い、それを進める主張を保護主義と言う。
1929年に始まる世界大恐慌で、各国は関税を引き上げ、ブロック経済に突き進み、第2次世界大戦にいたる。その教訓から戦後、1948年にGATT(関税と貿易に関する一般協定)が創設され、その後身として95年にWTO(世界貿易機関)が発足し多国間貿易交渉を進め、保護主義は克服すべき課題とされた。しかし、その「自由貿易」の実態は、帝国主義、とりわけ基軸国アメリカの生産力の圧倒的優位のもとで途上国の産業を破壊し、全世界を収奪するものであった。大恐慌下でWTOが実質上破綻した今日、乱立するFTA(自由貿易協定)は、自由貿易を建前としつつ、巨大資本による搾取の「自由」を要求し、各国の産業保護政策や労働者の権利保障の撤廃を強要する階級戦争となった。
米トランプ政権が保護主義を露骨に打ち出し、自国産業の保護を叫んでいるのは、米帝の衰退・没落の表現であり、戦争的手段を使っても自国の利益を追求するという帝国主義の本性の現れだ。
マルクスは1848年に「自由貿易か保護主義かの論争は、資本主義制度の枠内の問題。われわれは資本主義そのものの廃止を要求する」と述べたが、この言葉は今日そのまま生きている。