反原発3・11郡山集会へ 福島からの訴え④ 検査縮小・打ち切り阻止を ふくしま共同診療所院長 布施幸彦さん

週刊『前進』02頁(2824号02面03)(2017/03/02)


反原発3・11郡山集会へ 福島からの訴え④
 検査縮小・打ち切り阻止を
 ふくしま共同診療所院長 布施幸彦さん


 1月18日、韓国の国会議員会館で「原子力発電所と健康、日本 福島と韓国の原発周辺」と題する韓日国際シンポジウムが行われました。日本からは私と、ふくしま共同診療所の患者で甲状腺がんの手術を終えたばかりの大越良二さんが講演しました。150人が参加し、聯合ニュースを始め多くのニュースで取り上げられました。
 私は、福島における小児甲状腺がんの多発と放射能による健康被害について話しました。大越さんは、「韓国電源公社と闘う仲間たちへ」と題して、自身が甲状腺乳頭がんとなり、手術して再発の不安を抱えながら、国と東京電力によって引き起こされた放射能被害を告発していることを報告し、甲状腺がん裁判を闘っている600人を超える韓国の患者さんたちにエールを送りました。
 韓国ではパククネ政権打倒の熱気が感じられました。日本でも原発を止めるには、韓国のように闘って安倍政権を倒すしかないと思います。

検査を拡充せよ

 福島第一原発2号機の原子炉格納容器内の空間放射線量が毎時650シーベルトと報道されました。人間が瞬時に死亡するほどの線量です。放射性デブリをすべて取り除けるのか、本当にそんな技術があるのか、まったく分かりません。
 放射性物質の取り出し作業が始まれば再臨界(再爆発)の可能性が高くなります。今まで再臨界しなかったのは、原発労働者の献身的な働きがあったからです。これ以上、彼らに無用な被曝をさせてはなりません。希望の牧場の吉沢正巳さんは「チェルノブイリのように石棺にするしかない」と述べていますが、その言葉が徐々に現実味を帯びてきています。
 小児甲状腺がんないし疑いが2月20日の「県民健康調査」検討委員会発表で1人増えて185人(146人手術)となり、本格検査で見つかった69人(男31人・女38人)中63人が、先行検査では「問題なし」のA判定だったことが分かりました。あいかわらず国も県も「放射線の影響ではない」と言っています。
 福島県は「受診のリスク、受診しない権利」を言い出し、検査縮小へかじをきりました。福島県小児科医会が「甲状腺検査のメリット・デメリット両面について受診者(保護者)へ十分説明すること、同意書を取得すること」を県に要望したことを受け、同意書の取得が昨年4月から行われています。「同意しません」にチェックすると県立医大から受診案内は送られてきません。こうした結果、18歳以上の受診者は3割にも落ち込んでいます。おそらく見過ごされているがん患者が増え続けていると思われます。本当に許せません。
 昨年9月に日本財団が主催した「福島国際専門家会議」が、12月には「健康調査と甲状腺検査は自主参加で」と県知事に提言しました。それを受け、環境省の主導のもとで「第三者機関」設置が狙われています。国際御用学者に「被曝の影響ではない」と言わせて検査を打ち切ろうとしていることは明らかです。
 今年2月18日には日本共産党系の民医連・わたり病院の斎藤紀医師が福島市医師会主催のシンポジウムで、「県民健康調査で発見されている甲状腺がんは症状が出ていないのにエコー検査で見つけているもの。福島県で子どもの甲状腺がんの増加を指摘することはできない」と断言し、検査の受診にあたっては「子どもと保護者の自己決定権を尊重」と言って県に歩調を合わせました。
 こうした検査縮小・打ち切りへの動きを許さず、近隣県や大人も含めた検査の拡充こそ実現されなくてはなりません。

労組の署名多数

 昨年11月から福島県知事あての「被曝と帰還の強制反対署名」を開始しました。全国から続々と署名が集まり、すでに1万5千筆を超えました。労働組合が何百という署名を集めて送ってくることもめずらしくありません。福島の教組からも多数署名が寄せられています。子どもたちの健康を無視し、子どもたちを人質にとって帰還を強制することへの当然の怒りだと思います。韓国のように日本でも労働組合が立ち上がり始めています。
 時代が変わろうとしています。1月12日と2月16日には署名提出と申し入れを行いました。その場で県の担当職員に怒りをぶつけ、真剣に考えてもらいたいと訴えています。動労水戸の被曝労働拒否の闘いが県内に波及していくことに期待したいと思います。
 今年の3・11は昨年までとまったく違います。原発事故から6年たって放射能による健康被害が目に見える形で噴出しています。3・11は怒りを解き放つ場です。県内の多くの怒りの声を上げる場にしたいと思います。

日韓国際連帯を

 翌3月12日には2回目の医療シンポジウムを行います。1月18日の韓日国際シンポジウムを受け、今回は日韓国際シンポジウムとして行います。講演者はキムイクチュン氏(韓国反核医師の会・東国大教授)、大瀧慈氏(広島大学原爆放射線医学研究所)、山田真氏(子供たちを放射能から守る全国ネットワーク代表)と私です。放射線による健康被害の実状を明らかにし、今後の闘いの方向性を示したいと考えています。多くの人びとの参加を希望します。
 そして2017年に韓国のような闘いを日本で実現しましょう。
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