反原発3・11郡山集会へ 福島からの訴え③
反原発3・11郡山集会へ
福島からの訴え③
福島県は今年3月末での「自主避難者」への住宅補助の打ち切りを表明し、放射能汚染地域への帰還を強制しようとしています。これに対し「被曝と帰還の強制反対署名」運動が福島―全国で大きく広がっています。この運動の先頭に立つ福島診療所建設委員会代表の佐藤幸子さんと、NAZENフクシマ代表の椎名千恵子さんからの訴えを掲載します。(編集局)
避難指示解除を許さない
福島診療所建設委員会代表/川俣町 佐藤幸子さん
「ここまできても、まだ否定するのか?」----2016年9月14日に開催された福島県「県民健康調査」検討委員会の報告を聞いて真っ先に思ったことでした。この日の発表で、甲状腺がんの子どもたちが175人(疑いも含む。12月27日発表では184人)になっていたにもかかわらず放射能との因果関係を「考えにくい」と言い切る検討委員会の結論に、何がなんでも「福島原発事故による健康被害はないことにする」と当初から決まっていたのではないかと疑ってしまいました。
検討委員会は甲状腺がんの子どもたちの人数を発表するたびに因果関係を否定してきましたが、予想をはるかに上回る早さでがんが進行していることに気がついた福島県は、「チェルノブイリでは4〜5年後から多発」と言っていた、原発事故からまさに5年後の昨年、福島県内の小児科医会から出された「検査の縮小」の意見書を受け入れる動きに出ました。昨年9月に日本財団が主催した「福島国際専門家会議」の提言にも「縮小」が盛り込まれ、政府と福島県知事に提出されました。
この会議の第1回は、11年10月に福島医大で開催されました。私たちは「これは福島圧殺のための会議だ」と考え、のちに福島診療所建設委員会を一緒に立ち上げたメンバーを含む多くの方と会場前で抗議行動をしましたが、まさに5年後その通りになったのです。
「調査すらしない」という最悪の結論を出そうとする福島県に対して私たちは反対の声を上げ、県知事への申し入れを行って「被曝と帰還の強制反対署名」の運動を始めました。この署名は全国ですでに1万4千筆を超え、1万筆が県に提出されています。みなさんのご協力に感謝するとともに、怒りが渦巻いていると実感しています。
「違法者」は政府
福島県は昨年、「自主避難者(強制避難区域以外のため、自力で避難した人)」への住宅支援を今年の3月末で打ち切る方針を打ち出しました。私が米沢市で借りている雇用促進住宅のメンバーは「個人的には交渉をしない。団体交渉する」との意向を福島県に出していますが、それに対して、4月以降は「不法入居」となるとの文書が送られてきています。
「違法者」は私たち避難者ではなく、年間20㍉シーベルト基準を強制している政府です。しかし、強制避難区域のうち、帰還困難区域を除いたすべてを次々と避難解除しようとしています。絶対に許せません。すでに避難先で家を新築した人などさまざまな立場の人たちにとっては、本当は帰りたいけれど、悲しいことに帰れない荒れ果てた故郷なのです。
帰還を希望する人たちの多くは高齢者で、医療機関も不足しています。私のヘルパー派遣事業所でもヘルパー確保が難しい中で避難者への派遣をしてきましたが、帰還した場合は距離的に困難です。強制避難区域の近隣の事業所では「避難解除された地域に派遣されるのはいやだからヘルパーを辞めた」という若い労働者もいるそうです。
即刻廃炉の声を
原発は政府の思惑で導入されました。その利権を享受した電力会社とその関係者は、すべて今回の加害者です。原発も事故も止めることができなかった大人たちもです。それらすべての立場の人たちが、子どもたちに責任を取らなければなりません。私はそのために6年間活動してきました。
全国どこに住んでも、原発事故の当事者になり得る可能性がある日本です。原発というパンドラの箱を開けてしまった人類は、パンドラの箱にさらに頑丈なふたを作る以外に解決することなどできないのです。
3・11反原発福島行動は、福島原発事故の悲劇を繰り返さないために、犠牲になられた多くの方のご冥福を祈るとともに、どんなに苦しくとも原発即刻廃炉の声を上げる日として開催します。権力の言いなりにはならないことを、全世界に向けて叫び続けましょう。
署名運動が怒り引き出す
NAZENフクシマ代表/福島市 椎名千恵子さん
私たちの闘いは、まさに未来に向かっています。韓国では「パククネ政権と財閥支配を倒して、労働者が生きられる世の中をつくろう」と、今も100万人規模の労働者の闘いが継続されています。アメリカでは500万人の反トランプデモが起こり、闘いが広がっています。「サンキュー! 私は抵抗者として生まれ変わった」のプラカードは、3・11後の日本の闘いの転換を思い起こさせてくれました。
革命情勢のもと崩壊する資本主義の「墓掘り人」が無数に生まれています。日本もまったく同じです。3・11反原発福島行動17で「奪われてたまるか! 避難・いのち・子どもの未来」のスローガンに加え「安倍を倒してこんな世の中ひっくり返そう」の反撃を始めましょう。
診療所運動の力
安倍政権は「放射線障害防止技術基準法」の改定案を国会へ提出し、20㍉シーベルトを全国基準にしようとしています。「福島切り捨て」をめぐる攻防に、文字通り日本と世界の労働者民衆の未来がかかっています。ドイツ・ゴアレーベンの「フクシマを世界標準にさせるな」というスローガンの実践が問われます。
その中で、「被曝と帰還の強制反対署名」運動がすさまじいうねりとなっています。これは、東電と政府の責任を追及せよと福島県・内堀知事に迫る運動です。3月末での「自主避難者」への住宅補助打ち切りを表明し、「甲状腺エコー検査の縮小」を狙い、放射能汚染地域への帰還を強制して県民の命を追いつめる内堀県政に抗議する署名運動です。
「異議を唱える人はいない」「これほど集まる署名は初めてだ」などの感想が寄せられ、署名をした人が直ちに署名を取る側に回る自律的な運動になっています。核心的には「診療所運動のたまもの」と感じています。 一つに、ヒロシマ・ナガサキ、ビキニを経て戦後70年、核の問題に立ち向かい、国家と資本の非人間的な残虐性に対して絶対反対で闘いぬく労働組合、労働者民衆が存在してきたことです。
二つに、その視点と闘いの歴史からチェルノブイリ事故をとらえ直し、3・11と向き合って診療所の創設、維持運営にあたってきたことです。
三つに、立ち上げからこれまでの国内外の寄金者、医師やスタッフ、診療所を信頼している患者さん、避難と保養で格闘するお母さんたち、除染労働者、地域の人びと、「金もうけより命」の闘いを挑んできた労働者、農民、生産者などの人びとが、あらためて福島の闘いを自らのものとしていることです。
韓国の闘いも、アメリカの闘いも、怒りが怒りとして立っているのはそこに労働組合があるから。福島でも動労福島とふくしま合同労組を中心に、総力を挙げて署名運動に取り組んでいます。
労働組合を軸に
「福島の労働運動を根底から変えたい」という決意で自分の職場などにどんどん踏み込み、寄せられた署名数は予想を超えて増えています。
帰還困難区域の自治体の仮設の役場では町職労の青年部長が応じてくれました。「帰還の強制はよくないですよね、家族も被曝しますよね......」----こちらの問いに重苦しい表情を隠せないまま、署名用紙は受け取ってくれました。同じく帰還困難区域の中学校では、女性教師が「(帰還の指示が)もし出たら、若い先生は辞めるでしょうね」と本音も。この中学校からは昨日署名が送られてきました。
「東電は一軒一軒、謝罪しろって、ね」----福島市でも郡山市でも、現場の労働者の怒りの声が署名とともに返ってくる。仮設住宅では「福島の人が避難してるのに、私らはその福島に避難してるんだよな」という、分断された現実が垣間見える痛々しいほどの悲しさや無言の重圧感は、1千万と結びつく闘いそのもの。県内目標まずは1万! と向かって行く私たちの肥やしです。
さまざまな妨害や弾圧をもバネに署名運動をさらに大きく展開させ、3・11を、99%の階級の希望を宣言し解放感あふれる集会にしましょう。