焦点 南スーダン「停戦合意」はウソ 事実隠し自衛隊派兵強行

週刊『前進』02頁(2820号02面04)(2017/02/16)


焦点
 南スーダン「停戦合意」はウソ
 事実隠し自衛隊派兵強行


 陸上自衛隊が国連PKO(平和維持活動)部隊として派兵されている南スーダンの首都ジュバで、昨年7月に政府軍と反政府派の大規模な戦闘が行われた際の様子を記録した自衛隊の文書が、2月7日、防衛省から公表された。文書は「戦闘」という言葉を繰り返し用いており、「戦闘行為ではなく『衝突』だった」とする政府答弁の虚構を暴くものとなっている。
●起きたのは正真正銘の戦争
 「戦車が南下」「対戦車ヘリが大統領府上空を旋回」「宿営地5、6時方向で激しい銃撃戦」「戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘が(国連施設の)周辺で確認される」「(陸自宿営地近くの)ビルに対し戦車砲を射撃、ビル西端に命中」「今後も国連施設近辺で偶発的に戦闘が生起する可能性」----。公表された現地部隊の「日報」と陸自中央即応集団作成のレポートは、大部分が黒塗りにされているにもかかわらず、昨年7月にジュバで起きた事件の実態を生々しく浮かび上がらせている。それはまさに大規模戦闘、いや正真正銘の戦争そのものだ。
 それにもかかわらず、安倍や防衛相・中谷元(当時)は、「散発的な発砲事案が生じた」とか「武器を用いた殺傷や物を破壊する行為はあったが、武力紛争が発生したとは考えていない」などとはぐらかし、PKO参加5原則の一つである「紛争当事者間の停戦合意」は崩れていないとして派兵を継続した。その後、8月の内閣改造で新たに防衛相となった稲田朋美は、わずか7時間の「現地視察」をもって「ジュバは落ち着いている」と断定。11月には安保関連法に基づく「駆けつけ警護」「宿営地の共同防衛」の新任務付与を閣議決定したのだ。
●自衛隊員・家族から怒りの声
 そもそもこれらの文書は、昨年9月末の時点でジャーナリストの布施祐仁氏が情報公開法に基づき開示を求めてきたものだったが、防衛省は秋の臨時国会が閉会した後の12月になって「すでに文書は破棄した」と回答。だがその後の再調査をへて電子データの存在が確認され、今年2月にようやくその一部が公表された。政府・防衛省が国会審議への影響を恐れて公表を遅らせたことは明らかだ。
 今回の文書公表に追い詰められ、答弁に窮した防衛相・稲田は、とうとう「国会答弁する場合には憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないので、武力衝突という言葉を使った」「(戦闘行為が)仮に行われていたとすれば憲法9条上問題になる」(8日、衆院予算委)などと口を滑らせた。憲法9条違反を百も承知で、あくまで派兵を続けるために「戦闘ではなく衝突」などと言葉をすり替えてきたことを認めたのだ。
 こんな輩の命令一つで戦場へ行かされ、銃を持って殺し合いをさせられる自衛隊員はたまったものではない。派遣された隊員の母親は、「防衛相が『戦闘』を『武力衝突』と言い換えて現地が安全かのように表現するなんて」と憤り、別の隊員の父親も「不安を抱えながら送り出した家族を何だと思っているのか」と怒りをあらわにしている(2月10日付東京新聞)。
●朝鮮戦争参戦を狙う
 今、南スーダンでは政府軍による「反政府勢力掃討」と称した民間人への虐殺、略奪、強姦(ごうかん)、拉致、拷問、村丸ごとの焼き打ちなどが続発している。昨年7月の戦闘以後、10月までに20万人以上の住民がジュバから避難し、今年1月だけで5万2千人が隣国ウガンダに逃れた。こうした中で日帝・安倍政権は、中国に対抗してアフリカ地域への影響力を拡大するために、恐るべき住民虐殺を続けるキール政権を積極的に支援しつつ、あくまで自衛隊派兵を継続しようとしている。
 だが、安倍が戦乱の南スーダンに派兵を続ける最大の狙いは、切迫する朝鮮半島―東アジアでの戦争に向けて、自衛隊を「戦争のできる軍隊」へと変貌(へんぼう)させることにある。名目上は「施設部隊」として参加している陸上自衛隊に、あえて治安部隊と同様の「駆けつけ警護」などの戦闘任務を付加したのもそのためだ。
 米トランプ政権は発足直後、ただちにマティス国防長官を韓国と日本に派遣し、日米韓軍事同盟の維持・強化を図るとともに、米軍岩国基地への最新鋭戦闘機F35の配備、辺野古新基地建設の海上工事の着工を次々と強行した。これに呼応し、日帝・安倍は敵基地攻撃能力の保有を声高に叫び始めた。すべては朝鮮戦争に向けた動きだ。
 こうした中、10日の日米首脳会談は、日米安保を軸に核戦争・世界戦争を準備する戦争会談となった。これに対し、韓国では戦争切迫情勢と対決する不屈の民衆決起が続いている。この闘いと連帯し、自衛隊即時撤退・朝鮮戦争阻止・安倍打倒の闘いを日本で巻き起こそう。

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