福島第一原発の危機的状況 数十秒で全員死亡の高線量 デブリ飛び散り「廃炉」展望見えず
福島第一原発の危機的状況
数十秒で全員死亡の高線量
デブリ飛び散り「廃炉」展望見えず
東京電力は今月2日、福島第一原発2号機の原子炉格納容器を内部調査した結果を発表した。想像を超える惨状が明らかになった。1時間あたり530シーベルトと、数十秒いただけで全員死亡するほどの極めて高い放射線量。溶けた核燃料が固まったデブリがあちこちに飛び散り、内部はぐちゃぐちゃで「廃炉」の展望が見えない危機的事態だ。事故はまだ収束していないのだ。
恐怖の530シーベルト
今回行われた内部調査は、デブリの取り出し方法を検討するために調査用のロボットを格納容器内に入れるための予備調査として、先端にカメラが付いたパイプを圧力容器を支える筒状の台座(ペデスタル)の入り口に差し入れたものだ(上図参照)。
国と東京電力は、これまでに1号機と2号機で「ミューオン」という宇宙から来る素粒子を使ってレントゲン写真のように原子炉建屋を透視する調査を行った。その結果、2号機では圧力容器の底に大きな黒い影が映っているのが確認され、燃料デブリのほとんどが圧力容器にとどまっている可能性が高いと推定していた。そこで、格納容器にカメラを入れてもデブリが見える可能性は低いとみていた。ところが実際にカメラを入れて判明したことは、これらの予想を根底から覆す危機的な事態だった。
第一に、空間線量が1時間あたり530シーベルトもの超高線量の部分が見つかったことだ。それがどれほどのものか下図を見て欲しい。
チェルノブイリでは年間5㍉シーベルト(1000分の5シーベルト)で強制移住の権利がある。人間が住んではいけないということだ。(本紙2813号3面参照)
その1400倍の7シーベルトを合計して被曝すると全員死亡すると言われている。毎時530シーベルトとは数十秒いるだけで全員死亡する想像を絶するほどの高線量ということだ。
実際、1999年に東海村で発生したJCO事故では、推定16〜20シーベルト以上の被曝をした労働者は、人体細胞の染色体が破壊され新しい細胞が生成できない状態となった。そのため白血球が著しく減少し、事故から83日目に多臓器不全により死亡した。推定6〜10シーベルトの被曝をしたもう一人の労働者も事故から211日後に死亡した。
ロボット調査さえ不可能に
原発の使用済み核燃料ですら燃料棒としての形を保っていれば毎時数シーベルトである。毎時数百シーベルトという高線量は、原発を稼働させた後の圧力容器内部や、燃料棒が溶け出した場合にしか発生しない。
ここから言えることは2号機においてもかなりの量の核燃料が溶け出して広範囲に飛び散っているということである。
第二に、映像から分かったことは、溶けた核燃料のような塊がそこかしこに飛び散って固まっており、ペデスタル内部の足場用の格子に穴が開いていることである。
これも東電の予測と大きく異なる事態だ。足場用格子に穴が開いているということはロボットが走行する足場がなくなったということだ。そのため今月にも予定されていた自走式のロボットを使った燃料デブリの調査は不可能になった。
東電は、2018年度にデブリの取り出し方法を確定し、21年にも燃料デブリ取り出しに着手するとしていた。だが、事故から約6年たっても、燃料デブリの広がりも、量も、状態もほとんど分かっていない。
そもそも福島第一原発では、寿命が来た原発を廃炉にする一般の「廃炉」作業とはまったく異なる。3基がメルトダウンした世界でも類例のない「廃炉」作業は、まだ何一つ決まっていない。
それどころか、高線量の燃料デブリなどが格納容器の外に漏れ出せば、再度広範囲の避難が必要となる。まさに事故は収束していない。安倍首相は「アンダーコントロール」と言い続けているが事実はまったく違う。
原発作業員の被曝問題深刻
現在も福島第1原発では1日あたり約6千人の労働者が働いているが、事故収束のもう一方の柱である汚染水対策もまったく進んでいない。
国費530億円を投入した「凍土壁」は昨年3月の凍結開始から1年近くたつが、いまだにその効果が上がっていない。
昨年12月16日、厚生労働省は福島第一原発事故の収束作業に従事した後、甲状腺がんを発症した東電社員の40代男性を労災認定したと発表した。同原発の事故後の作業をめぐる労災認定は3例目だが、甲状腺がんによる認定は初めてだ。これ以外にも白血病を発症させるなど、被曝事故は多発している。
今こそ動労水戸を先頭に被曝労働拒否の闘いを組織しよう。日々事故対策にあたる原発労働者と団結し、3・11反原発福島行動に総決起しよう。
(城之崎進)