焦点 難民・移民を排斥するトランプ 入国禁止は戦争拡大と一体
焦点
難民・移民を排斥するトランプ
入国禁止は戦争拡大と一体
トランプ米大統領は1月25日、「不法移民対策」と称してメキシコ国境沿いに壁を建設することを命じる大統領令に署名した。続く27日には「テロ対策を強化する」と称して、中東やアフリカの7カ国からの入国と、すべての国からの難民の受け入れを一時停止する大統領令に署名し、即日発効させた。
その内容は、①全世界からの難民受け入れを120日間停止する、②シリア難民の入国は無期限停止、③5万人を超える難民の入国は17会計年度(16年10月〜17年9月)は停止する、④シリア、イエメン、スーダン、ソマリア、イラク、イラン、リビアからの入国を90日間禁止するというものだ。
この結果各地の空港では、永住権(グリーンカード)や在留資格(ビザ)があるにもかかわらず入国できず、拘束される外国人が続出した。これに対し、翌28日にはロサンゼルスの国際空港などに「入国を認めろ」と怒った人びとが詰めかけ、29日には怒りのデモが全米30都市以上、数万人規模で燃え上がった。さらに抗議デモはヨーロッパなど全世界に広がった。
●誰が難民を生み出したのか
今や戦争・紛争や迫害によって生まれ育った土地を追われる人びとは国連統計でも6530万人(15年)を超え、さらに増加している。近年、最大の難民を生み出している国はシリアだ。次がアフガニスタン、ソマリアと続き、国内避難民が多いのは、コロンビア、シリア、イラク、イエメンと続く。
世界人口のおよそ100人に1人が難民なのだ。この難民を生み出しているのは誰なのか。侵略戦争、資源略奪を続ける帝国主義国であり、その盟主アメリカ帝国主義こそ悪の根源だ。難民を生み出し、さらに迫害を加えているのがトランプだ。トランプのみならず、オバマ政権もこの7カ国を「テロの根源」と位置づけていた。アメリカの「民主主義」のベールをトランプがはぎ取ったにすぎない。
先立つ25日にトランプが国土安全保障省で署名した二つの大統領令は、①約3200㌔メートルに及ぶメキシコ国境に「物理的な壁」を建設する、②警備担当職員5千人、送還に携わる入国管理担当の要員1万人をそれぞれ増員するという内容。「不法移民対策に非協力的な自治体への連邦政府の補助金交付の停止」も盛り込まれた。
最大3兆円規模とも言われる壁の建設費用を「最終的にはメキシコに支払わせる」とトランプは言うが、当然メキシコは拒否している。この巨大プロジェクトのツケは「最終的」に増税として労働者にのしかかる。
これを担当する国土安全保障省長官ジョン・ケリーも、中央軍司令官だった国防長官マティス同様、海兵隊大将の経歴を買われて登用された戦争屋だ。「これはイスラム教徒の入国禁止ではない。われわれの使命はアメリカ国民と国土の安全、価値観を守ることだ」と繰り返すケリーの発言こそ、アメリカが繰り返してきた戦争の論理だ。
●トランプを支持する安倍
この壁は、パレスチナを囲む壁と同じだ。事実、イスラエル首相・ネタニヤフは「トランプ大統領は正しい。素晴らしいアイデアだ」(28日、ツイッター)と絶賛した。このネタニヤフ同様、トランプを支持しているのが安倍首相だ。
安倍は国会答弁などで「コメントを差し控える」と表明しながら、「難民の入国禁止」を容認し続けている。
そもそも日本ほど「難民受け入れ拒否」を貫いている国はない。年間数万人の難民を受け入れてきたアメリカに対し、日本の難民受け入れは限りなくゼロに近い。昨年日本での難民申請者は初めて1万人を超えたが、9月末時点で7926人の難民申請者に対し、難民認定者はわずか6人のみなのだ。
●分断を打ち破り国際連帯を
資本主義・帝国主義は、世界大恐慌下、絶望的な危機にあえいでいる。トランプ政権との闘いは、戦争を止める闘いであり、労働者階級にすべてを奪い返す闘いの始まりだ。トランプ就任を迎え撃った数百万アメリカ人民の中軸には、2大政党と決別し新たな闘いを開始した労働者部隊がすっくと立っている。これこそがトランプを凶暴な攻撃へと駆り立てているのであり、階級情勢のヘゲモニーは今や労働者階級が握っている。
2月3日、ワシントン州シアトルの連邦地裁が、難民・移民入国禁止の即時停止を命じる仮処分を決定した。韓国でアメリカで始まった革命情勢に胸躍らせ、日本で国鉄決戦を闘おう。労働者に国境はない。ゼネストへ! 革命へ! 全力で闘いぬこう。今がその時だ。