動労総連合出向無効裁判 外注化は雇用と安全を破壊 田中委員長証言がJRを圧倒

週刊『前進』02頁(2812号01面03)(2017/01/19)


動労総連合出向無効裁判
 外注化は雇用と安全を破壊
 田中委員長証言がJRを圧倒


 動労総連合強制出向無効確認訴訟の第3回証人尋問が1月13日、東京地裁民事第11部(佐々木宗啓裁判長)で行われた。動労総連合の田中康宏委員長(動労千葉委員長)が総括的な証言に立ち、JR東日本本社の池田裕彦・運輸車両部(企画)担当部長への尋問が行われた。

分社化・転籍に至る攻撃を弾劾

 田中委員長は動労総連合が外注化に反対した理由について、「外注化は雇用と労働者の権利を破壊する。鉄道業務の最大の使命である安全を破壊する。労働組合の団結を破壊する」と証言した。そしてJRが今、「水平分業」と称してこれまでの外注化を超え、分社化・転籍強要に至る攻撃に出てきたことを弾劾した。特に、「外注化で責任の所在があいまいにされた。業務を外注化した途端、その業務の責任はCTS(千葉鉄道サービス)などの受託会社に移るが、CTSはこれまで検修業務をしたことがなく、責任は取れない。結果として、誰も安全に責任を取らなくなった」と指摘した。
 また、JRとCTSは覚書で「不測の事態の場合はJRとCTSが協議し、業務を発注するかどうかを決める」と定め、動労千葉がCTSでストを構えた場合、動労千葉組合員が担っている業務をJRはCTSに発注せず、JR側が業務を行うという形でスト破りが行われている事実を突きつけた。
 さらに、外注化が必然的に偽装請負になることをごまかすため、JRが構内入換信号や合図を「作業指示ではなく単なる情報提供」と主張していることを批判して、「鉄道業務のイロハのイを否定するものだ。信号は厳格な指示で、信号がなければ車両は絶対に動かせない」と証言した。
 JR側代理人の反対尋問は、動労千葉の請求が認められなかった過去の判例をあげつらうことなどに終始し、まともな反論は一切できなかった。

「一人で何役も」会社証人に怒り

 会社側の池田証人は、原告代理人の反対尋問に答えて、とんでもないことを口走った。「グループ会社のプロパー(直雇い)社員の中には、清掃だけでなくいろんな仕事がしたいという方が大勢いる。検修や構内の仕事もしたいという彼らの希望をかなえ、一人当たりの労働密度を上げればコストダウンにつながる」と述べたのだ。低賃金のプロパー労働者に、清掃も検修も構内運転もすべてやらせるということだ。傍聴席から怒りの声が上がった。裁判長は不当にも退廷を命じた。
 原告側はまた、鉄道事業法施行規則が「乗務員が所属する事務所ごとに乗務員指導管理者を選任しなければならない」と定めていることを挙げ、「指導管理者を選任するのはJRなのかCTSなのか」と問いただした。証人は「JRの車両センターの所長が指導管理者になる」と答えた。JRの所長が指導管理するならまさに偽装請負だ。鉄道業務の外注化は必然的に偽装請負を伴うのだ。
 さらに原告代理人は、証人が主尋問で「外注先のグループ会社の体制が整うのに10年かかる」と述べたことを捉え、出向期間は原則3年とされていることとの矛盾を突いた。証人は「3年で出向を解除する計画はなかった」と証言した。出向は定年まで続くということだ。裁判長もこの問題に関心を示し、「10年で出向を解消する計画を立てたのか」と質問したが、回答は「プロパー社員を採用するのは各グループ会社の責任なので、細かい計画は各グループ会社で立ててもらうしかない」という無責任きわまるものだった。
 原告代理人が「外注化によりどの程度のコストダウンを見込んでいたのか」と聞いても、「具体的な数値は分からない」としか答えられない。
 原告自身も、それぞれの実体験に基づいて池田証言の矛盾を追及した。
 この日の裁判を闘って、動労総連合は3月ダイヤ改定を焦点に第2の分割・民営化と職場から対決する態勢を整えた。裁判闘争をめぐっては、外注化の違法性を明確にする近藤昭雄・中央大学法学部教授の意見書を提出してJRをさらに追い詰める方針だ。次回は6月7日。最終陳述書を提出し、12年12月の提訴以来4年を超える地裁での攻防は結審を迎える。
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