政府の高速炉開発方針断罪 核武装と原発輸出を狙う実証炉開発の破綻は必至

週刊『前進』04頁(2811号03面02)(2017/01/16)


政府の高速炉開発方針断罪
 核武装と原発輸出を狙う実証炉開発の破綻は必至


 昨年12月21日、原子力関係閣僚会議は『高速炉開発の方針』(以下、『開発方針』)を決定した。高速増殖原型炉「もんじゅ」は相次ぐ大事故や〝点検漏れ〟と、それへの労働者人民の怒りで稼働が不可能となった。安倍政権は高速増殖炉としての「もんじゅ」の破産の現実に追い詰められながら、大恐慌の深まりと世界戦争―核戦争の切迫下で核武装のための軍事用プルトニウム生産と原発輸出をめざして高速増殖炉開発になおもしがみつこうとしている。断じて許すことができない。

「もんじゅ」の破産開き直る

 今回の『開発方針』が出された直接の契機は、一昨年11月の原子力規制委員会による「勧告」だ。労働者人民の怒りで、〝このままではもんじゅを廃炉にせざるをえなくなる〟と危惧した規制委は政府・文科省に対して「もんじゅの運転者の交代」を勧告した。それは、〝組織の交代〟という欺瞞(ぎまん)でもんじゅを存続させようとの魂胆だった。しかし、もんじゅを扱った経験のある組織は現在の日本原子力研究開発機構のほかになく、何より、交代で労働者人民の怒りをかわすことなど不可能だ。
 そこで安倍政権が1年余りを費やした末に打ち出したのが今回の『開発方針』だ。許せないことにここで、〝平和利用〟〝夢の原子炉〟の看板を掲げた高速増殖炉もんじゅの破産を開き直り、「将来の高速炉の実現」に向けた「新たなチャレンジ」なるものを語っている。だが安倍に自信や確信があるわけではない。帝国主義として「高速炉開発」の道にしがみ付く以外ないということだ。だから『開発方針』はもう一方で、「東京電力福島第一原子力発電所事故の発生以降、我が国の高速炉開発は、様々な状況変化に直面してきている」と、労働者人民の怒りで原発再稼働も核政策も思うように進まず、今後もどうなるかわからないと嘆いている。
 日帝・安倍政権が目指すのは核武装だ。

核兵器用プルトニウム確保

 『開発方針』では「我が国は、高速炉開発の推進を含めた核燃サイクルの推進を基本方針としている」と、1956年の「原子力開発利用長期基本計画」以来の方針を強調している。それは、核兵器用の高純度プルトニウム確保を目的とした核燃サイクルの確立とその軸をなす高速増殖炉の開発ということだ。
 なお、ここで『開発方針』は「高速炉開発の推進を含めた核燃サイクルの推進」などと、日帝が「高速増殖炉」開発を行ってきたことを意図的にごまかしている。そうすることで今後は「高速炉」という別物の開発であるかのように装っている。しかし、名前を変えようが、両者は〝核兵器用の高純度プルトニウム生産〟ということではまったく同じなのだ。
 朝鮮半島における核戦争の危機が到来している中で、日帝・安倍政権は戦争と改憲、核武装に突き進むことに帝国主義としての生き残りの道を求めている。今回の内容を準備した「高速炉開発会議」の、昨年10月7日の第1回会合で世耕弘成経済産業大臣は、核燃サイクルを「世界の安全への貢献」のためと軍事目的であることを明示に言い切っているのだ。
 もうひとつの狙いは、ベトナムへの輸出失敗で暗礁に乗り上げている原発輸出に再度踏み込むことだ。『開発方針』は「将来の国内の原子力市場は、東電福島原発事故以前に想定していたよりも、縮小を見込まざるをえない。......国際市場への展開も見据えた開発戦略が必要」と輸出戦略の強化を強調している。
 そしてそこで勝っていくためには「第4世代の原発」である高速炉開発が必要だとし、「『第四世代原子力システムに関する国際フォーラム』などの多国間協力」にも積極的にかかわっていくと述べている。また重要な技術上の課題として、もんじゅが採用してきた「耐震性確保等のために追求してきたループ型」の炉型は、実証炉以降ではどの国も採用せず、「タンク型」を選択しているとし、新たに目指す実証炉での「タンク型」の採用を示唆している。
 昨年のイギリスのEU離脱決定やアメリカのトランプ登場は、保護主義を促進し争闘戦をいっそう激化させている。その中で日帝は、鉄道輸出と原発輸出で市場と勢力圏を確保しようと躍起になっているのだ。
 さらに『開発方針』が狙うのは、2018年の日米原子力協定の更新だ。日帝はこの協定で核兵器保有国以外では唯一、大型施設での使用済み核燃料再処理を認められている。高速増殖炉開発・核燃サイクルの確立のためにこの権利を守ろうと日帝は必死だ。

3・11反原発福島行動17へ

 安倍政権は『開発方針』で「将来の高速炉」の具体的構想として、「実証炉」の建設を提示している。高速増殖炉の開発は実験炉、原型炉、実証炉、実用炉(商用炉)と進んでいく。原型炉もんじゅが破綻し、次の段階の実証炉を目指すなど空論のきわみであり、惨めな失敗が待つのみだ。だから、「実証炉の設計段階に向けた開発作業に改めて着手することは十分に可能」と、思わず自信のなさを吐露しているほどだ。
 他方で安倍は、『開発方針』と同じく昨年12月21日に原子力関係閣僚会議が出した「『もんじゅ』の取扱いに関する政府方針」で卑劣にも、今後も「『もんじゅ』を活用」と述べている。大事故連続で破綻した、軍事用プルトニウム製造のためのもんじゅの「活用」など到底許せない。
 韓国民主労総に続き、ゼネストで日帝の核武装を絶対に阻止しよう。被曝と帰還の強制反対署名に取り組み、3・11反原発福島行動に全国から集まろう。その力でもんじゅを完全に廃炉に追い込み、核燃サイクルを破綻させよう。
(北沢隆広)

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ループ型とタンク型
 ループ型は原子炉容器、ポンプ、中間熱交換器などを独立させて配管でつなぎ、ナトリウムを循環させる。地震の際、配管が壊れて危険なナトリウムが流出・爆発する危険性が大。タンク型は大型の原子炉容器の中にそれらを入れ、ナトリウムで満たす。巨大すぎて耐震性がなく、ループ型よりさらに地震に弱い。

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