日ロ首脳会談 「領土交渉」一蹴され大破産 プーチンは日米安保をけん制

週刊『前進』02頁(2808号02面02)(2016/12/22)


日ロ首脳会談
 「領土交渉」一蹴され大破産
 プーチンは日米安保をけん制


 12月15日、安倍は自身の地元・山口県長門市にロシア大統領プーチンを迎え、翌16日には首相官邸に場を移して2日間にわたる日ロ首脳会談を行った。会談前から御用メディアなどが「北方領土返還」の機が到来したかのように大宣伝し、会談後も「解決へ一歩前進」などと報じている。しかし実際には、プーチンの強硬姿勢を前に安倍は「領土問題」を議題にすることすらできず、経済協力だけを約束させられるという惨めな大敗北に終わった。
 他方、米トランプの登場が戦後世界体制の総崩壊を激しく促進する中、プーチンは今回の日ロ会談を対米・対欧戦略の一環と位置付け、明らかに軍事的・戦争的な観点をもって臨んだ。記者会見で日米安保条約に言及し不信感をあらわにするなど、過去には見られない強硬な態度を示した。

世界戦争切迫を背景に強硬姿勢のロシア

 安倍は今年5月にプーチンと会談した際、「新たなアプローチ」と称する経済協力を提案し、その見返りに「領土交渉」を図ろうともくろんだ。9月の会談後には、「今までの停滞を打破する突破口を開く手応えを得た」と有頂天になり、12月の日ロ会談で「領土交渉」を進展させ、その「成果」で弾みをつけて来年冒頭に解散・総選挙に打って出るという魂胆を、周囲にも興奮気味に語っていた。
 ところが、11月の会談でプーチンが態度を硬化させると、浮かれていた安倍は途端に青ざめた。その直後、ロシア政府は国後(くなしり)・択捉(えとろふ)両島に地対艦ミサイルを配備したと発表。さらに12月会談の直前になって、プーチンは「ロシアには領土問題はまったくない。あると考えているのは日本だけだ」と発言。またロシア政府高官は「(領土を返還すれば)米軍基地が置かれるのではないか」と警戒感をあらわにした。
 実際、日米安保条約上は「日本の領土」にはどこでも米軍基地が置けるのであり、今日の戦争情勢下においてロシア・プーチンはとうていそんなことを容認できない。「領土返還」などに応じるはずがないのである。すでにロシア軍は国後・択捉に3500人の兵力を常駐させ、基地や訓練場など400もの軍事施設の建設を進めている。
 安倍は戦後世界体制の総崩壊と帝国主義間・大国間争闘戦の激化に伴う世界戦争切迫という情勢を見据えて対応することもできず、大破産したのだ。なお今回の日ロ会談の直後、米帝オバマは、ロシア政府が米大統領選にサイバー攻撃で介入したとしてプーチンを名指しで非難した。そのオバマとともに、安倍は今月26、27日にハワイを訪問する。日帝の活路を求めて綱渡り的な二枚舌外交を展開しつつ、結局は危機と破産をさらに深めていくしかない。

アイヌ民族を侵略し奪った「北方領土」

 ここではっきりさせなければならないことは、そもそも日帝には「北方領土」の領有権を主張する資格など1ミリもないということだ。
 択捉島、国後島を含む千島(クリル)列島や色丹(しこたん)島、歯舞(はぼまい)群島といった島々には、かつてアイヌ民族などの先住民族が生活していた。そこに江戸時代末期の1855年、日露通好条約を結んだ日本とロシアが勝手に線を引いて分割・支配した。明治以後、日本政府はロシアの南下をにらみつつ、アイヌ民族への侵略と抑圧、土地強奪、日本人への同化政策などを強行した。サハリンや千島列島の住民を色丹島や北海道に強制移住させて絶滅に追いやるなど、その統治は残虐を極めた。
 その後、日帝は1945年の敗戦で千島列島、色丹島、歯舞群島をすべて放棄させられた。51年サンフランシスコ講和でも択捉、国後を含む千島列島の放棄を確認した。
 ところが、56年の日ソ国交回復を前に、日本政府は「択捉、国後は〝南千島〟であり、放棄した千島列島には含まれない」と言い出した。そしてこれに色丹島、歯舞群島を加えた「北方四島」「北方領土」なる造語を外務省を通じてねつ造し、「固有の領土」などという国際法上の根拠すらない概念をふりまわして反ソ・反共の排外主義的大宣伝を繰り広げた。「北方領土問題」なるものは、日帝が政治的にデッチあげたものにほかならないのだ。

労働者階級に国境も「固有の領土」もない!

 労働者階級は、自国政府による他国・他民族への侵略や領土拡張に断固反対して闘うと同時に、そもそも国際的に単一の階級としての労働者階級には「領土」も「国境」もないという原則的立場をはっきりと主張しなければならない。現在地球上に引かれている国境線は、その地で生活する住民の意思とはほとんど無関係に、帝国主義とスターリン主義の大国によって得手勝手につくられたものにすぎないのだ。
 労働者の国際連帯とプロレタリア世界革命で、すべての国境を廃止しよう。安倍打倒の17年決戦をその第1年としてかちとろう。
(水樹豊)

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