パククネと全面対決した鉄道労組スト74日の地平 成果給・民営化攻撃粉砕へ 不動の団結築き闘い継続
パククネと全面対決した鉄道労組スト74日の地平
成果給・民営化攻撃粉砕へ
不動の団結築き闘い継続
12月9日午後2時、韓国・鉄道労組は無期限ストを終結した。9月27日からの74日間にわたる偉大なストライキは、民主労総ゼネストを支える最大の支柱となり、ついにパククネを大統領職務停止に追い込んだ。そしてソウル地方本部を先頭とする闘う鉄道労組組合員は、職場に復帰したその日から直ちに新たな闘いに入った。成果年俸制の全面廃棄とパククネ「労働改悪」の完全粉砕へ向けて、第2ラウンドの一層決定的な激闘が始まった。
「成果主義と競争は悪」への価値観の転換かちとる
パククネを弾劾に追い込んだ力は、韓国の労働者人民の内部に積もりに積もった新自由主義への怒りの大爆発である。社会の大多数を占める労働者階級や農民、都市の零細自営業者など働く人民のすべてが「もはや生きていけない」状態にたたき込まれる一方で、一握りの財閥大資本が人民大衆の貧困を逆に食い物にして肥え太ってきた。この財閥と国家権力との結合のもとで「命より金」という腐敗が全社会に強制され、社会全体の崩壊を生んできた。もう我慢できない! この現実を根底から覆さずにはおかないという怒りと決意が、パククネ政権打倒の決起となって一斉に噴き出したのである。
それを可能にしたのは民主労総の9月末からの大ゼネストだ。その最大の牽引(けんいん)車となったのが、鉄道労組の無期限ストライキだ。
パククネ政権は新自由主義をさらに極限まで推し進めるために、全労働者への雇用・賃金破壊と総非正規職化の攻撃を推進した。民主労総は昨年来、何波にもわたるゼネストでこの「労働改悪」攻撃を粉砕してきた。追い詰められた財界と政府は今年に入って、公共部門への大民営化攻撃を仕掛けた。その突破口として、成果主義賃金の導入を就業規則の一方的変更によって押し付けようとしてきたのだ。
これに対して民主労総は鉄道労組・公共運輸労組を先頭に、「成果年俸制・成果退出制絶対阻止」を掲げて9月27日からこれまでを上回る大ゼネストに突入した。同時に連日、街頭に出て、全人民にストの正義性を真正面から訴えて闘った。
とりわけ決定的だったのは、鉄道労組を先頭にしたこのストライキが、「成果を挙げた者が報われるのは当然」というブルジョア・イデオロギーを真っ向から打ち破る闘いとして展開されたことである。逆にストライキ労働者の「成果主義と競争は隣の仲間を蹴落として自分だけ生き残ろうとすることだ。人間社会の共同性を根底から破壊するものだ」という訴えが、全労働者、全人民の魂を急速につかんだ。
さらに、「私たちは社会のために働いてきた。その労働を資本の金もうけの手段に転落させるなど許さない」という公共部門労働者の誇りに満ちた闘いが、ストへの圧倒的共感を呼び起こした。この支持と共感は「不便でも大丈夫」という声となり、壁新聞となって街中に貼り出された。鉄道労組のもとには2カ月の間に、50億ウォンにも達する巨額のスト支援カンパが寄せられた。
2013年末に闘われた鉄道労組の23日間のストライキも、民営化反対の圧倒的世論をつくり出した。だが今回の74日間のストはそれをも超え、資本主義の競争原理そのものを否定しその粉砕を求めるという価値観の巨大な転換を、全社会的な規模で生み出したのだ。 そして今、100万、200万の民衆がパククネ打倒とともに「財閥解体」を掲げ、社会の根底的変革へ向けて総決起するという、歴史的な革命情勢を引き寄せるに至っている。
全組合員が心を一つにし賃金も分け合って闘った
9・27の無期限スト突入は、鉄道労組にとって簡単な闘いだったわけではない。それはまず13年末の23日間ストへの報復攻撃の嵐と対決するところから始まった。指導部への刑事弾圧、活動家の大量解雇をはじめとした重処分、そして巨額の損害賠償請求との格闘である。その中から一歩一歩、職場の団結を打ち固め、再び大闘争をやりぬく力をつちかい、満を持して今回の決戦に突入したのである。
74日間のストを特徴づけたのは、何よりも一人ひとりの組合員の主体的で自己解放的な決起と、そこに生まれた比類のない団結だ。ストライキが長期化するに従い、組合員の戦闘精神は弱まるどころか逆にますます高揚した。
鉄道公社は、ストが4週目に入ろうとした時点でスト参加者全員に、10月20日までに業務復帰しなければ処分するとの最後通告を行った。管理者を総動員して家族をも脅迫した。だが21日朝も7330人がストに入り、通告に応じたのはわずか31人にとどまった。10月25日の集会で、組合員は闘いへの確信を次のように語った。「私の人生の中で最も意味のある幸せな1カ月、職場の大切さを悟って、同僚との信頼を強固にした1カ月。時間がたつにつれ、私たちを疲れさせるのではなくよりたくましくした1カ月」と。
窮地に立った公社と政府は、スト破壊のために軍の兵士をも代替要員として投入した。その結果起きた事故の続発、安全の一層の崩壊は、鉄道労働者と全社会の怒りをさらに燃え立たせた。
とりわけ重要なのは、ストに入った組合員と必須維持業務に従事する組合員とが、完全にひとつに団結して闘いぬいたことである。
韓国では、「必須維持業務」とされた職場の労働者がストに入ることはあらかじめ禁止されている。鉄道の場合、その範囲は車両整備や線路の保守、電気・信号・通信、施設管理などきわめて広い。鉄道労組の組合員1万8600人のうち、実際にストに入れるのはその半分でしかない。今回の無期限ストはこの分断を圧倒的に突破して闘われた。無賃金を強いられるスト参加者の生活を支えるために「賃金公平基金」が設けられ、ストに入らない組合員が自己の賃金を削って拠出するという闘いが全職場で展開されたのである。74日間もの超長期のストを一糸乱れず闘いぬいた力の源泉はそこにある。
12月9日をもってストはいったん終結したが、組合内には「あと2カ月でも3カ月でも闘える」という確信と決意がみなぎっている。もはやどんな手段を使っても、この団結を切り崩すことは絶対にできない。
動労千葉との国際連帯を強め社会の全面的変革へ
スト終結を導いた12月7日の労使合意は、成果年俸制には一言も触れていない。このことをめぐって組合内では激しい議論が交わされた。この激論を経て鉄道労組は、成果年俸制導入絶対阻止を再確認し、体制を再整備して次の闘いに進むことを宣言した。
民主労総もまた12月12日、声明を発して鉄道労組の闘いをたたえ、その切り開いた地平の大きさを確認すると同時に、労働改悪・成果年俸制の完全廃棄へ向けて全力を集中し、直ちに新たな闘いに突入しようと訴えた。
パククネ政権も鉄道公社も、攻撃の貫徹をまだ何ひとつあきらめてはいない。74日間のストが偉大であればあるほど、彼らは鉄道労組の破壊にますます襲いかかってくるだろう。だが労働者階級は、そうした反動との対決をくぐり抜ける中で、自己をさらに打ち鍛えて前進する。その道はすでに始まっている。
鉄道労組ソウル本部の前本部長であるオムギリョン氏は、社会変革労働者党の機関誌『変革政治』に掲載されたインタビューで語っている。鉄道労組の闘いがいま一つ前に進むためには、現在のピルゴンスト(必須維持業務を除いたスト)の限界を超えて進む必要があるのだと。合法的形式の枠を突破して「本当に列車を止めるスト」をやりぬくということだ。 パククネ弾劾を実現した決定打は、「正義は法の上にある」と宣言し、政治スト=「違法スト」となるのを承知で敢行された民主労総の11・30ゼネストだった。同様に、体制の根底的変革をかけた決起こそが真の勝利への道を開くという問題がここで提起されている。
さらに、貨物連帯の組合員1万4千人が10月、鉄道労組に連帯してストに決起したのも重要だ。貨物連帯のストが1週間で終わらず何週間も続いていたら、物流の完全な停止が現実となり、パククネをさらに追い詰めていたのは間違いない。
動労千葉は、鉄道労組ソウル本部との交流・連帯をとおして相互に学び合い、分割・民営化絶対反対の立場と路線を一層深め、発展させてきた。この鉄道労働者の国際連帯は今、日韓を軸にドイツやアメリカへと拡大し、さらに全世界に広がろうとしている。韓国鉄道労組の決起に続き、動労千葉・動労水戸―動労総連合を先頭に、今こそ民営化・外注化・分社化攻撃粉砕の決戦に突入し、ともに勝利しよう。
〔坂本千秋〕