焦点 外国人労働者を介護職場に導入 技能実習制度を廃止せよ

週刊『前進』02頁(2806号02面04)(2016/12/15)


焦点
 外国人労働者を介護職場に導入
 技能実習制度を廃止せよ


 11月18日、在留資格に「介護」を追加する改悪入管法(出入国管理及び難民認定法)と、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(以下、外国人技能実習法)が成立した。
 今回の入管法等改悪の狙いはどこにあるのか。①介護労働者不足を補う外国人労働者導入、②外国人技能実習制度の問題点の2点を明らかにする。
●在留資格に「介護」新設
 介護労働者は2025年に日本国内で約38万人も不足すると予想されている(厚生労働省の推計)。この労働力不足を外国人労働者で補おうというのだ。
 今回、入管法の在留資格に「専門人材」として「技術・人文知識・国際業務」と並んで新たに「介護」を加えた。同時に、外国人技能実習法施行とともに省令改定を行い、技能実習の対象に介護を加えるというものだ。外国人技能実習生が日本で介護福祉士の国家資格を取得すれば、「介護」の在留資格を認める。
 これまで介護職への外国人労働者は、経済連携協定(EPA)を結んでいるインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国に限って国際厚生事業団(JICWELS)のあっせんで受け入れてきた。滞在期間が5年限定の上、条件とされている現地の資格や日本語能力などハードルが高いこともあって過去8年間の累計で看護師と合わせて約3800人(9月現在)にとどまっている。
 安倍政権は介護事業の解体と営利化を進め、「命よりカネ」の新自由主義攻撃で強労働と安全破壊、団結破壊をしてきた。その介護現場の労働力不足解消と総非正規職化を狙って外国人労働者導入を解禁しようというのだ。
 しかし、そこで外国人労働者を待っているのは、今以上に過酷な強労働と差別構造だ。安倍の「日本再興戦略」に基づく「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」の中間まとめ(15年2月4日)は、真っ先に外国人労働者の導入が「介護職に対するイメージ低下を招かないように」と懸念している。
 民族・国籍・国境を越えた労働者同士の団結のないところでは、外国人労働者も生きることができない。闘う労働組合に結集しともに闘おう。
●実習期間を最長5年に延長
 外国人技能実習法は、技能実習の「適正な実施」、実習生の「保護」をうたい、①受け入れ期間を最長3年から5年に延長、②企業の雇用実態を監督する認可法人「外国人技能実習機構」の新設、③実習生への人権侵害に罰則を規定----が柱だとされるが、その目的はずばり実習期間を最長5年に延長することだ。
 すでに、2020年東京オリンピックのために建設業界では、労働力を確保しようと技能実習を終えた外国人労働者を「特定活動」の在留資格で呼び寄せ、技能実習期間を延長するなどの措置を取っている。これを全産業に拡大し、日本政府が建前禁止としている「単純労働力」としての外国人労働者を確保しようというのだ。
 外国人技能実習法は、「基本理念」として「第三条 技能実習は、技能等の適切な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない。2 技能実習は、労働力の需要の調整手段として行われてはならない」と明記している。
 しかし、日本の外国人技能実習制度は「強制労働」「奴隷労働」として国際的な批判を浴びている。政府統計においても昨年末現在で約19万2千人の技能実習生のうち、1年間で6千人が実習先から失踪している。
 厚労省が8月16日に公表した技能実習実施機関に対する監督指導、送検の状況を見ると、昨年1年間に違法な時間外労働や賃金不払いなどの労働基準関係法令違反が3695事業場で見つかった。これは前年比718カ所増で2003年以降最多。労働局や労働基準監督署が監督指導に入った事業場は前年より約1・3倍増の5173カ所、うち7割以上で違反が見つかった。死亡事件など悪質な46件が送検されている。
 月100〜150時間の時間外労働、休日労働を強いながら賃金台帳に記載せず最低賃金額以上の賃金を払わない事例や、有機溶剤を扱う労働者に特殊健康診断を行わず、作業環境測定も実施しないという命を脅かす事例など、まさに「強制労働」の実態がここにある。
 外国人技能実習制度に改善・見直しの余地はない。即刻廃止しなければならない。

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