米の階級支配が崩壊 トランプ打倒は革命の引き金

週刊『前進』02頁(2804号02面02)(2016/12/08)


米の階級支配が崩壊
 トランプ打倒は革命の引き金

(写真 トランプ大統領反対デモがアメリカ全土を席巻している。写真は11月10日、オークランド)

 第2次世界大戦後、帝国主義世界体制の基軸になってきたアメリカは、総破綻した。トランプが大統領に選ばれたのはその表れだ。もはや偽りの展望を示すことさえできない。今度の選挙でも、トランプに入れた理由の第1位は「クリントンではない」で、クリントンへの投票理由も「トランプではない」だ。労働者が主人公になる新たな社会以外に希望はない。

■2大政党制が崩壊

 「ラストベルト」(鉄さび地帯)の白人労働者の票をトランプが取ったことが彼の勝因だといわれている。だが「トランプの移民300万人送還などを支持した」のではない。オバマは歴代大統領をはるかに越える250万人を強制送還した。民主党が「トランプの移民攻撃はひどい」と批判しても労働者にとっては説得力がない。民主党がトランプ登場の道をつくったのである。
 大工業地域から生産拠点が海外移転され、労働者が失業、低賃金・非正規職化に苦しんでいる。09年の巨大自動車会社GMの破産処理の過程などでオバマは労働者への攻撃をさらに激化させた。だから以前は民主党が勝利していたその地域の諸州で今回逆転したのだ。
 今回、中西部のミシガン州では226万8千票対227万9千票となり、0・23%の僅差(きんさ)でトランプが選挙人16人獲得、同ウィスコンシン州でも0・81%差で選挙人10人、ペンシルベニア州でも0・81%差でトランプが選挙人20人だ。この3州だけで選挙人が46人分、逆転した。この46人がなかったらトランプは負けていた。
 前回の大統領選挙(オバマ=民主党、ロムニー=共和党)の時と比べると、ウィスコンシン州では、民主党は162万票から138万票に減らしているが共和党は140万票のままだ。ミシガンなどではトランプ票は増えているが大幅ではない。トランプ支持が伸びたのではなくクリントン支持が落ち込んだのだ。
 ほぼすべてのマスコミがクリントンを支持した。トランプがロシアとの協調やNATO(北大西洋条約機構)諸国、日本などが費用全額負担に応じない限り駐留米軍を引き揚げるなどと主張したことに軍やCIA(中央情報局)の幹部も一斉に反発し、クリントン支持を打ち出した。
 支配階級の主流が総がかりで支援したにもかかわらず通用しなかった。これは民主党の敗北にとどまらず、2大政党制というこれまでの政治選択の枠組み自体の崩壊だ。
 これは民主党に労働者を縛り付けてきたAFL―CIO(米労働総同盟・産業別組合会議)の既成指導部への怒りの爆発であり、新たな労働運動の台頭を示すものだ。

■労組再生への反動

 今回の大統領選挙の中で、民主・共和両党を最も突き動かしていたものは、アメリカ国内の労働者階級の新たな闘いの登場と全世界の革命的決起への危機感だ。
 07〜08年以来の大恐慌の激化、そしてアフガニスタン・中東での米軍の戦略的敗北の中で、アメリカ帝国主義・支配階級は、いよいよ国内の革命の胎動が始まったことにすくみあがった。だから、予備選段階から民主党・共和党と双方で、異例の展開となったのだ。
 アメリカ最大の労組である教職員組合(NEA〔全米教員協会〕とAFT〔アメリカ教員連盟〕)ではシカゴ教組、ロサンゼルス統一教組などの戦闘的潮流が職場からの組織化で組合権力を奪取し、全国組織を建設している。それには中央指導部そのものを奪取する勢いがある。鉄道ではRWU(鉄道労働者統一委員会)が労組執行部が締結した1人乗務承認協約に反対し勝利した。郵政では3年前に最大労組APWU(米郵便労組)で戦闘的潮流が中央執行部を奪取した。CWU(通信労組)は今年、通信大手のVERISON社での大ストライキを打っている。
 こうした中で、民主党では「本命」のヒラリー・クリントンに対して「政治革命」「社会主義」を掲げたバーニー・サンダースが挑戦し、民主党大会の直前まで決着がもつれた。そうしなければ、労働者を民主党のもとにつなぎ留められなくなったのだ。
 AFL―CIOはクリントン支持を打ち出した。だが従来から戦闘的だったILWU(国際港湾倉庫労働組合)などに加えて、今回はAPWU(米郵便労組)やCWU(通信労組)もAFL―CIOの統制力をはねのけてサンダースを支持した。これは、結局はクリントン支持へともっていくというサンダースの思惑も超えるものだった。
 共和党では最有力と言われていたジェブ・ブッシュ(前大統領の弟)が早々に撤退を余儀なくされ、極右茶会派系のテッド・クルーズと政治家としての経歴がないトランプが最後まで争った。共和党も既存の潮流を激しく攻撃しなければ生き残れなくなっているのだ。

■世界革命訴える時

 安倍との会談の4日後に「大統領就任の日にTPP(環太平洋経済連携協定)離脱」と発表するなど、トランプは従来の外交のあり方そのものを破壊しアメリカ自身がつくった世界秩序を破壊していく。日本では独自の核武装論が台頭している。
 トランプの排外主義・差別主義の扇動は、国内の襲撃の激化をもたらすとともに戦争をエスカレートさせる。アメリカのトランプ打倒の決起と連帯し、戦争を起こる前に阻止しよう。革命を真正面から訴えて、組織し、組織し、組織しよう。
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