映画「何者」 就活する青年のリアル 革命の中にこそ未来が
週刊『前進』04頁(2801号04面03)(2016/11/28)
映画「何者」
就活する青年のリアル
革命の中にこそ未来が
「1分間であなたを表現してください」
数人の就活生を前にして、面接官の一言から、この映画は始まる。
映画「何者」は、5人の就活生を描いた人間ドラマだ。佐藤健や有村架純など豪華な若手俳優が演じる。
5人の若者がひとつの部屋を就活対策本部にして、お互い相談しながら就活を進める。エントリーシートの書き方、面接での対応、どういう企業を受けるか、和気あいあいと話し合う。
しかし、彼らから語られる言葉がどこかわざとらしく、上滑りしている。就活用の本からの聞きかじりの言葉が並ぶ感じがリアルだ。
自分が社会でどういう職につくのかをさぐる余裕もなく、不採用が連続し、自分の全人格が否定されるような感覚に陥る。企業説明会、エントリーシート、筆記試験、面接を繰り返し、仲間内でも、「不採用」は話題にできない。
映画が淡々と進んでいく様子は、今の青年が持つ言葉にできない感情のやるせなさを感じさせる。それぞれの思いや悩みが友人との会話ではなく、LINE、ツイッター、フェイスブックで文字として吐き出される。
そんな中、5人の中で内定をとれた人が出てくる。5人の関係が崩れ出す。内定をとった青年がお祝いパーティーの後、タクシーの中で酔いながら「内定とっただけで、丸ごと自分が肯定された気がする。でも就活が終わっても、何者にもなれた気がしない」とつぶやく。そこから青年の赤裸々な思いが流れ出る。
大恐慌のもと、新自由主義が破壊したこの社会で生きる青年たちを描いた映画だ。電通の女性新入社員の過労自殺も思い起こさせる。
4割が非正規職の日本社会で、安倍政権の「働き方改革」はさらに非正規職労働者を増やす。青年は強烈なプレッシャーを感じながら就活にのぞむ。
爽快さはない。心が温まる話でもない。現代の青年の苦しさ、ずるさ、そして人を蹴落とし、競争の中で人を見下さずにはいられず、心身ともにギリギリのところまで追い詰められる様子が描かれる。友人同士であっても疎外感を感じながら、お互いを観察し、少しでも「自分はマシだ」と確認しあう。
大人たちにぜひ見てほしい。今、青年はこういう中で生きている。
労働者の団結、仲間との共同性がなくては、身も心もボロボロにされる。資本と闘う労働運動を通してこそ、青年を殺す新自由主義と闘える。こんな社会は一刻も早く、ひっくり返さなくてはならない。
戦争か革命か——私たちの未来は革命の中にある。
(霧山明彦)
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1989年生まれで、男性としては史上最年少で直木賞をとった朝井リョウの『何者』(受賞作)を映画化。監督・脚本は三浦大輔。97分。