TPPはトランプ当選で暗礁へ 労働者・農民の決起で批准阻止を

週刊『前進』04頁(2799号03面04)(2016/11/21)


TPPはトランプ当選で暗礁へ
 労働者・農民の決起で批准阻止を


 TPPの発効が暗礁に乗り上げている。米大統領選で「TPPからの撤退」を掲げるトランプが当選し、米国の批准が危うくなっているからだ。
 TPPは昨年10月の大筋合意と今年2月の署名調印式を受け、参加12カ国で批准手続きの段階に入った。署名から2年以内にすべての国が批准しなくても、12カ国のうちGDP(国内総生産)の合計で全体の85%を超える最低6カ国が批准すれば発効する。つまり事実上、GDPで78%を占める米日の2カ国が発効の可否を左右する。しかし肝心の米帝の批准に暗雲が立ち込めたのだ。
 安倍政権は11月10日、TPP国会批准案を衆院通過させた。だが、すでに参加各国で反対運動が広がり、順調に批准手続きを進めている国はほとんどない。日本でも10月15日の「TPPを批准させない!1万人行動」(東京・芝公園)に8千人が集まった。
 こうした中で、安倍は「(TPP発効は)大変厳しい状況」と認めつつも、「終わったかというとけっして終わっていない」「わが国こそが早期発効を主導しなければならない」(11月14日の衆院本会議での答弁)と述べ、あくまでTPPにしがみつく意向を示した。
 TPP反対の声は、新自由主義に対する労働者、農民、人民の怒りの血叫びである。TPPを葬り去るために、さらに強力に国際連帯と労農連帯で闘いぬこう。

TPPの本質は対中国戦略と新自由主義

 TPPは、2007年パリバ・ショック―08年リーマン・ショックを契機とする世界大恐慌の開始に対して、新たな経済ブロックの形成を目指した米オバマ政権の「アジア・太平洋リバランス戦略」の要である。とりわけそれは、中国に対抗するための露骨な争闘戦戦略であり、安保・軍事戦略とも一体である。
 同時にTPPは、グローバル企業による極限的な利益追求の新自由主義攻撃である。資本に対するあらゆる規制を取り払い、労働破壊、農業破壊、生活破壊をトコトン進める。グローバル企業の利益追求のための勝手なルールが加盟国に強制され、グローバル企業が社会のすみずみまで介入し、社会を破壊していく。そうした資本の活動の自由を無制限に保障するのがTPPである。
 重要なのは、そこまでやらなければ資本が存続できなくなっていることだ。ここに資本主義の根底的限界とプロレタリア革命の現実性がある。

突出して推進するのは安倍政権だけだ

 現在、TPPを突出して推進している政府は日帝・安倍政権だけだ。安倍は17日、急きょ訪米してトランプと会談した。この動きは日本共産党が言う「米国の言いなり」論では説明できない。
 日帝経済にとってTPPは死活的な戦略課題である。安倍は12年の総選挙の際、「TPP交渉参加反対」を自民党の選挙公約に掲げた。それにもかかわらず、政権を握るや「TPPは成長戦略の柱」と主張し、それ以降、日帝経済の命運をかけて推進してきた。
 日帝支配階級にとっては、アジアと環太平洋(北米)市場を制圧することに死活がかかっているのだ。日帝資本は国内市場が飽和状態になって以降、四十数年以上アジアと北米の市場へ進出してきた。そして今日では、新たに台頭した中国と激しいつば競り合いを演じながら、インフラ輸出をてこにアジア、アフリカ、南米への進出を進めようとしている。TPPの成立は、そのために絶対に欠くことのできない前提条件なのだ。
 他方で米帝はどうか。「TPPのための米国企業連合」という約150の企業・団体でつくる圧力団体がある(表)。ここに参加しているのはファイザー(医薬品)、アフラック(保険)、シティ(銀行)、コカコーラ(飲料)、インテル(IT)、モンサント(農薬)などのグローバル企業だ。しかし製造業で参加しているのはボーイング、キャタピラー、フォード、GMなどいずれも軍事産業ばかりだ。
 米製造業の没落は著しい。世界的な競争力を持った製造業は軍事産業以外にない。製造業の没落・衰退が保護主義の台頭を招き、支配階級内部にも分裂・対立を生んでいる。それが「TPP即時離脱」を叫ぶトランプ当選の背景にあるのだ。
 なお、製造業の分野では日本と中国、EU(ヨーロッパ連合)が世界的に激突している。リーマン・ショック後、EU資本は中国やアジアから撤退する傾向にある。しかし、日帝がこれに簡単に取って代われるわけではない。日帝とアジア諸国との歴史的関係が横たわっているからだ。日帝の侵略戦争責任を追及するアジア人民の怒りの声は、戦後70年をへてもなお続いているのだ。

国際連帯闘争と労農同盟でTPP粉砕を

 日帝にとってTPPはアジア市場・北米市場への足がかりであり、大恐慌下での延命をかけたブロック化戦略である。それは同時に戦争のできる帝国主義への飛躍を日帝に突きつけており、安保戦争法制定から朝鮮戦争参戦へ向かう動きと一体で推進されているのだ。
 TPP粉砕はプロレタリア革命をたぐり寄せる闘いだ。階級的労働運動を軸に、労働者・農民の怒りの決起でTPPの批准・発効を阻止しよう。国際連帯と労農同盟で安倍政権を打倒し、革命勝利へ進もう。
〔三条克実〕

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「TPPのための米国企業連合」の主な大企業
医薬品 ノバルティス ファイザー
    ファルマ P&G
保険  アフラック メットライフ
銀行  シティ モルガン・スタンレー
    ゴールドマン・サックス
製造業 ボーイング キャタピラー フォード
    ゼネラル・モーターズ
飲料  コカコーラ
その他 モンサント テレコム ウォルマート
    フェデックス インテル ディズニー

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