焦点 労働者の政党が求められている 米帝の没落・衰退を示す米大統領選
焦点
労働者の政党が求められている
米帝の没落・衰退を示す米大統領選
●2大政党制の大破綻と終焉
米大統領選が11月8日に実施される。共和党ドナルド・トランプ、民主党ヒラリー・クリントンという「史上最も不人気な候補」「嫌われ者」同士が政策論争抜きの低劣な個人攻撃の応酬で泥仕合を演じている。有権者は「どちらがましか」という消去法で選ぶしかない。これだけを見れば絶望的な状況だ。
民主党も共和党もこのような候補しか出せなかった。ここに「アメリカ民主主義」の終わりが示されている。民主、共和のブルジョア2大政党のどちらかから大統領が出て、この2大政党が議会を独占的に制圧する米ブルジョアジーの独裁、階級支配が歴史的に破産したのだ。アメリカ帝国主義の歴史的没落と衰退、新自由主義とグローバリズムの行き詰まりの結果だ。
トランプ、クリントンのどちらが大統領になろうとも、米帝の内外にわたる危機の激化、支配の破綻は不可避である。すでに始まっているアメリカの内戦状態と対外戦争(イラク・シリア・中東、ウクライナ)のエスカレーション、そして朝鮮戦争の勃発は不可避であり、世界戦争が現実になろうとしている。
世界大恐慌の一層の深化と世界経済の大破局の到来も迫っている。米帝の2%という低成長率も金融バブルによる。日米欧の超低金利・マイナス金利、超金融緩和政策それ自体が資本主義の終わりを示している。
こうした世界危機、米帝危機の元凶は米ブルジョアジーとその政治委員会・2大政党だ。労働組合運動を戦闘的に再生させ、労働者階級自身の党をつくり出し、2大政党制を打破する以外にアメリカ労働者階級の未来はない。アメリカにおけるプロレタリア革命の胎動は、ロサンゼルス統一教組(UTLA)やシカゴ教組、国際港湾倉庫労組(ILWU)の各支部、鉄道労組連合(RWU)の闘いとしてすでに始まっている。
●保護主義や差別主義を競う
米帝の長期にわたる対外戦争と大恐慌--大不況は、広範な労働者階級人民を非正規職と低賃金、失業と貧困、劣悪な医療・介護・年金・教育の中にたたき落としている。有色人種、ヒスパニック(中南米出身者)、イスラム教徒への差別は露骨だ。黒人は警察に簡単に殺される。彼らの有権者登録はきわめて低率だ。選挙や「民主主義」から排除されているのだ。「アメリカ民主主義」など虚構だ。
トランプは桁外れのナショナリズムや保護主義、排外主義、差別主義をあおり、女性への侮蔑を居直っている。資本家階級、富裕層を基盤とし、彼らのみを減税の対象にしている。しかし、新自由主義によるアメリカの産業空洞化と移民の大量流入で失業と貧困に突き落とされたと考える白人労働者層の多くもトランプ支持だ。
トランプは大衆の不満の吸収を狙って内政優先を掲げ、ロシアとの話し合いによる対立回避などを主張している。そのため共和党幹部もほとんどのマスメディアも反トランプになっている。女性もほとんどが反トランプだ。それでも世論調査でトランプ支持が40%前後に上るのはクリントンへの嫌悪からだ。
クリントンは90年代のビル・クリントン大統領時代、警察権力強化と大量・長期投獄政策を夫とともに推進した。しかもその正当化のために黒人男性を「スーパー肉食獣」と呼び、差別を扇動した。母子手当受給者にも「怠けずに働け」と攻撃した。クリントンは軍産複合体や巨大金融資本の代弁者であり、トランプの3倍もの選挙資金の大半を彼らから得ている。
クリントンは中東での空爆強化、アジア太平洋へのリバランス戦略、ミサイル防衛(MD)強化などを主張する。オバマより強硬だ。TPPには大統領選過程で反対に転換したが、大統領に就任したら再転換する含みを持たせている。
●プロレタリア革命こそ必要
両候補と2大政党の惨状、大恐慌と戦争の現実は、社会主義に希望を見いだす労働者階級人民、若者を生み出している。2009年の世論調査では、若年層の33%が社会主義を支持している。これを背景に登場したバーニー・サンダースは予備選でクリントンに肉薄したが、予備選に敗れるや否やクリントン支持を訴え始めた。プロレタリアートの独裁を抜きにした「民主的社会主義」にも未来はない。
米大統領選が示す米帝の没落と衰退、世界危機、2大政党制の破産、革命情勢の到来を革命に転化するために新しい労働者階級の政党、階級的労働運動をつくり出すことが求められている。この闘いを国際連帯で前進させ、11月国際共同行動、11・6労働者集会を成功させよう。