焦点 国債暴落に恐怖し緩和手法修正 長期金利は誘導できない

週刊『前進』02頁(2786号02面04)(2016/10/06)


焦点
 国債暴落に恐怖し緩和手法修正
 長期金利は誘導できない


●黒田「異次元緩和」大破産
 日銀は9月21日の金融政策決定会合で、13年4月に始めた大規模な金融緩和策の修正を二つの点で打ち出した。
 第一は、金融緩和の手法を「量より金利重視」に転換する、具体的には長期金利の指標となる10年物国債利回りをゼロ%程度に誘導する、というものである。
 これが意味することは、3年半にわたる日銀総裁・黒田の「異次元緩和」策が完全に失敗したということである。同時にこれはアベノミクスそのものが大破産したことを意味する。黒田も安倍もこのことをごまかし開き直って、ますます戦争と破局の道に突き進んでいる。
 黒田は3年半前に「大規模な金融緩和で向こう2年間で年率2%の物価上昇率を実現し、デフレを脱却する」と公言した。それ以降、毎年80兆円もの大量の国債を民間から購入し、資金を市場に流し続けてきた。その結果、日銀の資金供給量(マネタリーベース)は急膨張し、現在400兆円を超える。これはGDPの8割に当たり、米欧(2割程度)と比べても著しく突出している。
 だが、これだけの資金を投入しても、大恐慌による不況から脱出することはできなかった。
 危機の中で日銀は2月から、銀行が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス金利を適用する異例の措置に踏み込んだ。これでも危機は打開されなかった。逆に長期金利も急に下がり、銀行が利ざやを取れなくなったり、生命保険や年金の運用も打撃を受けるなど、金融資本から不満が噴出している。
 また、毎年80兆円買い増す国債の買い入れ策も天井が見えてきた。日銀の国債保有額は現在、発行残高の3分の1に達しており、現在のペースで買い続ければ18年春には50%に達する。金融活動の担保として民間金融機関は一定の国債を保有する必要があり、日銀はこれ以上、市中から買うことはできなくなる。膨れ上がる日本国債への信用も低下し、国債大暴落の現実性も見え始めた。
 こうした行き詰まりと危機の爆発におびえて、黒田は今回の緩和手法の「修正」を打ち出さざるを得なかったのである。だが、長期金利を誘導することなど、およそ不可能であり、はじめから破綻が見えている。
●不可能なデフレからの脱出
 もともと「通貨供給量を増やせばデフレから脱却できる」「インフレを人為的に継続させることで、経済の安定成長を図れる」などという黒田やリフレ派学者の主張自体がでたらめなのである。市中への資金供給を増やしたからと言って、それが設備投資や個人消費に回らない根本的理由があるからだ。資本家の側では国際争闘戦の激化、過剰資本・過剰生産力の重圧、国内市場の収縮などで、どんなに低金利で借金できる条件があってもなかなか新たな設備投資に踏み出せない事情がある。また労働者階級の側では賃金が20年近く傾向的に低下し続け、非正規化・社会保障切り捨て・消費増税などが追い打ちをかけて貧困化が進んでいる。総務省の8月の家計調査でも、2人以上世帯の消費支出は実質で前年比4・6%も減少した。事実上12カ月連続の減少である。
 このような中で、資本の設備投資も個人消費も拡大することなどあり得ないのだ。つまり、資本主義そのものが完全に没落し行き詰まっていることに、デフレから脱却できない根本原因がある。これは大恐慌の現実そのものである。
●国債の日銀引き受けと戦争
 今回の決定は第二に、「物価上昇率が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大をやめない」と約束した。ここに重大な意味がある。市中から買い入れる限界が見えてきても、「国債を大量に買い続ける」と黒田日銀は宣言したに等しい。
 この黒田日銀とタッグを組んで、安倍は「低金利の環境を利用した積極財政を」と閣僚に指示した。安倍は今や「財政規律」も「財政再建」も投げ捨てている。来年度予算の概算要求は101兆円で、3年連続で100兆円を超えた。自民党内部では、赤字国債をどんどん発行しろという無責任な声が強まっている。防衛省の概算要求は5・2兆円という過去最高だが、安倍の盟友、極右・桜井よしこはさらに「防衛費の倍増」を叫んでいる(9月5日付産経新聞)。
 結局、日帝は野放図な国債の日銀引き受けで戦争と経済的破局に突き進んだ1930年代の「高橋財政」と同じ道をたどっている。これを絶対に許してはならない。労働者階級の団結で日帝・安倍を打倒しよう。

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