学習指導要領改訂許すな 戦争教育への全面転換反対 民営化・労組破壊に大反撃を

週刊『前進』04頁(2785号02面05)(2016/10/03)


学習指導要領改訂許すな
 戦争教育への全面転換反対
 民営化・労組破壊に大反撃を

「公共」を新設し高校に道徳導入

 9月9日、文部科学省の中央教育審議会教育課程部会は「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」を公表した。今回の学習指導要領改訂は、2020年度小学校、21年度中学校、22年度高校で全面実施を目指した、改悪教育基本法のもとでの初の全面的な改訂だ。
 昨年3月、指導要領一部改訂で道徳が教科化(小学校で18年度から、中学校で19年度から実施)されたのに続き、今改訂では高校でも高校版道徳として必修科目「公共」が新設される。さらに「日本国民としての自覚、我が国の国土や歴史に対する愛情を深める」として、「歴史総合」(日本と世界の近現代史)と「地理総合」も必修科目として新設される。まさに戦後教育を根本から破壊し、戦争教育を全面化させる改訂だ。
 今改訂は、日本経済崩壊下で、戦争政策・経済政策に教育政策を直結させる大攻撃であり、日教組解体を狙うものだ。中教審委員の桜井よしこは「先生は労働者か先生かという御質問がありましたが、やはり労働者であってはいけない」(第90回中教審総会、14年3月28日)と言い放った。ふざけるな! 私たちは労働者だ。教育の民営化にも戦争教育にも絶対反対だ。職場の怒りを束ね、阻止しよう。解雇と労組破壊、教科書国定化とストライキで闘う韓国・全教組と団結し、11月国際共同行動に立とう!

教育を資本の食い物にするな

 文科省は今改訂のキーワードを「社会に開かれた教育課程」としている。学習指導要領で「よりよい学校教育」をつくり、これを通じて「よりよい社会を創るという目標を共有」するというのだ。さらにこれまで「教師」を適応対象としていたが、今改訂では「教育関係者」(=民間教育団体・塾、地域住民)にまで適応対象を拡大している。
 すでに「開かれた学校」という目標のもと、「総合的な学習」「体験学習」「土曜授業」などに住民が「教育支援」に組織されてきた。これを水路にしながら「民間企業等のノウハウの積極的な活用」として学習塾講師、民間教育事業者が導入されている。
 「社会に開かれた教育課程」「目標の共有」とは、さらに一層、教育を資本のあくどいもうけの手段としながら、学校間の競争と過重労働、そして非正規職化をますます激化させる。同時に、「地域監視」のもとで労働組合の団結を徹底的に解体しようというのだ。

日本経済崩壊で危機感あらわに

 次期学習指導要領は、「教育の目的」をこれまでの「個人の人格の完成」から「未来の創り手となるために必要な資質・能力」(新指導要領改訂の方向性)の形成という、露骨な国家・資本のための教育目的へと明示に転換させた。
 実際に審議では、「世界に占める日本のGDP(国内総生産)の凋落(ちょうらく)」(10年5・8%→30年3・4%)、「生産年齢人口の激減」を示す資料が次々と提示された。日本経済の崩壊への政府・資本のすさまじい危機感を背景に、教育によって国際競争力を強化し、日本経済の凋落を経済的、政治的、軍事的に巻き返すことを狙っているのだ。

「戦争とめよう」決議上げ11月へ

 すでに学校現場の長時間・過重労働は限界を超えている。その上、英語教科化で年間35時間、授業時数が純増する。また「アクティブ・ラーニング」(能動的な学習)で「指導方法」にまで踏み込むことは、教員を「マニュアル」に従って授業を進めるロボットにすることだ。子どもたちには「主体的な学び」(実際は資本・国家のためだ!)と言いながら、教育労働者は人事評価による解雇・非正規職化で、序列化・画一化と統制のもとに置くという、この根本的矛盾に誰もが怒っている。いい加減にしろ! 職場を動かしているのは労働者であり、決めるのは私たちだ!
 自民党による教育内容の密告奨励、18歳の投票率が高かった選挙区の高校への警察による調査(横浜市青葉区)など、戦時下と言える攻撃がすでに始まっている。
 アメリカでは教育労働者が「テストは社会を破壊する」と訴え、保護者とも団結して学力テストを実力で粉砕している。韓国・全教組は「セウォル号沈没」事件を弾劾し、「命よりカネ」の社会そのものを変える闘いの先頭に立っている。
 今、朝鮮侵略戦争が切迫する中で、教育労働者は戦争の危機を肌で感じている。労働者国際連帯の力で戦争が始まる前に止めよう! 社会を変えよう! 教え子を再び戦場に送るな! 分会で11月労働者集会の賛同決議を挙げ、職場から11・6日比谷へ大結集しよう!
(神奈川 佐伯悠)

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学習指導要領 小中高校などで教える内容の目安。文科省は1953年まで指導要領「試案」として発行したが、その後、法的拘束力を主張し「日の丸・君が代」などを強化する。現場労働者は国家から教育を奪い返すために闘っている。

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